第11話・決着、累卵楼闘技場

 鎧の背や肩などに取り付けられたコンバーテッドサーモCTハイブリッドブースターHBによる爆発的な推進によって、プレアデスがゴールデンサウンドへ肉薄した。彼女へ目がけて宙で蹴りを放つ。サウンドは宙返りによって回避し、そのまま反撃へと移行した。しかし、またもやプレアデスを包む障壁であるクーリングコンバーテッドサーマルアーマーCCTAによって阻まれた。前髪をなびかせる彼が完全に振り返る前に、サウンドは相手に背を見せて距離を作った。


「お師匠姉様……! 頑張ってください……!」


 フリッシュの心ない言動によって涙に暮れていたジェイドは立ち直っている。己の師であるサウンドに向かって、一心不乱に声援を送っている。彼女の付近で拳を振り上げる観衆も同様だ。健気なジェイドの姿を見て、味方する事を選んだのだろう。フェリーチェは、闘技場から自身の横へと視線を移した。


「厳しい戦いですね……」

「荒削りな動きだが、積極的だな。そういう意味では、あのハルクエンジンを使いこなしていると言える」


 ミチビキとプリズンロックの言葉に肯定を示す為に、フェリーチェは無言で小さく頷いた。激しい攻防の繰り返しであり、現時点のサウンドは己へと繰り出される攻撃を全て躱している。しかし、彼女の分が悪い事は誰の目から見ても明らかだ。間合いを取って魔法を放っても、CCTAによって掻き消される。得意である接近戦では、CTHBの推力によって優位性を得られない。


 プレアデスが纏うハルクエンジンはまさに、サウンドの戦法を完全に封殺している。純粋な命の奪い合いでは話が変わるかもしれないが、それはただの手合わせであるこの場では許されない。そもそも、あのフリッシュの直弟子だとしても、彼女はそれを行なわないだろう。サウンドが劇団に籍を置いて以降、端役の子どもたちの待遇が大きく改善されたと聞いている。


『クロー、あのCCTAとやらをMRCに作らせるならどれくらいだ?』


 自分の師であるダイヤモンドクレールが、テレパシー念話によってサタンズクローへと問いかけた。プレアデスの突進を回避するサウンドを尻目に、フェリーチェは第一層天井の大穴の淵に佇む師たちを見上げる。


『俺トミチビキガコノ目デ見タ解析ガアレバ、ゼロカラ開発スルヨリモ費用ヲ抑エラレルデショウ。ソレデモ、製造費ヤ改修費モ含メテ、500万アイリスホド必要ニナルカモシレマセンガ』


 クローから告げられた巨額を聞いたストームが、嘴の根元にある鼻で短く笑った。


『眼球どころかカメラアイすら存在しない機械がよく言います! アハッ!』

『ストーム、黙ってろ。クロー、お前は、フリッシュのあの生意気な弟子が着ているハルクエンジンをどの程度と予想する? 参考として聞かせろ』

『ザット計算シテ、1000万アイリスハ超エテイルト思イマス。前世界当時ノ金銭価値デ例エルト、核融合炉動力型原子力空母ノオヨソ半分デスネ』


 フェリーチェが耳にした話によると、通常のハルクエンジンで製造費は20万アイリスほどだ。それがはした金に錯覚するほど膨れ上がった特注品の費用を、大ミサゴはどのようにして賄ったのだろうか。「裏の世界の仕事」というものは、それほどの金銭がやり取りされるものなのだろうか。それ以前に、あの「死を招く黒い鳥」が、己の直弟子とはいえなぜひとりの少年へとそれほどまでに入れ込むのだろうか。フェリーチェには分からない。


『クロー、もう少し俺様たちにも分かりやすい例え方はできねえのか?』

『アハッ! 俺にもサッパリです!』


 ミチビキの師を睨みつけるエターナルキャリバーに対して、グアンダオストームが同意を示した。


『黙ってろと言ったのが聞こえなかったか? 特にお前だ、キャリバー。口を挟みたかったらロックを見習え。お前こそ序列に甘えるな』


 クレールが彼らを一蹴した。西海岸横断鉄道と大陸横断鉄道の中継駅にして終着駅である累卵楼駅の総責任者であるプリズンロックは、その完璧な仕事ぶりをクレールから高く評価されている。彼が先ほど師から注意以上に咎められなかったのは、四賢師時代からの古株である以外にも、そういった理由が存在しているだろう。


