@Miyamiyaokaoka

第1話

私はしがないサラリーマンだ。30を過ぎたというのに会社でもプライベートでも居場所がない。こんなはずではなかった、どこで間違えたのか、そんなことを考えてばかりの日々に疲れバーに来ていた。

そこでしばらく飲んでいると隣にいた同年代くらいの男が話しかけてきた。

「随分お疲れですね。お仕事大変ですか。」

普段喋るのは苦手だが酒が入っていたので私は彼の話に乗った。

「ええ。毎日限界まで働かされて参ってますよ。若い時は良かったですよ、夢がありましたから。私はずっと宇宙飛行士になりたかったんですよ。まあ手も足も出ませんでしたが。」

自分の話をするのは久しぶりだが彼は真剣に聞いてくれた。

「いい夢じゃないですか、まだ諦めるのは早いですよ 。ここからでもきっと宇宙飛行士になれますよ。」

彼の言葉に励まされた私は、

「そうですよね、諦めちゃダメですよね、ありがとうございます。頑張ってみます。」

と、決意を固めた。彼のおかげでまた頑張れそうだ。そして次は私が彼に聞いた。

「あなたは何か夢などなかったのですか。」

すると彼は顔をけわしくして、

「あるにはありましたが、皆に馬鹿にされるような夢ですよ。石を投げられたことだってあります。なのであまり言いたくありませんね。」

と言うので、

「石を投げるだなんてそんな、僕は人の夢を馬鹿にするような事はしませんよ。私の話も聞いてくれたんだ、今度は私があなた話を聞く番ですよ。」

その言葉を聞いた彼は答えた。

「確かに、あなたになら私の夢を話して良さそうですね。私の夢。それは、ひもです。」

そう言うと私は少し間を置いてから一言。

「マスター、石を1つ。」

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