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「いまだから言うんだけどさ実は三上君もいいかもって思っていたんだ」

「そうなのか?」


 杏花とか先輩がいてくれてよかった、というか俺と関わってくれる女子はこういう大胆な発言をしすぎだ。

 別にそれ自体が嫌どころか嬉しいぐらいだが奪ってしまうようなことがあったら微妙だからな、奪えると考えていること自体がアレだとしてもな。


「うん、だけど私は私がそうであるように杏花から色々と聞いていたからね、だから頑張ることはしなかったけど」

「入谷先輩に対してはいつからだったんだ?」

「それは本当に最近だよ、そもそも三上君とあの二匹と一緒にいるときに初めて話し始めたんだから」

「そう考えるとどっちも急だな」

「そうだね、だけど出会ってからどうこうなんて関係ないってわかったよ」


 お、おぅ、これは所謂乙女の顔ってやつか。

 いまは何故か杏花が先輩と一緒に飲み物を買いにいっていないが……。


「でも、久喜先輩も三上君も任せきりで駄目駄目だけどね」

「あ、あれ、名前呼びも入谷先輩の方からしたって聞いたが」

「本当にそれだけだよ、まあ……そのときは嬉しかったけど」

「はは、結局は惚気たいだけなんだな」


 女子組だけ昼に集まって話していたらしいがそのときもこんな話をしていたのかもしれない。

 そう考えると杏花には申し訳ないな、なんたって俺から動いたことがないから教えられることが少ないわけだし。

 でも、色々自由にやっていてその全てをなにもかも吐かれても恥ずかしいだけだから救われた状態でもあるのかもしれない?


