昼と夜で姿を変える都市シアハニー。富裕層の住む「天国」とスラムの「地獄」に分かたれたこの街で、病の母を支えながら生きる少年デュランは、ある日、迷子になって泣いていた「天国」育ちの少女アネモネの手を引きます。分け合った硬いパン、林檎味の飴、小指を絡めた約束。二人の幼い恋は、どこまでも甘く、そして、あまりにも儚いものでした。
本作は、生まれた場所によって分断された二人の十数年を描く悲恋の物語です。
作者の注意書きどおり、非常に残酷な描写を含む大人向けの作品です。それでも、痛みと悲しみの底でかすかに光り続ける愛の物語を最後まで見届けたい方に、ぜひ読んでいただきたい一作です。
とても重苦しく、切なく、そして温かい物語でした。
「罪を背負った人間は救われ得るのか」という重い問いを、過剰な正義や説教に逃げることなく、徹底して感情の物語として描き切っている点が非常に印象的です。
デュランという主人公は、読者が安易に共感できない過去と罪を抱えながらも、その弱さや未練、愛への執着があまりにも人間的で、目を逸らせません。
一方でアネモネの存在は、この物語における「救い」を体現していますが、それは決して罪を帳消しにする免罪符ではありません。
彼女自身も恐れ、葛藤し、それでもなお愛してしまう。その揺らぎがリアルで、読者に強い余韻を残します。
読後に静かな余韻と切なさが長く残る物語でした。
読了後のレビュー。
全十話で展開される天国と地獄――極度に二極化された世界が大通りで分かち共存する都市シアハニー市。この街のスラムの地獄で主人公デュランは不法移民としての不遇の過去とともに生きる。
デュランは天国と呼ばれる富裕層の区画から出てきた瞳の美しい一人の少女アネモネと出会う。彼にとって彼女はペインキラーとも天使ともつかない、汚穢の闇獄を明るく照らす輝ける存在だった。そして互いに心惹かれ、次第にかけがえのない存在へと物語はいざない加速していく。
目を引くのが、二人を巡り合わせる高い構成力だ。生い立ちや生活水準・家族構成など、二人の間に圧倒的な格差が存在しながら、引き合うように離していく展開が秀逸で、この如何ともし難い逆境をデュランはこれからどう乗り越えていくのか、その先が楽しみで仕方がない。
さらに、隔絶されてしまう愛も、屈折した思いの言葉も、過去の因果が未来の足枷となってしまうもどかしさに言葉を超えた慨嘆が心を締め付けてやまないのだ。
心が痛い――
胸が苦しい――
ララバイはレクイエムへと転調し、ラブソングへと昇華されていく。果たせなかった思いは最後に美しい愛と汚れた穢とを重ね合わせ、善悪の因果が織り成す再会のシーンは感動的だ。
永遠の場所に添い遂げる花――
鎮魂のラブソングが流れていく――
読むには相応の覚悟がいるのでご注意を。
しかし、刺さる方には確実に刺さる――そんな刺激的で感動的な擬似体験を味わうにはココが最短ルートだ。
これは映画だ。
記憶に残る象徴的な一作となるのは間違いない。
昼は静かなビジネス・タウン。夜は歓楽街と摩天楼〔まてんろう〕。
昼と夜で違う顔を見せるシアハニー市のロザー・シェレフ地区。通称”地獄〔ヘル〕”と呼ばれる貧民街で生まれたデュランは、偶然出会った”天国〔ヘヴン〕”アイベリー地区で生まれたアネモネに恋をした。
しかし、あることがきっかけで、二人は会うことすらできなくなった。
苦しみや、悲しみに駆られる日々……全く希望が見えない環境でも、アネモネを想う気持ちだけが変わらずに月日が過ぎてゆく――。
※注意書き※
過度、かつ、凄惨、かつ、執拗な拷問描写があります。不適切かつ狂気的、猟奇的、グロテスクな描写を含みます。部分的にカニバリズム的要素が含まれます。少しでも苦手な要素がある方はこの話を読まれないことを強く強く推奨いたします。
また、この作品はフィクションであり、誘拐や拷問を礼賛・推奨するものではございません。ご不快な思いをさせてしまう可能性がとても高いです。それでもよろしければ、どうかご注意の上閲覧していただきますようお願いいたします。(作者より)
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こんにちは、もしくはこんばんは、朝凪SANAです(*^^*)
この作品は、とても読者の心を揺さぶられる……素晴らしい作品です。
私は作品を読んでくださる読者様が、物語とともに一喜一憂できる作品を目指しています。
そんな私が目指す作品を書かれているジャックさん(作者様)は、本当に尊敬します……!
ぜひ、「一度は読んで欲しい!」と思う一押しの作品です。
過去一力説してしまったかもしれないですね……。
というわけなので! 是非是非、皆様読んでみてください!!
では、また出会いましょう☆
一言で言うと、ロミオとジュリエットの身分差があるパターンです。
しかし、社会の成り立ちや身分差のある恋愛の難しさ、理不尽な境遇等、非常に上手くリアルに物語に表現してあります。
間違っていても止められない憎悪の感情。
どうしようもなく理不尽な環境。
そのなかで正解を選び続けられる人間はどれだけいるのでしょうか?
