第23話
<キラズside>
バタンと音がし、扉を見れば、ここの使用人らしき人物が慌てた様子で扉を開け放っていた。
「だっ、大丈夫ですか!? 小さな叫び声が聞こえたので、無理矢理開けたのですが……」
ベッドに寝転がっているキュリズ様。男性。
その上に跨っている私。女性。
「えっと……お邪魔してしまったみたいですね……その、ごゆっくりお楽しみください………」
どうやら勘違いされたみたいだ。
確かにそうではあるけれど、そういった行為はまだしていない。いやしかし、勘違いや噂というのは便利なもので、上手くいけば私の有利に働く。なら、特に口止めもしないでおこう。
「あ、あの、お時間になったらもう一度来ますので、それまでには済ませておいてください……」
そう言って、パタンと扉が閉じられる。
熱は引いたけれど、まだし足りない。
気持ちを高めるためにキュリズ様の方へと顔を向ける。
「あ、あの……何してるんですか……?」
先程の物音でキュリズ様は目覚めてしまったけれど。
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<キュリズside>
んーっと、どういう状況?
あんまり覚えてないけど、確か、ご飯食べてて、眠くなって、寝て……? それでなんでキラズ様が私の上に跨ってるの?
「あの……キラズ様? んんっ!?」
ふぇ!? え!? キスされた!?
あ、ダメ。気持ちいい。
キラズ様の舌が私の口内に侵入しているけれど、私も抵抗せずにそれを受け入れている。
「んっ……んふぁっ……」
私も舌を伸ばしてキラズ様の舌と絡ませる。
少しキラズ様の舌が引っ込むと、それを私が追いかける。下品だと分かりつつも、ぴちゃぴちゃと音を鳴らし、目を開くとキラズ様の顔が溶けている。
私の顔も似たような感じなのかなぁ。
恥ずかしさを感じながらも、それも悪くないと考えている私がいる。
もっと堪能したい。そう思っていたけれど、体の作りは無情で、だんだんと息苦しくなってきた私はキラズ様の肩を叩いて離れるように促す。
キラズ様も顔を離し、お互い息切れの状態だった。
荒い呼吸音だけが部屋を支配する。
「………」
「………」
「何してくれてるんですか!?」
「何……とは?」
「私が起きた時に急にキスをしてきていたことですよ! 困ります! あんなことを突然されたら!!」
「なら、突然でなければいいのですね? それでは、今からします」
そう言うと、頬に軽いキスを落としてくる。
「だっ、だから! そういうことではなく! 事前申告でもダメです! 両方の同意が無ければ……!」
キスされた所を手で押さえながら文句を言う。感情的に喋っているから内容は、支離滅裂となっているけれど。
「それに! なんで寝起きにしてきたんですか!?」
「それは……キュリズ様が私のことを名前で呼んでくださったから、私、嬉しくて……」
名前? 寝起きはキスされたことしか覚えていないから、キラズ様のことをなんて呼んだのかは覚えていない。
確かに、名前呼びだったかもしれない。でも、そこまで大切なことなのだろうか?
「名前がそんなに大切なのですか?」
「名前は私にとって大切な意味を持ちますから。今後も、気軽に名前で呼んでくださっても良いのですのよ?」
「名前を呼ぶ度にキスされそうだからやめておきます……」
未だにあの深いキスの感触を忘れられずにいるが、口だけで否定しておく。体は多分、正直になるだろうけど、反応しなければ良いだけだし……!
「そうですか。分かりましたわ」
淡白な反応をされたことに少しだけ驚くけれど、それ以外に話があるのか、キラズ様が口を開く。
「それより、そろそろお時間ですわ。長い時間抜け出していましたけれど、そろそろ戻らなければ不審に思われるかもしれませんわ」
「え? あ、はい」
急な話題転換に適当な返事になってしまう。
「それでは、行きましょうか」
スッと出された手に、どうしようかと一瞬の逡巡を挟んで、私はその手を取る。
手を取った瞬間に恋人繋ぎとなったから、早速、後悔し始めているけど。
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