6.対海晴、逃亡戦。






「何買いにきたのさ……って、律人が普通の食材を!?」

「そ、そんなにビビることか……?」



 嬉々と声をかけてきた海晴は、俺の買い物カゴの中身を確認して声を上げた。それこそ他の客が何事かと、驚いてこちらを振り返る大きさで。

 俺はヤバいと思いつつ、どうにか誤魔化そうとするが――。



「おっかしいだろ! 律人の夕食といったら、一つ百円前後のカップ麺。朝に至ってはギリギリまで寝てるから何も食わず、昼休みに食堂でドカ食いが基本! まさしく不健康の極み、というのを地で行ってる学生なのに……!!」

「思った以上に言いたい放題されて、逆にビビってるよ……」



 物凄い早口で捲し立てられて、反論する暇すらなかった。

 というか海晴、俺の食事情に詳しすぎるだろ。



「誰が調理する、ってんだよ! おい!?」

「だ、誰でも良いだろ……じゃなくて、自炊だよ!! えっと、その……生活費が思ったよりキツくて……」

「怪しいな。……というか、三日前に振り込んでもらったところだろ?」

「え、なんで知ってんの。……こわ」



 小首を傾げて怪しむ幼馴染みに、怯える俺。

 なぜ生活費の振込日がバレているのかは分からないが、しかし今はどうにかして話題を変えて逃げなければならなかった。海晴のやつ、下手をすれば俺の部屋まで上がり込んでくるぞ……。



「とにかく、俺は自炊に目覚めたんだ! それで良いだろ!?」

「良くないっての! 律人には料理下手でいてもらわないと、アタシの将来設計が変わって――」

「……ん、将来設計?」

「な、なんでもねぇよ!?」



 とか思ってたら、何故か海晴は顔を真っ赤にして狼狽えていた。

 これは逃げ出すチャンスかもしれない。

 俺はそう考え、隙をうかがった。



「だ、だから別に、アタシは律人のことなんか……」



 ――いまだ!

 良く分からないが、海晴は完全に自分の世界に入っていた。

 俺は視線を逸らした彼女の視界から、自然にフェードアウトするように移動。そして、帰宅するサラリーマンに混ざるようにして、その場を後にしたのだった。




――

短くてごめんなさい_(:3 」∠)_

暑い日が続きますが、読者の皆様は気を付けてね……。


※追記※

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