第34話

「小林悠斗……一花はどこだよ」


「さぁ?出してほしい?まぁお前がきちんと俺に謝ってくれたら、教えてあげてもいいよ?」


呼び出された誠は、視線だけ周りに動かす。

大きな倉庫に自分とこいつだけ……。

ここには多分……一花はいない。

気配も匂いもない。匂いを辿ればたどり着ける。


「飼い犬を舐めんなよ」


「あ?ははっ、飼い犬だぁ?やっぱりお前、一花のペットくん?てことはあれかなぁ?アイツってば俺の性癖に触発されて、今はお前が可愛がられてる側?」


「ゴチャゴチャわけわかんねぇこと喋んなうるせえ、黙れ。」


鋭く冷ややかな眼光に、悠斗は眉を寄せる。


「どうしてそんなに態度大きくしていられるんだよ、黒井誠くん?」


ピクリと眉が上がった誠にほくそ笑んだ。


「そもそもなんで知ってんだって顔だね?バレバレなんだよ。俺さ、黒井誠のファンなんだよね。男女問わず、綺麗な顔した奴が大好きなんだ。こと細かく研究してる相手を間違うことはないよ」


ニヤニヤと目を細め、舌なめずりをしている悠斗に、誠は一瞬すら目を逸らさずに今すぐ殺したい感情を押し殺した。


「そおそお、そういう顔……苦しみや絶望に歪んだ顔を見るのがさ……何よりの快感で……。それがなくちゃ生きていけないんだよね、俺は。」


「……死んだ方がいいな、てめぇ……」


「いいねいいね、そういう表情大好物だよ。あ、そうそう、ねえ、コレ見て?」


ポイッと投げ渡されたスマホをキャッチする。


「これ一花のスマホじゃっ……っは!」


画面を見て目を見開き身を震わせる誠に、悠斗はますます興奮する。


「うっわぁ〜……やっぱ生の黒井誠はいいなぁ〜!もっと見たいなその顔!」


「い、ちか……」


スマホを持つ手が激しい憎悪に震える。

強く握りすぎて、スマホにピキっとヒビが入った。


「殺してやる……」


誠の恐ろしい眼光がスマホから目の前の男に移る。

しかし目の前の男は満更でも無い様子でむしろ興奮している。


「んー、できるかなぁ?確かに俺はそんなに強くないけどね、でもねー、そこそこの奴が何人も揃ったらどうだろうか?」


「あ?」


早く一花を助けに行きたい!

くそ……こいつをもっと早く見つけ出して殺せていればこんなことには……


だが予想外にも、小林悠斗はなかなか見つからなかった。

直希も苦戦していたわけだ。なぜなら……


「………!」


十数人の強面な大人たちが自分を取り囲み出す。

誠は視線だけ動かして軽く息を吐いた。


ここに来た時からずっと気配を感じていたから大して驚きはしない。

こいつらはカタギじゃない。そして……小林悠斗もそうだ。

だから見つけられなかったんだ……!


「来いよ……全員ぶちのめしてやる。」


黒い声色で言い放った誠から、突然ぶわっと憎悪の炎が滾り出したように見えた。

周囲の男たちが一瞬たじろぐほどに、それは凄まじいオーラだった。

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