第5話 新たな戦人との出会い

 翌日、メアリーは戦場へ出かけて行った。

 僕はまだ脚が治りきっておらず、笑顔で向かうメアリーを松葉杖をつきながら見送った。

 後日、他の軍人が話しているのを偶然聞いてしまった。

 自国のゲヘナ地区が落とされて、全滅だと言っていた。

 ゲヘナ地区はメアリーが派遣された地区だ。

 それを聞いた僕は別に何も思わなかった。僕たちはどうせ同じところにいくんだし。

 僕はその話を聞いたあと、怪我人宿舎に戻った。


 

 その翌日僕の元には手紙が来た。

 『ロス・ミルアット殿。あなたの次の派遣地は首都レイアです。この通知が届いた十日以内に派遣地に向かってください。』

 ここで問題。

 Q,僕はどういう感情になったでしょう。

 分かり切っている。A,何も思わない。

 ただ一つの考えが頭にある。


 このめんどくさいことは終わりたい…。どこか静かなところに行きたい…。

 メアリーにはああ言ったけど

 


 もう、消えたいなぁ…。




 通知が来た三日後、僕は首都レイアに向かった。

 「どうも。本日付けでここに配属されました、ロス・ミルアットです。」

 首都レイアの作戦本部に着いた僕は、ここの司令官に挨拶に行った。

 「どうもロスくん。私はミク・アルプ。レイアの司令官を任されている。」

 手を出してきたので握手をした。

 「さて、君には早速だが出てほしいと思っている。」

 空間にピリッと緊張が走った。

 「聞いてはいると思うが、ここは前線の中でも最前線に近いところだからな。人手が足りないんだ。」

 人手が足りない。イコールたくさん死ぬということだ。

 「ここではペアを作ってもらい、お互いカバーをしあいながら行動してもらう。」

 「では、私は誰と組めばよろしいのでしょうか。」

 「私だ。」

 「…はい?」

 「私だ。」 

 「司令官殿とですか?」

 「あぁ、さっきも言ったがここは人手不足だからな。私も出るしかないんだよ。それに、私も出た方が状況が分かりやすくなるからな。早速準備してくれ。」

 そう言い、作戦テントを出た。



 「準備できたか?出るぞ。」

 「はい。」

 戦場に向かう。

 「ロスくん。」

 「はい。」

 「その腰につけているドッグタグは戦友のものかい?」

 「これは…、この戦いを恨みあった人のです。」

 僕がここにくるときに準備している途中、枕の下にメアリーのドッグタグがあった。

 あの人がそんなへまをするわけがない。

 あの人は分かっていてやったんだと思う。

 「…そうか。じゃあ早く終わらせるとするか。」

 そう言って、僕たちは足早に戦場へ向かった。


 「状況はどうだ?」

 「あ、司令官殿。今の時点ではこちら側が押しています。後ろの人は?」

 「本日付けでここに配属されたロスだ。人手が足らんからすぐに連れてきた。」

 「新人ですか。」

 軽く会釈をすると戦場へ向き直る。

 「大砲が三門あります。三発放ったら突撃してください。」

 了解した、と司令官は言い、機会を見極める。

 「いきます!」

 ドォン!ドォン!ドォン!

 「突撃!」

 その一声でこちら陣営が走り出す。

 「ロス!行くぞ!」

 そう言われたが、僕はとても皆さんのように威勢を出せなかった。

 僕は、みなさんのようにこの戦いに意味を見出せなかった。

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戦場でハッピーバースデイ 霜月 識 @shki

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