ただ私は、案外単純にプラスの感情、愛を持って前に進むのか、マイナスの感情、憎悪に引きずられるかで、運命が変わるというメッセージにも思えました。
読後感もご都合主義じゃなくいエンディングに満足のいく物でした。
人間の感情を上手く表現できていると思いました。
グロ耐性がある方は、オススメです!
あなたはこれまで、雷に打たれると形容するに相応しい読書体験をしたことがどのくらいありますか?
これは単なる恋愛譚ではない、魂を抉るような感情の奔流に溢れた文学作品です。舞台はスラム街という名の地獄。そこで出会った少年と少女の愛は、闇を照らす一筋の光。
スラムに生きる少年デュランと、富裕層の少女アネモネの出会い。住む世界が異なる二人はそれでも互いに惹かれあい、初々しい愛を育みますが、不条理なほどに過酷な運命と現実の前に引き裂かれていきます。アネモネを守るために罪を犯し転落していくデュランと、引き離されてもなお彼を愛し続けるアネモネ。二人の人生、その生き様が読者の胸に強く強く響きます。
たった10話の中に描かれる圧倒的な世界観と情景描写、そして登場人物たちの見事な感情描写。舞台となるスラム街の描写は非常に生々しく、貧困と暴力、そして絶望が容赦なく描かれます。その中にあってデュランとアネモネの愛はどこまでも一途で美しく、このコントラストが物語に深い切なさと感動を与えます。
またこの物語には、様々な愛と罪の連鎖が描かれます。親から子へ、愛から憎しみへ、そしてまた新たな罪へと、連鎖は断ち切られることなく続いていきます。母親の愛はデュランに復讐という名の罪を植え付け、アネモネの愛は結果としてデュランを取り返しのつかない運命へと導きます。罪はとどまることなく、復讐の連鎖はさらに他の人物へと引き継がれていきます。
この物語からは、作者が自らの魂を削って書いたことが痛いほど伝わってきます。「天国」と「地獄」の鮮烈な対比、登場人物たちのとめどない愛情と憎悪、そしてどこにも救いのない不条理。これらは全て、作者が自身の内面と深く向き合い、苦悩しながら紡ぎ出したもの。その魂の叫びは、読者の心を強く揺さぶり、忘れられない爪痕を残します(詳細は同作者のエッセイに書かれており、そちらを読むことで本作がより深く理解できます)。
冒頭で雷に打たれると書きましたが、私にとって、この作品は間違いなくそのような体験をもたらしてくれました。
人間の業、逃れられない運命、愛と罪、復讐と赦し。わずか8万5千字あまりの中にその神髄全てを描き切った名作。私がこの物語から得たものを、ぜひ皆さんにも感じていただきたいと思います。
愛と喪失、希望と絶望といった普遍的な人間ドラマが描かれた秀作です。
主人公、デュランはスラムに生まれ、かつては美しかったが今は心身ともに壊れてしまった母と苦悩の人生を歩んでいます。そんな彼の元に現れた無垢な少女、アネモネ。
かたや地獄と揶揄される”スラム街”。もう一方は”天国”と呼ばれる富裕地区。そんな両極の場所に生まれた二人の逢瀬は切なく、やわらかで甘酸っぱい。やがて訪れるであろう予想通りの暗い未来を目の前にして――
二人の別れの以後に、デュランが堕ちてゆく様は、読むのが辛くなるほど残虐で凄惨なシーンの連続です。もし、この小説が映像化されたら、私は見ることはできないでしょう。ですが、作者のジャック(JTW)さんの筆致は美しく緻密で、デュランの複雑な内面や、苦悩、アネモネと抱いた夢などに共感せずにはいられません。
心優しいデュランを狂気にかりたてたものは何だったのでしょうか。彼を救う術はなかったのでしょうか。
「シアハニー・ランデヴ」は、そのような感情に訴えかける素晴らしい作品です。
各章の冒頭に作者さまが度々警告されているように、この作品には辛いシーンがあります。けれども、小説ならではの緻密な心理描写に没入できる傑作だと思います。
抑えきれない愛情、抑えきれない憎しみ、そしてその果ての狂気。
衝撃的すぎる展開に圧倒され、息をのみ、涙してしまいました。
まるで深夜の映画館で何時間も食い入って観たような
その余韻に浸って丸一日物想いに耽ってしまえそうな
そんな読後感を味わえました。
愛と憎しみは、紙一重であるように思います。
愛するからこそ、人は苦しみ、憎み、
手に入らない幸せを妬み、復讐する…
そこには本当はたくさんの愛が溢れていたのに
どれも手に掴むことはできない…
そのボタンの掛け違えが、1つでも違っていたら…
…そう思わずにはいられません。
デュランの生きてきた地獄のように長く、短い人生に
胸が締め付けられます…。
なにが悪で、なにが善なのか。
なにが正しくて、なにが間違いなのか。
そんなことを考えてしまいました。
デュランの母が歌う子守歌が、映像のように脳裏に焼き付いております。
感動の物語を読ませていただき、ありがとうございました。