中学高校と同級生という関係はありがちですが、引っ越しを伴う距離への大学でも同じとなると、ちょっと特別感ありますよね。
幼馴染とは言わないけど、大学からの友達よりはずっと俺の方がアイツのこと知ってるけど、みたいな。
だけど二人の距離は縮まらず、無情にもとりまく環境だけが刻々と変化していくのです。
彼女にとてもよく似た、だけど彼女ではない人と交わした言葉は、不思議をまとってフワフワ浮かんで、最後にちゃんと読者の心に着地します。
甘酸っぱい恋と、緻密な構成によって紡がれた物語は、「すごいわ」という読後感に変わるのです。
私は第一話の半井くんがとった行動で、もう珠季ちゃんのこと絶対好きだろと思ったのですが、皆様はどこが半井くんの陥落ポイントだと思いますか?
まだお読みで無い方は、気軽に読める短編ですから、ぜひ。
ざっくりまとめるならば、この物語は、イラストを描くことが好きな半井蒼真と、中高が同じで『異性のクラスメートとしてはそれなりに気安い距離感』の林田珠季の青春物語です。
ですが! ざっくりまとめるもんじゃないんですよ! そこにおさまらないところが! いいんだから! 読め!
ヒントをあげるなら、本作のタグでしょうか。本文を読む前に提示されている情報なわけですから、頭に入れておいて損はないわけです。
また、心理描写、空気感、どれをとっても秀逸な青春ものです。悩みもあって、複雑で、等身大のキャラクター描写がお見事です。
謎と描写に惹き込まれる、素敵な短編でした!
イラストを描くことが好きな高校生、蒼真。進路面談を控え、川辺でぼんやりしていた彼の前に現れた女性。彼女は同級生によく似ていて····。
高校の同級生、林田珠季。ふたりは友だち以上にはなれない、異性だけど同性のような関係。あの時あらわれた女性は、彼女にそっくりだったのだ。だから彼女を呼ぶように、林田、と呼んだのだが、その女性の反応はどこか残念そうで····。
色々あったが蒼真は東京の大学に行くことになるのだが、示し合わせていないのになぜか林田珠季も同じ大学に進学していた。ふたりは高校時代の時と変わらずに友だちとして過ごしていく。そんな中―――。
途中までは普通のアオハル系のお話だったのに、まさかの展開で答え合わせがはじまり、ラストはぞくぞくしてしまいました。
これは最後まで読まないと絶対にわからない仕掛けで、作者さまの構成力の高さを思い知らされます。
タイトルの意味を知りたい方、不思議な体験の答え合わせは完走必須です!
さらっと読んでいたらΣ(゚Д゚)!?←となるような、そんな作品でした✨