第22話 第二階第九号室~人工大穴~

 「神作さん・・・。なんで私にアドバイスをくれたんだろう?不思議だ。私の先祖の事も今回と同じように上から見ていたのかな。」


 沙月は死にそうになっていたところを神作の助言によって助けられていた。しかし、神作は前に会った時目の前から消えた。消滅したというのに声だけ聞こえるのがおかしいと感じた沙月は頭を悩ませていたが、気を取りなおして次の部屋・第九号室の扉を開けた。


 「うわっ!井戸!」


 そこに広がっていたのは部屋の真ん中に位置する井戸。そしてその周りを草が覆っていた。禍々しいオーラを醸しだすそれは何者かが出てくるのではないかという予想を引き起こさせる。そして予想は的中した。井戸の中から皿のこすれる音が聞こえてきたのだ。


 『皿が一枚、皿が二枚、皿が三枚、・・・あれ、四枚目は・・・?どこにある・・・。』


 ちょっぴりドジを踏んでいる霊だったが、その声に怯える沙月。その霊は番町皿屋敷でもやっているのだろうか。ずっと皿を探している。一方沙月は恐れつつもその霊に話しかける為に井戸の中を覗き、一声かけた。


 「あの・・・!!」


 『うわぁぁぁ!!誰!!!』


 「えーーー!?」


 霊は沙月の声に驚き、持っていた三枚の皿を落として割ってしまった。沙月も霊の予想外の反応に驚き、つい叫んでしまった。


 「えっと、何をしているのですか?」


 『は、話しかけないで!!君、霊能力者なんでしょ!!』


 その霊は何故か沙月の存在に酷く怯えていた。沙月を見た瞬間全身の震えが止まらなくなり、土下座を沙月に向け、助けを懇願したのだ。


 「・・・どうしたのですか。もしかして、過去に霊能力者によって攻撃を受けたとか?」


 沙月は困惑しながらもその霊に問う。するとその霊は沙月の問いに対し何回も首を縦に振った。


 「・・・一度井戸の外に出てきてください。貴方が悪霊かもしれないので。」


 『い、嫌だ!!僕はただ皆に怖い話をしていただけなのに、君達霊能力者が襲ってきた!!もう同じ手は喰らわないから!!』


 その霊はその場から動こうとしなかった。それを見ていた沙月は痺れを切らし井戸の中に入る選択をとる。そして井戸の底についたところで沙月は語りかけた。


 「ちゃんと顔を見て話してください。そんな事では悪霊ではないと見抜けないですから。証明してください。今ここで。」


 『・・・引っかかったな!!ここがお前の死に場所だ!!』


 「えっ?」


 その霊は急に態度が変わり、詠唱もなしに霊鎮の術その1・狩突きを繰りだしてきた。狭い場所で繰り出された幾千もの針が沙月を襲う。沙月はまんまと罠に引っかかったのだ。しかし次の瞬間霊の胸に穴が空いた。

 

『ガハッ!な、なんで・・・!!』


 「・・・!?」


 沙月はいつの間にか術を繰りだしていたのだ。無自覚で。しかも同じ狩突きであるというのに、直径10センチメートルほどの太い針がその霊を貫いていた。そして訳も分からないままその霊は消滅した。

 

 「な、なんで・・・!?」


 これはホラーとは違う恐怖。何者かに操られているのではないかという感覚に襲われていた沙月。しかもいつの間にか体が青白い結界に包まれていた。


 「これは・・・禍払いの結界!?・・・なにかがおかしい!私の身になにか変化が起きている!!」


 沙月は怖くなり井戸をすがりつくように昇り、部屋の中を見渡した。しかし特に変わりない部屋が広がっており、誰かの痕跡もない。つまり今の行動は沙月自身が勝手に起こした事なのだ。


 「怖い・・・。なんなの・・・?・・・あ、神作さんなら知っているかもしれない!!急いで二階の最終号室に向かおう!!」


 沙月は神作が隣の部屋、第二階最終号室にいると信じて走っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る