20XXの奴隷

俺はそこそこの金持ちだった。

とは言っても女がひっきりなしとかそういうレベルじゃない。

買いたいときに買いたいものが買える程度だ。

そして今俺には買いたい物がある。

金持ちだからといって変なものを衝動で買うというわけじゃない。むしろ「最近流行りの」もの、つまり奴隷である。

高くて2ドル、普通は0ドルで買える故、スラムの輩の間でも流行っているらしい。

まあ俺はまともに住める場所を整えるのに60ドルも使っちまったが。

奴隷はそのへんのビルの屋上とかで買える。


「やあ嬢ちゃん、ウチすまない?」

俺はなんとなく気に入った子がいたので引き取ることにした。

奴隷商は奴隷をフェンスから引き剥がし、俺に渡した。

なにか言いたそうにしていたが、ガムテープが口に貼られているので諦めた様子だった。


「痛病を知ってるか!?」

家に帰ってガムテープを剥がすなり殴りかかる勢いで奴隷の女は質問してきた。

「全身が常に痛むように感じる精神病だろ?ビジネスマンは知識が重要なん…」

「死ねよ!!」

奴隷っていうのはまずこういうことを言わないように躾けるのが大事らしい。

俺はきついのを一発お見舞いしてから優しく質問をした。

「でどうした?」

「私は紆余曲折あってその痛症になった。痛くて痛くて辛かった。我慢なんかするより死んだほうがずっと楽だったんだ!」

「そうかー。それはつらいねー。でもこれからがんばろーよー。おれがたすけたんだからさー。」

「痛いんだ……!殺してよ……!」


20XX年、人の命を他人の所有物にすることができるようになった。

フェンスから逃げる志願者を「救済」すると言って無断で助ける。

☒殺志願者の命を捨てるか捨てないかを他人が判断できるようになったのだ。

じさ☒しがんしゃはへり、とってもへいわなせかいになったんだー。

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