 対照的に、累卵楼港を仕切っているキャリバーが提出する書類には、フェリーチェは会計補佐のひとりとして普段以上の集中を向ける。キャリバーの誤りを見落とせば、クレールはそれをフェリーチェの誤りとして扱う。今ではその頻度は大きく落ちたが、港に勤め始めた当初のデリックは毎日のように、自分やミチビキへキャリバーに対する不満を漏らしていた。


『けっ! インテリぶりやがって!』

『アハッ! 力自慢のおバカ同士仲良くしましょう、キャリバー様!』

『あ? ヒョロヒョロの大サギが俺様の仲間気取りか? 猛禽が空の王者って事を忘れたようだな』

『アハッ! 決闘ですか? いつでも俺は受けて立ちます! アハッ!』


 目つきが刃物のように鋭い黒い大クマタカと高笑いを続ける黒い大サギを尻目に、クレールは大きなため息を一つついたのち、クローへと視線を向けた。


『本物の恥知らずどもが。せめてサウンドを見届けてからにしろ。クロー、フォーゲルが戻ったらMRCに行け。ミチビキのハルクエンジンにつけられるものを作らせろ』

『オヤ、ソノ費用ヲ翼正会ノ予算カラ出シテクダサルンデスカ?』

『お前も恥知らずになる気か? その金を着服して、MRCにタダで造らせる気だよな?』


 クレールの問いに対して、何かの機械を咥えたままのクローが小さく引き笑いを上げた。キャリバーやストーム、あるいはミリオンラブとは対照的に、五賢師第四翼である機械巨鳥は決して大声で笑わない。その印象は、良く言えば冷静であり、悪く言えば陰湿である。


『サスガクレール様、オ見通シデシタカ。MRCハ実用化サレタCTノデータヲ高ク「買ウ」デショウ。手土産ニハ最適デス』


 その口振りから察するに、やはりMRCでもあの漆黒のハルクエンジンに使われている技術は確立されていないようだ。そして、クローならば漆黒の鎧を透視できているのかもしれない。


 光学的なカメラアイを持つミチビキやアイゼンフォーゲル、ファントムシグナルズとは異なり、クローは全体的な形として太古の始祖鳥アーケオプテリクスを模しているにもかかわらずそれが存在しない。本来は双眸があるべき場所は、上顎の先から頭頂までを覆う装甲の一部分に隠されている。フェリーチェはかつてミチビキが発した、「人間は外部情報の把握を視覚に大きく依存していますが、機械はそれとは違うアプローチができます。僕が今見ているフェリーチェさんの姿を、0と1の羅列で理解する方が得意な機械もあります」という言葉を思い出した。


『それから、俺の前でそのわざとらしい喋り方はいい加減やめろ。虫唾が走る』


 苛立ちを乗せたクレールのその一言で、クローの引き笑いが止まった。


『それは、キャリバー様やストーム様にも言ったらどうですか? オフタカタガオメニナルナラ、俺モ従イマス』


 クローが流暢に語る声を、フェリーチェは初めて聞いた。やはり機械巨鳥は口調が同じでも、城下町の巡回清掃などの単純作業に従事している、前世界製の修復品の中でも特に古い愚鈍なロボットとは一線を画するようだ。


『クロー、貴様は俺様がそうだと言いたいのか?』

『ギャハハ! キャリバー様! それはお互いさまです!』


 クローの言葉に反応して、キャリバーとストームから声が上がる。フェリーチェは胸中で大サギに同意した。クローがそうであるように、キャリバーやストームもまた、口調で本性と本心を隠している。おそらく、自身の師であるクレールも同様なのだろう。それが誰に向けているのか、どういった目的かまでは定かではないが。


