鉄道模型が趣味の高校生・松島真一は、秋葉原の模型ショップで、クラスメイトの美少女・蔵王ひかりと遭遇する。亡き祖父が遺した鉄道模型を修理してほしいと依頼されたことをきっかけに、二人は模型を通じて少しずつ距離を縮めていく。
物静かで陰キャな真一と、明るい陽キャなひかり。正反対の二人が、趣味を通じて心を通わせていくところが素朴でいいんですよ。
作中で描かれる鉄道模型Nゲージの世界も魅力的です。真一やひかりたち、高校生には決して安くない模型ですが、中古ショップを巡り、部品を集め、壊れた車両を直し、塗装を重ねていく。その地道な積み重ねの先に、世界でひとつの自分だけの一両が完成する喜びがある。
出来上がった車両をレールに走らせると、かすかな音と振動が部屋を満たし、時間が静かに流れていく。そんな穏やかなひとときが癒やされるんです。
最初は打算で近づいたひかりも、真一の不器用な優しさに次第に惹かれていき、真一もまた、可愛い趣味仲間との時間に胸を弾ませる。コレクターや、もの作りが趣味という人ならば思わず共感してしまうに違いない。鉄道模型が結ぶ、温かくて優しい青春物語です。
(「レールの上の私たち」4選/文=愛咲優詩)