使えない魔法使い
使えない魔法使い その1
「左行ったよ!!」
「おっけい任せて!」
縦横無尽に動き回る私のパーティメンバー。
目の前には今日の晩御飯になる予定の獣が居て。
皆必死に戦っているが、私のしていることといえば…。
「ルニア、お願い〜」
「はいはい」
エルピーダと共に近くの仮拠点に残り、
水を出す魔法で水を生成し、
その水を水を温める魔法で温め、晩御飯の支度をすること。だけ。
え、正直これなんか意味ある?
「魔法使いってこれでいいのかな…」
魔法の原点に帰ったみたいで楽しいけどさ。
勇者パーティの魔法使いこれでいいんですか?
『ルニアルニア!今日の夜魔法の練習しよ!』
『分かった分かった。すごく楽しみなのね』
やっぱり精霊たち的には凄くありらしいけどね。
もうちょい活躍できる予定だったんだけどなぁ。
「二人とも支度ありがとう。ちゃちゃっと残りの用意も終わらせちゃおっか」
「はーい」
イロアスの声に二人で返事をして、今日集めた食材達を全部持ちだした。
食材の八割はメラキとイロアスが取ってきたものだ。
私達も山菜とか集めて二割くらいはね、貢献してるけど。
やっぱもうちょい活躍したいよねぇ。
「ねえイロアス。明日の狩り担当は私にやらせてほしいんだけど」
「ん、いいよー!でもなんかあったら呼んでね?」
「うん、大丈夫。ありがとう」
今日の夜、精霊たちが特訓したいって言ってたし。
私は私で活躍できる場を作りたいんだし。
使い所のない魔法だからって悲観する必要はない。
『ルニアやる気だね〜』
「まあね」
この日常魔法達、極めて戦闘魔法にしてやる。
だって元を辿れば全部、
私の魔法なんだから。
◇◇◇
月が天頂に昇り、森が活動し始める夜。
「それじゃ、私は魔法の練習しにいってくるから」
「分かった。おやすみ、ハルモニア」
早くねなよ〜と言うメラキに頷いて、私は一人拠点を離れた。
正確には精霊たちが沢山いるから、一人ではないんだけど。
そんなことはどうでもいい。
私は今、猛烈に魔法の練習がしたいからね!!!
『ルニア。どの魔法から始める?』
「とりあえず、紙飛行機系は長いから後でにしよう。今は――うん」
パラパラと薄い魔導書をめくる。
あの時みたいな高揚感が、私の中を巡っていた。
魔法の練習ができるとか久しぶりすぎてわくわくする。
「この魔法にしよう」
特に、こういう民間魔法になると――極めようと思ったことがないし、極めている人を見たこともないから
極めた結果どこまでいけるのか楽しみすぎる。
食器を一瞬で洗う魔法を指差しながら、私はそんなことを考えていた。
終末世界のハルモニア 猫墨海月 @nekosumi
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