旅道中 馬車の中

 俺達は馬車に乗り、旅に揺れていた。


 ニファが馬車の手綱を持ち、ソロンと俺はのんびりと馬車で、ケルトン達に貰った食べ物に数々を頬張っていた。


「ねぇ…私にも食べさせてよ。後ろからクチャクチャうるさいんだけど…」

 ニファは顔をムッとさせながら言った。


「あぁ…そうだな」

 俺はポットク鉱山で出発の朝にあったことを思い出し、身震いをする。

 馬車の前に行き、ニファの口元にリンゴを差し出した。


 それをニファはかじり、シャコシャコと音を立てて食べる。

「ありがと…レント」

 ニファはとても小さな声でそう言った。


「どうも…それにしたってお礼を言いたいのはこっちだ。今もこうやって、馬車を運転してくれているのはニファだしな」

 俺は正直なままに、ニファにお礼を言った。


「何なの急に…気持ち悪いわね。これくらいどうってことないわよ。の仕事の時によくやってたし」


「そう…か、そうだよな。そんな事より、次の町までどれくらいかかるんだ?」


「ここから一番近いところだと…水の街 が一番近い。でもそこに行くにはを迂回した、ゴロラ山を抜けないといけないわ…」


「うわっ…失意の沼かぁ…確かにあそこには近寄れねぇな」


 失意の沼…入ったものはに出られない、大きな沼。何でも失意の沼には、人の心を食べてしまうと言われている、がいるらしいからなぁ…


「うん。でも幸い、ゴロラ山には馬車が通れる道があるわ。これなら最短距離でプトゥーヌまで行ける!!」

 ニファは目を輝かせながら言った。


「へぇ…やっぱり早く帰りたいんだな」

 俺は微笑みながらニファに言う。


「う、うっさいわね。そうよ!!あんたらやタワラ村のみんなの為にも早く説得したいわよ。なんか文句ある!!?」

 そう言ってニファは俺を睨む。


「いや…文句ないさ。そもそもこれは、本来が終わらせないといけない物語なんだ。それについてきてくれたお前には、本当に感謝してるさ」

 俺はきっと、悲しい顔をしながら言ってるんだろうな。


 横で見ているニファもそんな俺を見て、驚いているようだ。



「そういえば貴方、にいたって言ってたけど、まさか…」

 その時だった。


「ニファ。馬車を止めろ!!」

 俺はニファの手綱を奪い、馬を叩き、馬車を止める。

 馬車は猛烈な砂埃を立て、止まった。


「ちょっと!!何すんのよ…!」


「おい!!せっかくいい夢見てたのに…」

 寝起きのソロン達がそう言ってる時にはもう、俺は相棒を持ち、馬車から飛び出していた。


「おい!!!大丈夫か!!!?」

 そう…俺の前方、森を抜けた先の開けた場所には、猛獣に襲われている人がいた。


 俺は相棒の持ち手を一回引き、猛獣どもに向かい、風と雷の一撃を放つ。


風雷の衝撃砲フウライパウンド!!」

 雷を纏った空気の玉は風を切り、飛んでいき、その人を囲んでいた猛獣どもに当たった。

 猛獣どもは体を痙攣させ、泡を吹いてその場に倒れた。


 俺はにそう話しかける。

「大丈夫…ですか?怪我とかないですか??」

 その男性は、俺の相棒を見ると…


「ブラーボ。素晴らしい腕前、そして…素晴らしいをお持ちで…」

 は拍手をしながら、俺たちにこう言ったのだ。









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