第64話:燃え尽き症候群、その前に潰す。

「OYS、モード『あお』」

「僕にもを召喚」


———パァン!!


武器同士がぶつかり合った音とは、全く想像出来ない程に渇いた衝撃音が爆ぜて、空間を揺らす。

ファントムシリーズとしては太刀型という、異端な様を用いた『宝剣クレシューズ』。心傷分解という触れた存在を粒子に至るまで焼き焦がし消失させる、常時一撃決殺のマップ兵器―――


それに太刀打ちできる存在といえば、あれ大剣も伝説級の兵器だろう。


「可愛い武器だね、お名前は?」

「妖精剣シャスティフォル。元は巨大な槍の穂先だったらしいけど、どこかの馬鹿ルージュが引き千切って来ちゃったんだ」

「えぇ………可哀想なんだけど………」


そのまま二合、三合と衝撃が舞い、互いに膂力を確認し合った後、人工太陽が吐いたブルースクリーンの光の帯越しに牽制しあう。


「ようやく本調子みたいだね。あの実力でどうやって平等者バイオレットを凌いだのか疑問だったけど、今のお前がなのか?」

「あぁ、さっきまで妹二人と喧嘩しててな。長女としては気が気じゃなかったのさ」


解離しかけていたA46エシルの脳メモリーとの同調は、仲間が時間を稼いでくれていたときに済ませた。前世の記憶でも不足していた戦闘データは、ヒュプノスの行動パターンをオルターがし、共有することでカバー。


「『延々』」

「僕には


無限を断ち裂く偽り無き切っ先が、喉笛を捉えようとした寸前に阻まれて消える。




―――身体に残る戦場地獄記憶痛みが、頭に刺さるともに戦う仲間護るべき子供意思悲鳴が。




「モード『黒穴:セキ』」

な見た目だね」


有を反発する黒色のホワイトホールが、全くの同座標に相対するブラックホールを召喚されることで対消滅してしまった。




―――胸に過ぎる、終わらせられなかった英雄戦犯としての自負が。




「……………」

「もうネタ切れ?」




—————1人だけ解放された俺を妬む量産型の意思、その全てが、置いて逝ってしまったアスナの責任だと悲痛に訴えかけ、俺の肩に本当に実体を持ったかの様にのしかかる。




「オルター、ここは1人で大丈夫だ」

「———了解した。動けるものは良く聞けッ! 今から地上に出るぞ、楽園内部のごたつきを勘繰った帝国が総力を持って攻めてくる! 既にLicaシリーズの解放は済ませたからな、彼女たちも戦力だと思えッ!!」
























「—————行ったか」

「……………そんな、覇気の無い顔で、僕を殺せると思ってんの?」


どうやら、俺が意識する以上に気が抜けているらしい。しかしどうしても、指先がふわふわして目の焦点が定まらない。


凍り付くような寒気が伝えてくる。この身体はOYSに貪られ、とっくのとうにのだと。


「………全然駄目だな。ここまでお膳立てされても、一切勝てるビジョンが浮かばねぇ」

「だろうね、万が一僕に勝ってもそのまま死にそうだもん」


意識無くとも、転生してから百十数年は生きただろう………でもまだまだやりたい事があるんだ。




—————相棒クレシューズだけが俺の左手を貼り付いたみたいに離さない、俺だって離す気は毛頭存在し得ないッ!!!





「負けても死なない、絶対に生き延びてやる」

「逃げ切ればお前の勝ちってことね、それで良いよ」


紫煙で擦り切れた肺が疼き、後悔しか存在しない全身に血が通う。


「来いよ、正義の味方多数決主義


普段なら煙草で埋まっているはずの右指先で、宣戦布告を促す。


「どうもありがとう、身内贔屓エゴイスト




スターターなんていらない、ホラ貝みたいな腹の底から響く合図だって、無くていい。




((全力での正義を尊重する))




———その意思だけで、タイミングは噛み合う。






























「加速しろ、俺だけの世界………『超越加速タキオン』」

「開け、僕の為だけの空間………『自己盲愛ナルシス』」

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