「笑っている場合じゃないからね、杏花だって色々言っていたよ?」

「それは……嘘じゃなさそうだな」

「うん、もう意味のない嘘はつかないって決めたからね。だから三上君も――あ、もう戻ってきちゃったね。さっきの話は杏花には内緒でお願いね?」


 頷いて俺達も二人に近づいた。


「光に入谷先輩を返すね」

「じゃ、いくか」

「うん。またね二人とも」

「おう」「またねー」


 直前に集まることはしても四人で過ごすことはないと教えられていたから違和感もないがそこまでして二人きりになりたいかと言いたくなる。

 俺らも佐竹達もいつも相手と一緒にいるのに佐竹ときたら、積極的なのはいいがなんか寂しいだろ。


「はあ~寒いね――あ、修也にはこれね」

「ありがとな。おお、あったけえ」

「もう少しあっちにいこっか、人は全然いないけど街灯があるから明るいからね」


 そういえばここはそうだな、全く人がいない。

 せめて十人ぐらいはいてほしいぐらいだが物凄く静かだった。


「さっき光となんの話をしていたの?」

「惚気話を聞かされただけだった、ただ俺と入谷先輩は任せきりで駄目駄目らしい」

「はは、光もはっきりと言う子だなあ」

「杏花と佐竹はよく似ているよ」

「私は……全く我慢できていないか、それどころかわがままを言って困らせることも多い……」


 ここまで出てきているのにテンションが下がって帰るとか言われても嫌だから止めておいた。

 そのはっきり言ってくれるところに助けられている身でもあるからそもそも続けさせたくないのが大きかった。


「なんか修也といられればいいんだからわざわざ外にいなくてもいいかなって」

「い、いや、もうすぐ変わるからそれまではいようぜ」


 出た、ここはなんとしても止めなければ。


「えー寒いのが苦手なのも考えて言っているのにー」

「ありがたいが、な? 頼むよ」

「外じゃないとできないことがあるの?」

「手を繋ぐとかそうじゃないか?」


 家の中でやっても相手を拘束しているだけになってしまうし……それだとアホらしく見られてしまうかもしれないからやるならいまだ。


「これぐらいの力加減でいいよな?」


 温かいな、冗談抜きでいまさっき渡してくれた飲み物よりも温かい。

 ただ、やっぱりこれは家の中でしていたら変だから外で留まっているときとか歩いているときしかできないことだとわかった。


「おお、こういうところはメリットかも。だけど屋内だとなんでできないの? 意識してしまうとか?」

「そりゃ意識はするだろ、そこに関しては外にいるいまだって変わらないよ」


 そもそも意識されていなかったら一応……俺のことを気にしているらしい彼女的に微妙だろう。


「え、あ、あれ……なんかこのまま進めると恥ずかしい時間になっちゃうような……」

「でも、ある程度は意識しないようにすることも大切なんだ、ごちゃごちゃ考えると駄目になるぞ」


 そうでなくても人がいないから静かなのに黙ってしまって新しい年を迎えるまで寂しい時間となった。

 それでも変わったらちゃんと動いてくれて挨拶ができたから今度こそ帰路につく、


「今日はもう駄目だね、朝まで寝られる自信がないよ。だからこういうときこそ修也のお家にいこう、珍しく朝までじっくりとグレンとアヤラを見られるんだからね」

「目がやばいがいくか」


 菓子なんかもあったからそれを食べさせておけば割とすぐに眠気がきてすぐに寝始めると思う。

 もしそうなったら客間に布団を敷いて俺こそグレン達と朝まで過ごせばいい。

 少し恥ずかしい話だがテンションが上がっていて寝られそうにないのは俺の方なんだ。


「あの短時間で色々と聞いてみたんだけど一切躱すことなく教えてくれたよ、なんかだいぶ光も乙女化しているみたい。光と言えばすぐに変な嘘をついてからかってくる女の子だったのになあ」

「大事な存在ができたってことだよな」


 杏花が俺に対して積極的になってくれたのはいまでも佐竹が影響していると思っているから俺としては感謝しかない。

 これが現実だから先輩がいないなんてこともありえないし佐竹がそのまま俺にアピールをしてくることもありえなかったからあれがなければ俺らはずっと一年生の春から関係が続いているだけの友達だ。