『恥知らずどもが……勝手にしろ……』


 それだけ吐き捨てると、クレールは闘技場へと視線を落とした。そこでは、大ハチドリが苦戦を強いられ続けている。そのサウンドに向けて、クレールは念話を飛ばした。


『サウンド。あの日のお前の涙は偽物か? お前の悔しさは偽物だったのか? 俺はそんな偽物の為に、お前のハンカチ代わりになったのか? そうじゃない事を証明してみせろ。お前なら、フリッシュのその恥知らずな弟子に現実を教えられるはずだ。お前は、「ゴールデンサウンド」だよな?』


 クレールからの念話に反応して、プレアデスの拳を立て続けに回避したサウンドが、翼をはためかせながら一瞬だけ頭目を見上げて頷いた。自らの師が問いかけたものは、かつてフェリーチェ自身がサウンドの嘴から耳にした彼女の過去だろう。そして、師の言葉は師なりの激励だ。


 クレールは累卵楼とその城下町、延いては翼正会勢力下において身分の差を設けているが、決して圧制者でも暴君でもない。民衆の口から不満が漏れ出すのを少なからず耳にした経験はある。しかし、派閥による内部抗争が激しいという騎士団や、女尊男卑である上に実力至上主義が横行しているMRCに比べれば、ここの人間は揺り籠から墓場まで比較的安寧を享受し続けられると言える。


 そして、それは巨鳥や直弟子も同様だ。クレールにとって巨鳥たちは重宝すべき臣下であり、特に贔屓している。巨鳥が望むなら、それが一門とは関係がない事柄であっても翼正会の予算を割く事もある。己が蔑むアイゼンフォーゲルや楽観的で能天気なミリオンラブ、人間嫌いな上に根は臆病なナルコスカルにさえ、師は一羽の巨鳥として、一門に属する大魔術師として接している。その証左に、今日はあれだけの怒声を叫んだミリオンラブをそれ以上咎める事はせず、独立したアトリエを持つナルコスカルには報酬をともなういくつかの仕事を回しているらしい。


 直弟子に対しても、クレールは彼なりの愛情を注いでいる。抱きついてくるタオシャンを嫌な顔一つ浮かべず受け入れ、自身が見下すアイゼンフォーゲルの直弟子であるハジュンの成長を楽しみ、髪を編み込むジェイドと髪を編み込まれるレフに笑みをこぼし、親睦の証としてリベルトをからかい、巨鳥の講義や直弟子の自主鍛錬へまともに出席しないオスカーの好奇心を容認している。決して礼は口にしないが、クレールは一門弟子が作る料理を必ず全て食べるらしい。一門弟子が一般的な魔術師になる際には、彼の判が捺された証書をクレール自身から渡される。それは翼正会の統治下のみならず、他勢力の地でも一定の効力を持つ。


 しかし、その例外がひとりだけ存在している。それは、フェリーチェだ。フェリーチェには分からない。なぜ師が自分を、他の巨鳥や直弟子と異なり厳しく支配的に扱うのか。自分はあのダイヤモンドクレールの後継になるべく直弟子として選ばれた。頭目にはある程度の冷徹さが必要で、それは跡取りの育成にも同じだろう。しかし、それ以上、あるいはそれ以外の理由があるように思える。


 だが、その真相もまた不明だ。フェリーチェが先ほどクローが流暢に話す場面を初めて目の当たりにした事と同様に、師が被った「仮面」もまた分厚い。実際に仮面で顔を隠したナルコスカルの表情と思考は、それに阻まれていても読みやすいが。


「師匠様がた! 兄さんがた! もっと厚い障壁をお願いします!」


 プレアデスから距離を取って闘技場の床に立ったサウンドが、その外周に佇む巨鳥たちに叫んだ。それに対して、大ハヤブサのミモザコートや大フラミンゴのミルキーアイス、フェリーチェが視線を横に向けた先のプリズンロックなどが無言で頷く。


 次の瞬間には、闘技場を囲む柵から半球状に盛り上がった、透明に近い水色の魔法障壁が展開された。サウンドとしては、飛行が大きく制限されてしまう反面、観衆へ気を向けずにより強い魔法が放つ事ができる。ついに「仕掛ける」ようだ。あのままでは、誰の目から見ても彼女の敗北は明らかだった。障壁の内側に取り残された「死を招く黒い鳥」の心配は無用だろう。そもそも、最初から誰もフリッシュを心配していない。


