モノノフ 火縄銃無双 騎士たちの世界で生き延び候

七月七日(なつきネコ)

第1話 転移……気づいたら


 そして……本軍は死滅しめつ した。


 援軍としてかけつ、敗走して数刻すうこく

 無傷の十万の軍勢がせまってくる。

 おいつかれると全滅。


 黒の部隊は乱れ山林を逃げ乱れ、矢がささる無様な姿をしていた。


敵は強かった、早く逃げねば、全滅もありえる。


 せかしているが、荷駄部隊にだぶたい が足を引っ張ってしまっている。


 撤退の中でみなの心が乱れはて、息が乱れに乱れて、立て直す間もない。


「急げ!」


 そんな軍の中で指揮をとる少年がいる。


 黒甲冑くろかっちゅうに、火縄銃ひなわじゅう はほかの武者とかわらない、緋色の陣羽織じんばおり が大将身分をあらしている。


 荷駄部隊として来ていたのが棟梁の息子、藤代兵馬ふじしろ ひょうま だ。


十七の年で五十の援軍部隊の将のはずが、今は戦場から脱出部隊へときりかわってしまっている。


 甲冑が体に重くのしかかった。

 ほかの小物は荷駄に兵糧などをはこぶために疲労もくわわっていく。


 捨ててしまうべきか、兵馬は童顔をゆがませる。


「急かしたところで進むわけではない兵馬」


 腹心で同じ年の土橋秋法どばし あきのり がとがめた。

 童な顔の兵馬にくらべて、身長も高く大人びて見える。


「しかし、相手は右府うふ だ」


 五十程度では右府の五万の軍勢にかかってしまえば玉砕してしまう。


 ここは逃げの一手しかない。

早く、樹の国に戻らないと。


その、兵馬の焦りを秋法あきのりが落ち着かせて、確実に撤退していく。


「わかっている。お落ち着け。ここを抜ければ」

「そうだな」

「帰れるはずだ」


 秋法あいのりの言い分をうけ、兵馬は汗をぬぐう。

 獣道をひそみ、草木をなぎはらいすすむ。

 これだけ、不安定な場所なら大軍がおいつくことはない。


 うっそうとした木々が視界をふさがり、彼らの不安を増大させている。


しっかりと進み撤退しないといけない。


 道は間違っていないか、右府の軍が襲ってこないか。

 その恐怖をかかえ進む。

 やがて、木々をぬけると……

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