 まあ、友達でいられて十分であることには変わらないがこうして期待を持ってしまったいまとなってはなにもないまま終わるのは悲しいからな。


「くぅ、大事な一人娘が取られちゃった気分になってくるよ、光を悲しませたら許さないからな入谷先輩!」

「そうやって心配しているって本人に言っておいた方がいいな、そうすれれば佐竹も入谷先輩との時間を守りつつちゃんと杏花のところに来てくれるだろ」

「そうかなあ……いまとなっては私のことなんてどうでもいいんじゃ……?」

「それは杏花が積極的に入谷先輩を連れて離れるからだろ?」


 情報を聞き出したいとしてもあれでは露骨すぎて簡単になにがしたいのかバレてしまう。

 あと友達だからそう疑ったりはしないだろうが人の彼氏を連れていくのもあんまりイメージはよくないのかもしれない。

 勇気があるなら二人が揃っているときに質問して最初から最後まで惚気話を聞き続けるしかないな。


「はっ、別に奪いたいとかじゃなくても何回もそんなことを繰り返したことで敵視されていたらどうしようっ」

「しーもういい時間だから声量を下げてな」

「グレン~……」


 多分いま杏花がどんな状態なのかはわかっていないはず、それでもいつものそれでただそこにいるだけでグレンは役立っている。

 アヤラの方はそんな彼女には意識を向けずに俺の足の上で休んでいるからなんかお嬢様感がすごかった。


「ずっと変わらないままでいてくれるのはグレンだけだよ」


 グレンとアヤラには長生きしてもらいたい、せめてあと十年は絶対にいてほしい。


「あれ、グレンいっちゃうの?」

「杏花がいるのにどこかにいくなんて珍しいな――と思ったらなんか横に座ったな」

「はは、やっぱり修也の方が好きだよね――あれ? なんか凄く期待したような目で見ていない?」


 夜行性だからいつもこの時間にご飯をくれる人間が起きていて期待しているんだろうか。

 でも、なんでもかんでもやればいいわけではないからご飯は朝まで我慢をしてほしい。

 俺達が中途半端な時間で寝てしまって朝早くに起きられなくても両親がいるからそのどちらかは必ず気づいてくれるからだ。


「また私のところに来た、かと思えば少し離れて私のことを見てくる……な、なにを求めているんだろう?」

「杏花に付いてきてほしいんじゃないか?」

「お、それなら付いていっちゃうよ?」


 じゃあ彼女達が冒険している間はここでゆっくりと、はできないみたいだった。

 結局グレンは俺の横に再度座って見てきただけだ。


「ああ、私わかっちゃったよ、自分によりも修也に意識を向けろって言いたいんだね?」

「にゃ~」

「おおっ、修也正解みたいっ」

「はは、本当にすごいなグレンは」


 あと可愛すぎる、アヤラももう少しはこの可愛くて格好いい相棒に意識を向けてやってほしい。

 あ、でも、俺らが知らないだけで佐竹と先輩みたいになっている可能性もあるのか。


「んーでもさ? 意識しようとしてすると真夜中なのもあってなんかへ、変な雰囲気になっちゃいそうだよね」

「さて、そろそろ俺も勇気を出すか」


 可愛いのは事実でもいまはそこではないよな。

 猫にすら心配されるような進行度でこのまま終わらせるわけにはいかない、せっかく家に来てくれているんだからその時間を上手く使わなければならない。


「え゛っ、な、なにをするつもり!?」

「抱きしめてもいいか?」

「ぐぼぇ」

「え、おい、どこから声が出ているんだ?」


 ……これは調子に乗りすぎたか? 相手が怯えてしまったりしたらそれは失敗だ。

 今日はエアコンが点いているにもかかわらず寒くなってきた。

 ただ、彼女が帰りたがっても最後までちゃんと付き合わなければならない。


「ごほっ……ご、ごめん、なんか抱きしめられると思ったら変な声が出ちゃってね……」

「そ、そこまでなのか」

「ふぅ、嫌だからじゃないんだよ。だけど修也からやってもらうと爆発するから私から抱きしめるね」


 いやおい……これだと結局勇気を出せたとは言えないうえに彼女からやられて固まってしまうんだが……。


「おお、こんな感じか~」

「よ、余裕そうだな」

「うん、自分からしてみたらなんてことはないね、それどころかくっつけて落ち着けちゃっているぐらい。光が言っていたのはこういうことだったんだ」

「あれ、佐竹はもうそんなに進んでいるのか?」


 流石にそこらへんまでは俺に教えたりしないか。

 クリスマスからそう時間も経過していないからもうあの時点で――あ、だから先輩はあのとき落ち着けなかったとか……?

 抱きしめられた後も他の人はいなくて二人きりだったんなら色々と我慢をするためにもあれはやっぱり必要なことだったんだ。

 

「うん、実はあともう少しでちゅーするところまでいったらしいよ?」

「マジか、すげえな」

「だよねっ」


 よし、ここらへんで終わりでいいか。

 あとは健全なタイム、といきたいところだがだいぶ眠たくなってきて駄目だった。


「寝るか」

「え、もう眠たいの? 私はやっぱり駄目なんだけど」

「それなら客間に布団を敷いておくから眠たくなったらそこで寝ればいい、おやすみ――い、痛いぞ?」

「ほら、アヤラだって一回どいてから戻ってきてくれたんだからさ、そこは家族としてもっと一緒にいてあげないと駄目でしょ?」


 と言われてもなあ。

 エアコンが点いていてもこんなところで寝落ちなんかしたら風邪を引いてしまう。

 流石に新年早々風邪なんか引きたくはないから我慢をしてもらうしかないんだが……先程のグレンの真似をしてか滅茶苦茶期待をした顔で見てきている彼女がいて……。


「じゃあ布団を持ってきてもいいか?」

「お、それならいいね」

「おう、じゃあ持ってくるわ」


 床でもなんでもいい、寝転ぶことができればそれで満足だ。

 客間に移動したせいで誘惑に負けそうになったが杏花に怒られたくはないから布団だけ持ってリビングに戻る。


「眠たくはないけど電気はオレンジ色にしておこうね」

「おう、って、そんなことをしたら俺はあっという間だぞ」

「いいよ、グレンとアヤラが寝ている修也になにをするのか気になるからね」


 いやそのグレンとアヤラはよく俺の布団の上で一緒に寝ているから見られるのは同じようにすやすやする二匹だけだ。

 で、結局俺はすぐに負けて次に目を開けたときには朝だった。


「うん、あ、そうなんだ?」


 声が聞こえてきて体を起こしてみても彼女しかいないのに、スマホを弄っているわけでもないのに誰と会話をしているのか。


「お、おい?」

「ああ、いまグレンとお喋りをしていたの」

「もう寝た方がいいぞ……」


 ハイになりすぎた結果彼女がやばい領域に入ってしまったから寝かせることにした。

 意外と言うことを聞いてくれて新年早々言い争いになることはなかった。




「これと……あ、これももういいかな」

「もったいなくないか? 押し入れとかにしまっておけばさ」


 いまになって大片付けがしたいとか言ってきて捨てようとしている彼女がいた。

 どう見ても余裕があるうえにしまえる場所もいっぱいあるからなにも捨てる必要はないと思う、滅茶苦茶奇麗な状態なのも余計なお世話でしかないが待ったをかけたくなるんだ。


「ううん、あ、それとも修也が貰ってくれる?」

「いや……女子の服を貰ってもどうしようもないだろ……」


 佐竹にやる……のはやりづらいか。

 親戚に小さい同性の子どもとかがいてくれれば有効的に使えそうだが。


「んーならチョキチョキ切ってグレンとアヤラの服を作っちゃおうかな」

「そんな器用なことができるのか?」

「た、多分?」


 ああ、いい加減に切られて結果的に着られなくなる服達が容易に想像できてしまう。

 ただここで必死になりすぎると異性の服に対して真剣になっているように見えるから不味い。

 だから結局俺は見ておくことしかできない、服達よすまない……。


「おいおい」

「でも、ただで捨てるのは修也が言うようにもったいない感じがするからどうせなら有効活用できた方がいいなあって思ってね。いまならスマホで調べれば親切な人が情報をあげてくれているだろうからさ」

