magic”s egg ~魔術師の弟子は苦労する~
一塚 木間
prologue
逆から読んだら”赤の青”と、真逆になる変な名前をした魔術師が居る。
そんな名前について赤は決まって「ふざけた名前だけれど僕は気に入っているんだ」と私に向けて少年のように笑顔を浮かべて言ったのを急に思い出してしまった。
何故そんな思い出を語り出したかと言うと、その青乃赤が私の目の前に現れたからだ。
それも唐突に、脈絡なんて一切お構いなしに、私が7時17分の電車に 乗らないといけないのに、この人は偶然を装って、どう考えても取り
とっとと私に声を掛けろと言わんばかりに主張してくる姿に面倒ごとが待ち構えているのが分かった私は、赤が背を持たれている電柱手前の角を曲がって何くわない顔をしようと思ったが、先月の事を思い出し考え直した。
先月、お店の手伝いをしていた時に、赤の自分勝手すぎる言動に嫌気をさした私は、丸一日無視をした翌日、赤は30代にも差し掛かろうとしているのに思春期の少年のような行動に出た。
「探さないでください」
店のテーブルに一枚のメモを残し1週間音信不通になり、赤が帰ってくるまで私1人で占いの店を切盛りするはめになった事を思い出してしまった。
赤を無視しても迷惑、赤から逃げ出しても迷惑。赤の面倒ごとを回避する最善を考えた末に私が進む道は一つしかなかった。
「……声けるか」と溜息にも似た呟きは聞こえっこないはずなのに、赤は私に顔を向けた。
「お!」
赤は私に近づき、そして胡散臭い表情を浮かべ、きっとこう言うだろう。
「『こんな所で偶然だな。いやー偶然、偶然』」
はいはい、わかっていますよ、赤。これから……ちがうか、問題をどっかから持ち込んできたんでしょ。
「
「赤、学生に第一声で聞く言葉ではないですよ」
「そうか暇かー」
「……赤。その都合のいい耳どうにかしてもらえませんか?」
「今日は何と!」
「話、聞いてください」
「ははは、今日も落ち着いた返しだね」
赤の無駄に高いテンションとは対照的に私は、これ以上災いになるであろう問題をこじらせないように落ち着いて答える。
「明日、お店に行くまで大人しく待っていてください。なにより今は学業の方が大切です」
「学校なんて現代社会で意味も持たない場所に行く意味は有るのかい?」
未来ある若者に向かって、真顔で自分勝手な言い分に私は絶句した。
頭が湧いているのは百も承知だったが、まさかここまで沸騰しきって中身が無くなったのかとさえ本気で思ったが、赤は普段の
「冗談はここまでにして。空欄、学校終わったら店に来てくれ」
「どうしてですか?今日は行かなくても良いって昨日言っていましたよね?赤」
そう、今日は赤のお店にこき使われに行かなくてもいい日なのに、私は赤に詰め寄り抗議した。
「空蘭、君の言いたい事もわかる。僕だって休みくらいあげたかったんだけどさ」
赤は問い詰める私を笑顔でかわし、私に手渡した手紙を指さしこういった。
「その手紙を見たら、きっと君は突き動かされる。きっとね」
そう諭されるように赤に言われた私は、魔法にかかったように冷静になった。
「……赤」
「なにかな?」
「学校で読んでも良いですか?」
「ふふ、良いよ」
赤は微笑み私はこれから来るであろう受難に気分は最悪だ。
「……赤。用事があるなら次からこんな待ち伏せするような事はやめてください」
「たのしいだろ?」
「は?」
「ふふ、日々のスパイスにサプライズは大切だろ?」
「……そうですか。もう呆れて赤の事をどうにかしたいですよ」
「怖い事を言うね。この子は」
「怖い事を言うようになったのは、赤。彼方のせいですよ」
「何で僕?」
「だって貴方は私の師匠なんですから」
そう、これは青乃赤と言う存在自体がふざけている魔術師と、
その弟子である
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