「ついにサウンドお師様の本気が見られるんだねえ!」


 明らかに期待で胸を膨らませた顔つきのプレアデスが、自身を包む防御フィールドを張り直した。ジェネレーターの出力を上げたのだろう。CCTA越しに見える彼の顔は、これまでよりも大きく揺らいでいる。巨鳥への敬意が足りない言動が目立つが、油断まで見せる気はないようだ。そうでなければ、フリッシュの直弟子には選ばれないだろう。


「本当の本気じゃないけど、覚悟して!」


 サウンドが叫び返す事と、プレアデスがブースターを用いて彼女への肉薄を開始したのは同時であった。そして、その直後、サウンドの口から一つの歌が紡がれ始めた。


 彼女から5メートルほどの地点まで接近していたプレアデスは、突如として漆黒の鎧を纏う体を後方へと弾き飛ばされた。それは、サウンドの歌唱に乗った魔法によってだ。巨鳥の中で比較的小柄な彼女からは想像できないほど低く、重い歌声であった。巨鳥たちの障壁に阻まれて、闘技場の外側では攻撃力を失うまでに成り下がっているが、その振動はフェリーチェの体の奥まで震わせている。プレアデスは床に転がったが、すぐさま立ち上がった。


 私は歌の化身。私の歌声はあらゆる者を魅了し、私はあらゆる者を虜にする。私こそ歌そのもの。さあ、あなたも私の足に口づけを。


 サウンドの歌声は無差別の放射状に放たれるものの他に、特定の位置へ向けた指向性も備えているようだ。目に見えない衝撃がプレアデスへと次々と迫る。彼はそれをCCTA越しに構えた両腕で防御し、次撃はCTHBを噴かして躱す。ブースターは持続的な光と音を吐き、着装者は足を浮かせながら駆ける。プレアデスが通った直後、彼のすぐ後方の床が破片を撒き散らしながら次々と割れる。

 

「CCTAを減衰させるし貫通させるほどの魔法! さすがサウンドお師様あ!」


 プレアデスが前髪の下に満面の笑みを作り巨鳥を褒め称えた事から間髪入らずに、彼の体は横からの衝撃によって吹き飛ばされた。外周の柵に当たって停止する。そこへ両腕をかけたプレアデスは、まるではりつけのような状態だ。


 その少年に対して、サウンドは同様の攻撃で追撃をかける。彼を守るCCTAを削ぎ、それを貫くほどの魔法によって、鎧の体を支えている柵が大きく歪んだ。周囲の観客に危害は及んでいないが、その光景におののいた彼ら彼女らは3メートルほど後ずさった。


「ボクの方まで……攻撃をもらったら負けってルールじゃなくて……よかったよお……」


 猛攻によってまとめ髪が解けたプレアデスが、原形を失った柵から滑り落ちるかのごとく闘技場の床へと仰向けになった。フェリーチェはフリッシュを窺った。彼の師である大ミサゴの鳳凰種が動じている様子はない。あるいは諦観だろうか。プレアデスを包んでいたCCTAが完全に消失した。


「彼のハルクエンジンの常在秘匿魔法の一部に支障が出たようです。少しだけ透過解析スキャニングできるようになりました」

「君の目から、プレアデス少年の鎧はどう見える?」

「……あれだけの攻撃を受けたのに、ジェネレーターの出力はまだ続いています。サタンズクロー師匠が仰ったように、巨額の費用で相当頑丈に造ったようです」


 フェリーチェの横で、ミチビキがプリズンロックに対して述べた。眼球を模した彼のカメラアイは、一直線にプレアデスへと向けられている。前世界のアンドロイドとして、プレアデスを静かに敵視する立場として、あの黒い鎧は興味の対象だろう。


 サウンドが大きく翼を広げ、力強く羽ばたいた。そして、魔法で嘴を輝かせながら、プレアデスに向かって飛行する。これが当たれば「それまで」だろう。そもそも、彼女の猛攻を防ぎきれなかった時点で、それは決まったのかもしれない。