「時間がかかるかもしれないけど待っていてよ」

「おう」


 それなら俺は待つだけだな。


「よし、服はこれぐらいでいいかな。あとは……紙類か、こういうのって気が付いたらいっぱいになっているよねえ」

「紙紐はどこにある? 俺も手伝うよ」

「それなら一階のあそこかな、ちょっといってくるね」


 なるべくじろじろ見ないようにしながら待っていると「きゃあ!?」と悲鳴が聞こえてきて流石にじっとはしていられなかった。

 慌てて下りていくとそこには固まっている杏花が、ただこちらからすれば杏花以外の腕も見えていて軽くホラーだ。


「来ていたのか」


 冬はそうでなくても心臓に負担がかかっていそうだからそういうことをやるのはやめてやってほしい。

 自分の家なのに警戒をして歩かなければならないようになったら可哀想だ。


「はは、いま来たんだよーそれで杏花さんが油断した様子で近づいてきたからがばっと抱きしめたの」

「気絶……していないか?」

「んー……これはやっちゃたかもしれない、お部屋まで運んであげて」

「おう」


 部屋まで運んで五分ぐらいが経過したところで「はっ!?」と杏花は戻ってきた。


「もう馬鹿光っ、心臓が止まるかと思ったよ!」

「はは、ごめんね?」

「もう……入谷先輩は光を放置してなにをしているの」


 先輩といられないときはこういうことが多いな、今日は杏花が先輩を連れていったとかでもない。


「久喜先輩なら今日は用事があるから無理みたいで一人だったんだよ」

「まあ……それなら仕方がないか、私だって光といたいから多少遊ばれても我慢するしかないよね」

「あー三上君、これいいのかどうかわからないよ」

「少なくともどっち方向にも素直ではあるな」


 だから前にも言ったように素直に吐かれたときのダメージさえなんとかできれば友達でいられる時間を増やしていくのは全く難しいことではない。

 

