第34話: これからのこと

「とりあえず、俺たちに起こったことは話し終えたわな。

 そんで、今日のことも理解した。

 ちょうどいいことに、黒薔薇の楽園ブラック・ロータスには空きが二人分存在する。ヒヤシキス、ニゲラ。

 お前らに問いたい。俺のギルドに入らないか?」


 もし二人が、黒薔薇の楽園ブラック・ロータスに入るのなら、どれだけ力強いことだろう。


「た、確かに、私たちは今、行く場所がありません。

 シャクナゲ様の意識は戻らず、金獅子は解散されたも同然でしょう。

 けれど、私はやはり……

 シャクナゲ様の元を離れるというのは……」


「シキ、シュウ、一緒。シキ、ギルド、入る」


 二人の反応は、それぞれだ。ヒヤシキスはおれの腕に擦り寄ってくるし、ニゲラはじっとシャクナゲを見つめていた。


「じゃあ、シキちゃんは決定ね。

 あとはニゲラだけど…シャクナゲのことは、ここで寝かせておくほうがいいと思うの。

 この状態では、彼女は体力を消耗することがない。

 つまり、何も栄養を取らなくても、彼女は生きていける。

 痩せこけることもなく、ただこのまま、眠り続けるのよ。

 病院へ行ったとしても、この結論に至るわ。ただ病院のベッドで寝るだけ。

 それなら、私としては、そばに置いておきたいの。彼女には、恩があるから。

 あなただって、一緒にいられる時間が長い方がいいんじゃない?

 ほら、病院って、診察とかが重なって、面会時間っていうのが決まっているでしょう?

 その分の時間を、ここに入ってもらえれば、いつでも彼女と会える。

 彼女の世話は私がするわ。だからお願い。

 私たちのギルドに入ってちょうだい」


 シャクナゲの傷を癒したトレランスが、ニゲラに語りかける。


 その目はとても必死で、かつての仲間を救いたいという気持ちが表れていたと言ってもいいだろう。


 ニゲラは、シャクナゲのその目に、絶対に裏切らないという意志を感じ取ったのだろう。


「わかりました。シャクナゲ様を、よろしくお願いします」


 改まって頭を下げるニゲラに、つられるようにして、トレランスも頭を下げた。


「こちらこそ、信頼してくださってくれて、ありがとうございます。

 シャクナゲは、私にお任せください。

 それと、これから同じ黒薔薇の楽園ブラック・ロータスのメンバーとしても、よろしくお願いします」


 二人の関係は、昔はどうだったのだろう。

 そんな考えがよぎるが、今はそんなことよりも、仲間に加わってくれた二人に喜びたいと思った。


 シャクナゲのことも、この場所に寝かせるという方針も決まったため、一度ここで、盛り上がってもいいのではないだろうか?


「二人とも、歓迎するよ。

 せっかく色々と決まったんだし、ちょっとしたお祝いをやろうよ。

 シャクナゲも一緒に」

「いいなそれ。トレランス。確か食料は余ってたよな」

「シキ、楽しみ」

「えぇロータス。余っているわよ。鍋にでもしましょうか」

「いいですね、鍋は久しぶりです」


 しばらくガヤガヤと月影荘での歓迎鍋パーティーが続いた。


 そして夜も真夜中に変わる時、月影荘の中では布団が敷かれ、六人が川の字になるようにして、寝静まった。

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