第5話 共犯者。
犯人の目星がついたと森林樹が言い、私と花田先輩が話を聞く。
「犯人は多分、27〜29の独身女性」
「それなら植松真琴は27で合致するな」
「そして共犯者が居る」
「共犯者?」
「ああ、多分今行方が知れないのは影武者で、犯人は都内に潜伏している。だがここが1番自信がないんだ。もしかしたら本当に逃亡しているのが犯人で、都内に居るのが共犯者かも知れない」
「じゃあ」
「犯人を追う事は止められない。かと言って野放しにすると真犯人が都内だった場合に逃げられる可能性がある。だから怪しい所に花田と俺で行く必要がある」
「怪しい場所?」
「遺体の解体場所と犯人の家だね」
「2か所か、応援を呼ぶにしても第三者の森林の推理ですなんて言えないから2人で動くしかないか」
「危ないですよ!私も行きます!」
「なら一般人の森林と日向で組め、俺は1人で動く」
危険は承知だが、3人で動いて逃すと、植松真琴か共犯者を捕まえられなくなる。
私は仕方なくその案を受け入れて、森林樹と植松真琴の住まいに向かい、花田先輩は遺体の解体場所に使われたと思われる廃団地へと向かった。
道すがら、森林樹が「多分、今回の勝負に出たのは廃団地の解体が近づいているからだよ」と話してくれた。
「どういう事ですか?」
「想像通りなら遺体の解体も含めて一つの計画なんだ。そして年齢もね。今を逃すとやり切れなくなる。だからこそ犯人は今行動を起こした」
「植松真琴さんは何が目的なんでしょう?」
「犯人の目的は、多分愛だよ」
森林樹は怖い笑顔で前を見て愛だと言った。
私にはそれがよくわからなかった。
そして植松真琴さんの家にはやはり誰もいなかった。
「不発ですね」
「うん。そろそろかな…。花田に電話してみて」
そろそろ?
私が花田先輩に電話をすると、花田先輩は苦しげな声で「日向か…。半分当たりだ。共犯者が居たぞ。この野郎…、生意気にも武装していた。俺もやられた。確保したから至急応援を呼んでくれ」と言った。
私は慌てて応援と救急を呼び、森林樹に事態を告げて別れると警察病院へと向かった。
・・・
花田先輩は腹部を斬られていて手術を受けていた。
捕まったのは植松真琴さんではなく共犯者で、名前は
部長からの詰問に、花田先輩は「解体場所があるんじゃないかと思って調べたくなったんです。日向には裏の裏で植松真琴が戻ってきていないか見てこいと命令しました」と誤魔化してくれた。
廃団地に置かれた立ち入り禁止の看板と、鎖の先には確かに足跡があり、花田先輩は足跡につられて中に入ると、3階の一室が解体場所だった。
そこで花田先輩を待ち構えていたのが菅谷昌紀だった。
解体に使用したノコギリや包丁で向かってきた菅谷昌紀。
花田先輩は菅谷昌紀を制圧できたが、押さえ込む際に腹部を斬られてしまっていた。
菅谷昌紀は素直に取り調べに応じたが、植松真琴との接点はなかった。
植松真琴の写真を見せても無反応。
通院歴を調べても、植松真琴が勤める歯科医への受診歴はなかった。
だが、取り調べで緒方翔伍と桧山岳人の写真を見せて遺棄や損壊に関与しているのかと聞かれた時は、「手伝いました」とキチンと受け応えていた。
そもそもこの菅谷昌紀は30歳の時に職場で起きたトラブルにより休職に追い込まれていて、今は生活保護を受けていた。
職場トラブルはすぐに判明した。
同僚女性からストーカーの疑いをかけられた菅谷昌紀は必死に否定したが、人間付き合いが希薄で付き合い方がわからなかった菅谷昌紀からすれば、初めて優しくされた女性への好意の示し方や距離感がわからずにいた。
その結果、ストーカーのレッテルを貼られ、外に出られなくなってしまう。
正直、そんな菅谷昌紀が合コンに行くなんて不可能に近い。
前2人と違いすぎて話にならない。
だが菅谷昌紀が捕まったのは大きな一歩だった。
なのに犯人の事は何もわからない。
そもそも名前も知らない犯人に協力していた菅谷昌紀は、言われた通り廃団地の解体現場に顔を出して花田先輩に捕まる。
ならばスマートフォンは?
連絡手段は?
そう思ったが、何一つ残されて居なかった。
菅谷昌紀は、犯人の指示でスマートフォンを焼却していた。
もう後は植松真琴を捕まえて、通話履歴から菅谷昌紀との繋がりを抑えて逮捕するしかないと思っていた。
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