第38話 感動の再会?


 そんなこんなで女神様に懐かしの異世界へ召喚された僕だったが、顔を上げるとすぐ目の前に魔物になりかけてるエインが居た。


 罪人みたいな感じで鎖に繋がれてるし、左半身は肉塊みたいなのに覆われていてそれはもう凄いことになっている。


 思ったよりまずそうだ。女神様も、もうちょっと早く僕のことを呼んでくれたら良かったのに。


 ……というか、天界の記憶も普通に残ってるな。


 夢なんかと同じで、強い意志や感触があれば覚えておくことも可能ということか。


 何がとは言わないがすごく嬉しい。今の僕は最高に冴えている。大人の階段を上ってしまったかもしれないな。


 壁の向こう側にはメフィアが居るらしく、何やら二人で話している声が聞こえる。

 

 こちらへ召喚されてから実体化するまでに時間がかかるらしく、僕の姿はまだ見えていない。


「こんな世界……ぜんぶ壊しちゃいましょうよ……二人で、一緒に」


 すごい会話が聞こえてきているので、早く止めないとまずそうだ。こんなに典型的な闇堕ちの台詞を聞くことになるとは思わなかったよ。


「ごめんなさい……ハルトさま……」


 僕は虚ろな目で僕じゃない何かを見て謝っているエインに対し、こう言った。


「……そんなことしちゃダメだよ。せっかく三人で救ったんだから」


 その瞬間、エインの目がはっきりと僕のことを捉える。


 どうやら、ちょうど良いタイミングで実体化できたらしい。


「ぅ、あ…………あぁっ!」


 口をぱくぱくさせながら、じっと僕のことを見つめてくるエイン。


「嘘……でしょ……? ハルト……なの……?」


 壁越しに驚いているメフィアの声も聞こえてくる。


「えーっと、その……こっちの世界では確かに死んじゃったんだけど、あの後無事に元の世界に帰れたんだよ。……だから、二人ともそんなに深刻にならないで」


 ひとまず事態の収拾を図るため、僕はなるべく落ち着いた口調で二人に語りかける。


 魔物化が思ったよりも進行しているため、対面した瞬間にクラウ・ソラスまで出現しちゃったけど……上手いことやれば二人から魔物化した部分だけを切り離すことも可能なはずだ。


「ハルト……さま……! ハルトさま、ハルトさまハルトさまハルトさまっ!」


 僕が頭の中で作戦を練っていると、エインが目から大粒の涙を流しながら何度も僕の名前を呼びかけてきた。


「うぅっ、あっ、うああああああっ!」

「落ち着いてエイン。ひとまず、この状況は僕が何とかするから」


 正直、ここまで追い詰められたエインを見るのは初めてだ。一緒に冒険してた時は強い信念を持った気丈で可憐な聖女といった感じだったのに、どうしてこんなことに……?


「本当に……ハルトなの? そこに居るのっ?!」

「エインと一緒にメフィアの浄化もしちゃうから、じっとしててね」

「ハルトぉっ!」


 返事の代わりに僕の名前を呼ばないで欲しいな。会話になってないよメフィア……。


「……じゃあ、始めるよ」


 僕はそう言ってクラウ・ソラスを構え、二人の体にまとわりついた瘴気の塊を一刀両断するのだった。


 すると、瘴気を吸い込んでいた壁ごと真っ二つになり、二つの牢屋が繋がる。


 こうしてエインとメフィアも無事に解放され、人の姿で地面に倒れ伏したのだった。


 ……とりあえず気絶した二人を横一列に並べ、特に異常がないことを確認してから、近くで目覚めるのを待つ。


「う……ん……?」


 最初に目覚めたのは、メフィアの方だった。魔術師は瘴気にある程度の耐性があるから、こういう時にタフだね。


「おはよう、メフィア。調子はどう?」

「…………」


 メフィアは返事をすることなく僕の顔をじっと見つめた後、無言で立ち上がって目の前まで歩み寄ってくる。


「あの、だいじょうぶ――」


 そして何も言わないまま、いきなり僕に抱きついてきた。


「ハルト……ハルトだぁ……っ!」


 喜んでいるのか泣いているのか分からないような震え声でそう呟きながら、何度も何度も僕の存在を確認してくるメフィア。


「はるとっ、ハルトハルトハルトハルトハルトハルトハルトハルトハルトっ!」


 正直ちょっと怖いです。


「心配しなくても、僕はちゃんとここに居るよ。幽霊とかじゃないから安心して」

「ハルト……ごめんね……、あの時っ、助けてあげられなくて……ごめんねぇっ、ひっぐっ、うぅうっ、うううううううっ!」


 僕に縋りついて泣きじゃくるメフィア。よっぽど追い込まれていたのか、前よりもかなり軽くなっている気がする。


「……メフィアは何も悪くないよ。あれは僕の判断ミスだから。――こうして生きてるだけで万々歳って感じかな」


 僕はそう言って、このままだと死んでしまいそうなくらい弱りきっているメフィアの頭をなでた。


「ハルトさま……」


 すると、今度はエインが目を覚ます。


「おはよう、エイン――」

「ハルトさまぁっ!」


 次の瞬間、僕は飛びかかってきたエインによってメフィアごと床へ押し倒されるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る