 乱れた長髪で鋼の首の後ろを覆ったプレアデスが、俯きながら静かに立ち上がった。彼の体を受け止めた闘技場の柵と同様に、ハルクエンジンの諸所に取り付けられたブースターもまた大きく歪んでいる。それを用いて回避はできないだろう。


 「詰み」だ。自分たちは、「死を招く黒い鳥」は、彼を買い被りすぎたのだろうか。フェリーチェがそう思った瞬間だった。


「ジェネレーター出力急上昇!? 明らかに設定限度リミッターを超えています! ゴールデンサウンド師匠! 罠です!」


 驚愕したミチビキが叫ぶのと、満面の笑みのプレアデスが顔を上げるのは同時であった。


「もう遅いよお! ミチビキくん!」


 プレアデスの周囲から甲高い轟音とともに発せられた光が、咄嗟に翼をはためかせ回避を始めたサウンドを飲み込んだ。そして、魔法障壁に包まれた闘技場全体をそれが覆った。あまりの眩しさに、観衆たちが手や腕で目を隠す。


「ミチビキ少年、今のは?」


 プリズンロックがミチビキへと視線を向けて尋ねた。自分を指に止まらせた純白の鎧のアンドロイドは、呟くように返答した。


「おそらく……『EA』……『攻撃性発破装甲エクスプローシブアーマー』と呼ばれるものだと思います。CCTAとして展開した防御フィールド、あるいはジェネレーターの熱エネルギーや本来の出力そのものを変換し、攻撃として放つ技術です……これは前世界で実験前の開発段階だったようですが、魔法科学で実用化させたのでしょう……」


 それを耳にした大ツルは、闘技場を見つめながら、長い嘴から短く息を吐いた。


「フリッシュは、こちらが思っていた以上に本気だったようだな。サウンドが迂闊だったというよりも、フリッシュの意気込みが優っていたという事だろう」


 光はすでに止んでいる。プレアデスが纏った鋼は、背中からジェネレーターの一部と思しき赤熱した内部構造を露出させ始めた。そのハルクエンジンに備え付けられているであろう小物入れから出したと思われる髪ゴムを用いて、髪を束ね直している。焼け焦げるのを避ける為か、左手に髪を巻きつけ、それをゴムでまとめようとしてる。


彼が見下ろす先、最深である闘技場中心部では、周囲にいくつかの羽根を撒き散らしたゴールデンサウンドがうずくまっていた。


「フリッシュ様……フリッシュ様が仰る通り……いえ……言わせたのはテーラーですよね……」


 サウンドの言動は、フェリーチェの予想と同一であった。フリッシュは返答しない。


 次の瞬間、闘技場が大きな歓声に包まれた。





































































 ****



「お願い致します! フリッシュ先生!」

「テーラー。僕にとってお前は、利害が一致しているだけだ。それ以上の義理はない」

「でも、お師様もテーラーお師様もまだ翼正会に所属してるよねえ? お師様にとって、テーラーお師様は家族と同じだよねえ?」

「全くもってその通りですわ!」

「口を挟むな、プレアデス。テーラー、何度も言うが、僕には義理立てする理由も意味もない。サウンドを挑発したければ自分でやれ」

「できる事ならそう致します! ですが、わたくしにはこちらでの仕事が残っておりますし、わたくしが言うよりもフリッシュ先生の方がサウンドの為になりますわ!」

「なぜそう分かる? お前が最後にサウンドに会ったのはいつだ?」

「時間は関係ございません! これはサウンドへの、まことの友情でございます!」

「お師様、やってあげようよお。テーラーお師様、引き受けてくれるまで粘ると思うよお」

「たとえ世界の果てまでお逃げになっても、わたくしは必ず追いつきますわ!」

「なら尚更自分で言いに行け」

「それはそれ、これはこれでございますわ!」





※現実の2017年に就役した最新鋭原子力空母である「ジェラルド・R・フォード」は、総工費約130億ドル(作中設定において、1アイリス=約1000ドル)と報道されている。また、現実の原子力空母は核分裂炉が動力であり、核融合炉は空母搭載や実用化以前に、2024年現在において開発段階である。

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