この作品を読んでいるとき、鍵盤の上で高低を行ったり来たりしている状態が頭に浮かびました。
雨の前後で主人公の機微に上下があるところからそう感じたのだと思います。
嫌なことがあれば音は下がっていき、いいことがあれば音は上がっていく。まさに人生ですね。
傘を差して雨粒を遮っても、そこには必ず音が生まれる。けれど、その音とともに鍵盤を踏めば、また変わった世界が現れる。ただ漠然と受けるだけではなく、時には自ら与える。そうすれば、自分にとって気持ちのよい音楽が流れ出す。
ソラシドからはそんな人生観を教えてもらったような気がします。
とても素敵な作品でした!
雨の訪れとともにやって来る『ソラシド』と呼ばれた男と、40手前にして仕事漬けの人生を送る主人公・中高一貫校の教師の物語。
現実の世界でもそうだけど「働き方改革」とか「ブラック企業撲滅」「助け合い」といった聞こえの良いお題目の裏側で、誰かが必ず被らなければならないその分の泥をノーを言えずに被らされている人間が必ず存在する(私の近くでも、そんな状況で働いている友人がいる)
そんな状況の主人公がソラシドとの関係の中でどう変わっていくのか、最後はどんな風になるのか……短編という短い中にも濃密なドラマが詰まっていて、現実にもこんなドラマが起こってくれたらいいな、とか読んで良かったと思える作品でした。