第一章 第8話

 カプリを肩に止まらせ、爺さんが御するワイバーンの素材満載の馬車を護衛する陣形でケルスへと向かう。

 3人にもカプリを紹介し念話をしてもらう。

 念話には驚いたようだが、カプリの愛くるしい姿と念話で感じる子供の様な声音に三人ともメロメロだ。

 爺さんも念話を繋いでもらって諜報組織立ち上げ構想を共有した。

 馬車の御者、前後左右に配置しているが、念話を使うとテーブルを囲んで話しているように会話が弾む。


(レ:これは凄いぞ)


 レイモンドが念話やファルコン族についてカプリにいくつか質問した後しばらく考え込みやがてこう伝えてきた。


〈レ:ナギ、お前の進めている諜報機関立上げだがもう9割完成だな。

 残りはファルコン族とハワード商会の繋ぎをどうするかだな。

 ん~、明日までには考えをまとめて報告書にして渡すよ〉


〈ナ:え? 9割完成って本当か? 流石レイモンドだ、助かるよ〉


〈カ:へ~、レイ君って頭いいんだね~、カプリも全然想像つかないよ。

 人は見かけによらないって本当なんだね、ね~ナギ〉


〈レ:カプリちゃん俺の見かけが悪いなんてひどいよ~ グスッ〉


 念話を楽しんでいると、ケルスが見えてきた。


〈わー、此処がナギたちが住んでいるケルスの街なんだね。上空からは判らなかったけど地上から見ると大きいんだね〉


〈わー、大きな門〉


〈わー、人族がいっぱい〉


〈わーこれが人族のお家〉


 カプリはお上りさん興奮状態だ。

 目に入るもの全てが珍しいのだろう。

 念話がつながったままなのに、もはやサトラレ君だ。

 俺はスルー力が高いので、肩の上でキョロキョロし続けるカプリを優しく見守った。


 爺さんはどうやら直接商会に戻るのではなく、既に買い手のついていたワイバーンの素材を卸しながら戻るようだ。


 最初は鍛冶屋。

 スミス工房はケルスで一番の武器防具を作る工房だ。

 製鉄所も街郊外で運営している。

 スミス工房には、ワイバーンの翼、頭部、革、手足を卸した。

 どうやら俺たちの装備を作ってくれるよう爺さんが話を付けてくれたようだ。

 翌日もう一度寸法取りに来るようにスミス親方から言われた。


 続いてケミスト薬局。

 各種ポーションを製造販売するケルス最大手の薬局だ。

 毒尾を樽ごと卸した。

 ケミストさんは、これだけの量があればしばらくワイバーンの毒関係の素材はいらないよと言いながらもニコニコ顔だ。


 次はキャシディー肉店。

 庶民から貴族まで幅広く人気のある品質第一の良心的な肉屋だ。

 2/3の肉を卸した。

 キャシディーさんはこれでいいベーコンが作れるとニコニコ顔だ。


 最後は俺も時々お世話になる食堂フルストマック。

 店名のとおり必ず満腹になる大盛専門店で、味もぴか一だ。

 残りの肉と内臓を全て卸した。

 店長のジョンさんから、「明日からワイバーン祭りだから必ず来てくれよ」と言われる。

 明日の昼飯は決まりだな。


 素材満載だった馬車を空にして俺たちはハワード商会に戻り解散した。




 夕食の時間、家族にカプリを紹介した。

 カプリの愛くるしい姿と念話で感じる子供の様な声音に母さんは既にメロメロだ。 

 カプリも落ち着いたのか母さんの肩に移動して撫で撫でされて気持ちよさそうに目を細めている。

 カプリの食事事情だが魔力が補充されれば何も食べなくてもいいようだ。

 時々気になる食べ物を口にすることがあり、味覚とかはあるが生命の維持という意味では魔力が必須のようだ。

 魔力の補充をどうしようかと聞いたところ、俺の魔力をお腹がすいた時に補充しているから気にするなとの事。

 どうやら俺の魔力は魔力溜りの魔力と違って濃くて美味しいんだと。なんかやらしいな。




 食事も終わり就寝前のステータス確認だ。


シンバ・ハワード(13)

職業:商人

特殊スキル:DEXTERITY

      ファルコン族との友情の証:念話

スキル:剣術1、棒術3、身体強化2

    中級魔法火水土風複合

異世界言語


 確かに念話のスキルがあった。俺は試しにボンドに繋いでみた。


〈ボンド、起きてるか? 〉


〈ええ? ナギか? 今いいとこなのに何してるんだ。緊急事態か? 〉


〈ああ、ごめんごめん。念話のテストだ。ちなみに今どこにいる? 〉


〈ああ、もう。しょうがない奴だな。

 キャバレーチョメチョメでジェーンと一緒に飲んでるとこだよ。

 これから緊急時以外、夜の念話禁止な。早く切れ〉


〈ああ了解。今日はありがとうな。お休み。飲み過ぎるなよ〉


 俺は念話を切った。ボンドには悪いことをしたがキャバレーチョメチョメなら、ここから1km以上離れている。

 使い方によっては大きな武器になりそうだ。

 ファルコン族との友情を深める責任は重大だが、恩恵も大きいと改めて感じた。


 ふと気付いた。

 カプリが俺のベッドの枕元に蹲って目を閉じている。

 初めてまじかで見る人族の世界に驚き続けて疲れてしまったのだろう。

 俺はカプリを起こさないようそぉーと布団に入り、休むのだった。

 カプリって意外といい匂いがするんだな。


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