「怖いから三上君を盾に――ちょ、痛いよ杏花、さっきのはごめんってば」

「ちがっ、なんか体が勝手に……」

「三上君に触れてほしくなかったから? というか、二人の関係っていまどうなっているの?」

「俺達はまだ友達――」


 だよと全部言い終える前に「修也のことが好きだから!」となにか変なことを言い始めた。

 あとやっぱり佐竹が理由で色々変わったんだとわかった、もう付き合っていて警戒をしても意味がないのにな。


「「杏花……?」」

「しゅ、修也も本当のことを言っているんだからそんな反応はやめてよ!」

「あー」


 抱きしめるとかの前に俺から告白をしておくべきだったかもしれない。

 しかもまだ自分ができていたならよかったがそうではないから結局杏花にばかり頑張らせてしまったことになる。

 これがそこから爆発した結果なら……申し訳ないな。


「三上君の反応を見るに三上君的には自分から告白をしたかった、そうだよね?」

「あんまりズバズバ当てないでくれ」

「はははっ、正解みたいだね」


 だからといって佐竹がいるここでやるのは違うから帰ってからか。

 追い出したくもないしそもそもここは杏花の家だからこのまま平和にやれるといいな。


「それで……どうなの?」

「え、佐竹これって答えるべきなのか?」

「うん――あっ、私は出るから安心して!」


 はええな、そこらの選手よりも一瞬の速度が速かった。


「えっと……俺も好きだぞ」

「うん」


 これも同じように勢いを利用して好きだと言っているにもかかわらず心臓がやばかった。

 できるわけがないが杏花の鼓動の速さを確かめてみたらいまの俺と同じような感じだったかもしれない。


「だから付き合ってほしい」

「それはこっちが言わなければならないことだったね」

「待て、ここで冷静になるのはなしな」

「でも、冷静にならないと前に進めないからね」


 もうこうなったら佐竹を呼ぶしかないな。


「はぁ、という感じだ、佐竹的にどうだ?」


 軽く流れを説明をすると「んー私が邪魔をしちゃったからちょっとあれかも」と気にしているみたいだったから気にしなくていいと言っておいた。

 佐竹どうこうではない、杏花がこういうタイプの時点でこうなることは確定していた。


「気にしないで、それより光のおかげで言い出せたから感謝しかないよ。ありがとう!」

「う、うん――あれ、久喜先輩からメッセージがきた、いまどこにいるのかだって」

「光が二人きりがいいならもう帰った方がいいし私達がいても問題ないならここに呼んでもいいよ」

「それなら集まろう、お菓子とかも食べちゃおう」

「あーお菓子を狙うなんて光は悪い子だねえ? でも、来てくれるなら色々と出しちゃうよ!」


 家にいって食べられずに残っている菓子を持ってきた、そのときには先輩はもういたから挨拶をしておいた。


「って、いちいち取りにいかなくてもすげえあるな」

「でしょ? お菓子を食べないなんて日はないからね」

「それで細いなんてすごいな」


 一緒にいないときなんかには努力しているんだろうな。

 あ、だが菓子を食べているからなどと言っておかずの量なんかを極端に減らしていそうで怖かった。

 それでじっと見つめていたら「え、えーそんなに真剣な顔で言われたら照れちゃうよ~」と勘違い……とまではいかなくても違う見方をされて少し固まる。


「わかりやすく嬉しそうだな、やっぱり三上に言われたからか?」

「別にそういうわけじゃないですけどね」

「おいおい……もう少しぐらい俺にも優しくしてくれよ、一気にすんとなりすぎだろ」

「ははは、入谷先輩は光から優しくしてもらえばいいんですよ」

「目が笑ってないぞ……光、友達になにか言ってやってくれ」


 流石に彼女の佐竹は優しくしてやるかと思えば、


「杏花にも気に入ってもらおうとするところが気に入らない」

「「あ、あれ」」


 これで駄目だった。

 俺らがいるからなのか、完全に嫉妬をしていて冷たいだけなのか。

 二人きりになった途端に甘えまくるとかそういう展開になることを願っておこう。

 あとこのままだと二人まとめて「やっぱり駄目駄目だね」とか言いかねないから終わらせたいと思う。


「ん? なんで三上君までそんな反応をするの?」

「な、なんでもない。……入谷先輩頑張ってください」

「お、おう」


 それこそすんとなって目から光がなくなっているぐらいだから怖かった。

 杏花もそうだからやっぱりこの二人はよく似ている。


「あ、これ美味しいっ」

「でしょ? 一番のお気に入りのお菓子なんだ」

「だけどスーパーで見たことないかも、どこで買ったの?」

「それはね~って、普通にスーパーで売っているよ?」


 こちらを冷たい状態にしておきながらお菓子のことで楽しそうでいいね……。

 まあ、冗談はともかくとしてもこの二人がまだまだいい状態でいてくれるのはいいことだ。

 どちらかになにかがあったときに動くことすらできなくなってしまうから継続してほしい。


「え、あー……そういうことか、つまり杏花さん達は少しお高いスーパーにいっているんだね?」

「え、近所にあるあのスーパーだよ」

「あれえ……? 三上君と久喜先輩は知っていたりする?」

「知っているぞ、菓子とは別のコーナーにあるんだ」

「そもそも母さんがいくから俺は見たことがないな」


 というか、それが好きだと知っているから向こうにあった同じ物を持ってきたわけだしな。

 何回も遊びに来るからまたこれをストックしておく必要がある。


「ちゃんとお手伝いをして」

「はい……」


 先輩……それでいいのか、俺もこれでいいのか……。


「なんか光はお姉ちゃんって感じがする」

「えー一応彼女だけどな」

「お、惚気たいならどうぞ」

「そ、それは恥ずかしいからやめておくよ」

「なんでだよー隠すようなことじゃないだろー」


 このまま対象が杏花に変わっても俺が残念すぎるせいで教えられることがほとんどないのはあれから変わっていない。

 告白の件だって佐竹の前でやったから言えるのは……抱きしめたことぐらいか。


「それなら杏花はどうなの!?」


 で、そういうことを考えるときてしまうんだ。


「私は……まあ、できる範囲で修也と仲を深めているだけだから」

「な、なんか言い方が……」

「違うからね! 変なことはしていないからね!」

「「余計に怪しいよ……」」

「違うから!」


 仕方がないから違う話題にしておいた。

 また食べ物の話にしたが色々と根掘り葉掘り聞かれるよりは楽しい時間となったのだった。

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183 Nora_ @rianora_

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