【受賞作書籍11/14発売】田舎の中古物件に移住したら、なぜか幼女が住んでいた~ダンジョンと座敷わらし憑きの民泊はいかがですか?~

k-ing/きんぐ

SSコーナー

SS1 あいつらが泊まりにきた

【まえがき】


著者の作品とコラボしてました!


〈タイトル〉

畑で迷子の幼女を保護したらドリアードだった。〜野菜づくりと動画配信でスローライフを目指します〜


実はお伝えしているように世界観、イラストレーターが同じ作品でより楽しめるようになってます!

よかったら読んでみてください!


✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦


「ちゃんと準備したかー?」


 今日も朝から牛島さんが家にやってきた。

 元上司たちがやってきて疲れ果てているところに民泊の予約連絡が入った。

 何でも久々に家族旅行をしたいが、少し変わった子どもと犬がいるため、泊まるところを探しているらしい。

 家族旅行に民泊で良いのかと確認したら、祖父母も田舎でゆっくりしたいとの希望があるから問題ないと言っていた。


「ケトは犬が来ても喧嘩しちゃだめだよ?」

「オイラは立派なケットシーだもん!」


 うん……。なんか心配になる。

 猫又なのに自分のことをケットシーだって、言い張っているし……。

 ケットシーってケトの名前なんだからね。

 そんなことを思いながら、簡単に準備を始める。


「ふく、おふろあらったよ!」


 お風呂も綺麗に洗い、寝具を整えればいつでも歓迎することができる。


「迷わずに来れるかな……?」

「兄ちゃんの家はわかりにくいからな」


 今日のお昼前には到着するとは聞いているが、ここに来るまでに迷子になる人は多い。

 カメラマンの青年もだが、矢吹も迷子になりながら到着した。

 とりあえず準備しながら、俺たちは待つしかない。



――ピンポーン!


 インターフォンの音が鳴り、俺たちは揃って玄関まで迎えにいく。

 時計をチラッと見ると12時前で、しっかりと時間通りに来れたようだ。


「笑福亭へようこそ!」


 玄関の扉を開けると、歳が同じぐらいの青年と少女、それに祖父母と……二足立ちしている犬がいた。

 俺が横にいるケトを見ると、ケトも驚いて二足立ちになっていた。

 最近の犬や猫は立ち上がるようにペットショップで教育でもされているのだろうか。


「一日お世話になります!」

「なります!」


 青年と少女はぺこりと頭を下げた。

 少女の元気さがどことなく、シルと似ていた。


「わたし、シル! よろしくね!」

「ドリ! よろちく!」


 シルは少女ドリの手を取って、家の中に案内していく。

 まるで姉妹のようだ。

 いつもはみんなの末っ子だから、今日はお姉ちゃんみたいだね。


「あっ、ポテトはちゃんと足を拭けよ!」


 青年は犬のポテトにウェットティッシュを渡すが、受け取ると器用に足を拭いていた。

 肉球の隙間まで立った状態で拭ける犬って番組にも紹介されそうだな。

 本当に犬なのかと疑問に思うほどだ。

 ただ、我が家に猫又がいるから、犬又がいてもおかしくない。


「では、中にどうぞ!」


 俺は森田家のみなさんを家の中に案内していく。

 しっかり掃除もしてあるし、すぐにお昼を食べられる準備はできている。


「わぁー、すごく立派なお家ですね」

「上の階の奥の部屋だけは、使っていますのでその他は使って頂いても構いませんよ」

「えっ……全部ですか!?」


 部屋が選べるようにと伝えようと思ったけど、驚かれてしまった。

 さすがに他のお客様がいないことを気にしてしまったのだろうか。


「直樹、いいじゃないの。みんなでのんびりできるわね」

「そうだぞ! もちろんわしは一番大きい部屋を使うぞ!」


 そう言って、お祖父さんは元気よく2階に上がって行った。

 愛犬のポテトもそれに合わせて付いていく。

 どうやら仲が良いのだろう。

 ただ、ポテトが階段を人間のように登っていくところを見ると、やっぱり違和感を覚える。


「あのー、ポテトって犬又ですか?」

「犬又……? いや、うちの犬は三つ目ですよ」

「三つ目ですか……?」


 俺はしばらくポテトをジーッと見ていると、気づいたのかポテトも見返してきた。

 ただ、視線が多い気がする。


「あっ、額にもう一つ目が隠れているんですよ」


 目を細めてみると、確かに額に隠れていた目がこっちを見ていた。

 やっぱりどこにでも妖怪はいるもんなんだね。

 チラッと青年の直樹を見ると、俺を見て驚いていた。

 きっと向こうも妖怪を知っていることにびっくりしていそうだ。

 残念ながら我が家には妖怪ばかりだからね。


 荷物を全て置きにいくと、早速昼食の準備に取り掛かる。

 お昼は牛島さんがパスタとカプレーゼ、ポタージュスープを用意してくれた。


「あら、美味しそうだね」

「我が家の牛島さんはすごく料理上手なんです」

「うっしーのごはんはおいしいよ!」


 俺たちは牛島さんを紹介する。

 だけど、ドリも負けじと胸を張っていた。


「ははは、我が家のばあちゃんもスーパーおばあちゃんですよ」

「しゅごい!」


 どうやら祖母さんも料理上手のようだ。

 それなら夜ご飯は任せてもいいよね?

 いいです……よね?

 俺がチラッと牛島さんの方を見ると、頼んでみろと視線が返ってきた。


「あのー、もしよかったら夜ご飯を一緒に作りませんか? 実は牛島さん以外料理が苦手でして……」

「幸治くんは自慢じゃないが、お湯を沸かすくらいしかできないからね」


 牛島さんの言葉に俺に視線が集まる。

 さすがに今は少しだけ料理ができるようになったぞ。

 うさぎも焼けるようになったからな。


 そんなことを思っていると、ポテトが2階に急いで戻って、何かを持ってきた。


「ポテトチップス……ですか?」

「ポテトの大好物なんですよ。作り置きしろってたくさん持ってきたので、よかったらもらってください」


 俺はポテトからポテトチップスを受け取ると、シルやケトとともに袋を開ける。

 袋を開けた瞬間、ふわっと香ばしい匂いが広がった。

 油の甘い香りと、じゃがいもの素朴な香りが混ざり合って、思わず鼻が反応する。

 うん、これは絶対うまいやつだ。

 塩の香りが舌の先を刺激するようで、つい手を伸ばしたくなる。

 俺たちはお互いに顔を見合わせて、一枚手に取る。


――パリッ!


「「「うっまー!」」」


 口に入れた時からすでに美味しいのは匂いでわかっていた。

 噛んだ瞬間、軽やかな音と一緒にじゃがいもの甘みが広がる。

 塩は強すぎず、ちょうどいい加減で油のまろやかさと合わさって後を引く。

 市販のものよりも素朴で、でもどこか優しい味がした。

 あぁ、これ、止まらなくなるやつだ。


 俺は急いで袋を縛って冷蔵庫の上に置きにいく。


「「ふくー!」」


 シルとケトがやはり追いかけてきた。

 我が家の妖怪たちは美味しいものがあると、ずっと食べ続けるからね。


✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦

【あとがき】


うわあああああ!

あと少しで発売だよ| |д・)

すでに東京では発売しているところがありますが……。

ご購入検討されている方は、特典が書店によって異なるため、一度近況ページにて確認してみてください!


コラボ作品のweb版はこちらからお願いします。

https://kakuyomu.jp/works/16817330658498223090

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