第33話 敵なし

「やあっ!!!!」


 がつんっと大きな音を立ててハンマー同士がぶつかり合った。メロネとCクラスの生徒が戦っているようだ。ハンマー武器はメロネの持っているものの方が大きく、威力も高い。今は心配の必要はなさそうだ。


「ふっ。そんな重いのずっーと振り回してちゃ疲れちゃうでしょ? もう限界なんじゃない?」


 Cクラスの生徒が嘲笑うようにメロネに行った。メロネは大きく振りかぶってもう一度ハンマーをぶつける。


「問題ありませんっ。勝つまで振れますから!」

「っ!?」


 今の一撃が聞いたのだろうか。相手のハンマーにヒビが入る。そして次の瞬間には折れてしまった頭の部分が床に転がっていた。


「くそ、馬鹿力が……!」

 相手はへたりこんでいる。そしてその鼻先ですっと止められるメロネの巨大なハンマー。Cクラス同士の勝敗はついたようだ。僕は次にアウィーロを見る。彼は向こうのAクラスの生徒から逃げつつ攻撃を放っている。どうやらAクラスとBクラスの組み合わせで戦っているらしい。


「はっ……はあ……っ!」

「魔力切れ……か?」


 僕の目の前から放たれる風の魔法が止み、Dクラスの女子生徒は息を切らして座り込んでしまった。僕が相手の様子を伺おうとすると、そこに魔道具が放り込まれる。油断してしまったことを僕は一拍遅く後悔した。


「しまっーー」


「えいっ!!」

 爆発に巻き込まれると思ったが、メロネのハンマーが伸びてきて魔道具ごと打ち飛ばした。会場の上空でそれは爆発して消滅する。


「ふふっ。今ので最後だったみたいだねぇ? 残念でした♪」

 すかさずポリトナが相手を拘束する魔道具で動きを封じた。相手に当てると球型からロープのような形状に変形し、即座に体を縛る優れものだ。これで残る相手はAクラスとBクラスの生徒の二人となる。


 ポリトナが会場を駆け回ってBクラスの攻撃を引きつけている。その隙にAクラスの生徒を僕らで封じればほぼ勝ちだ。ポリトナは器用に攻撃を避けていく。弓が全く当たらないので相手もストレスが表情に現れていた。


「あっ!」


 さらに、Bクラスの彼の相手はポリトナだけではない。もともと彼はユグナと戦っていたのだ。彼の進路に大剣が差し込まれる。大剣から炎の渦が巻き起こり、相手にダメージを与えた。ユグナが魔法を剣に乗せて戦えることで、相手がどんなに探索をして強い武器を手に入れても、その攻撃力を超えられない。


「よそ見をするからだ」

 そのまま大剣の攻撃で相手はダウンした。そしてそれと同時にーー。


「うぐっ!!」


 加勢をしようとこちらから目を離したAクラスの生徒はアウィーロの正確な攻撃に射抜かれていた。彼は満足そうに鼻を鳴らしている。アウィーロは姿勢が崩れても絶対に攻撃を外さない。入学する前から、弓だけを特訓でもしていたのだろうかと思うほどだ。

 全員がダウンして、僕らの勝利を告げるコールが会場に響く。それを聞いてやっと僕は肩の力を抜くことができた。



 準決勝は無事に勝利。次はいよいよ決勝戦になる。僕らは誰が対戦相手かを確認するためにトーナメント表を見に行った。


「ユグナ。やはりお前がきたか」

「ギルン……」


 トーナメント表の前で僕らの前に立ちはだかったのは、大柄で目つきの悪い男子生徒だった。ギロリと睨まれて僕は半歩下がってしまう。こ、怖い……。まだ何もしていないのにこちらに敵意むき出しだ。

 ユグナ曰く、Aクラスの中でもかなり腕の立つ生徒らしい。本当に僕らと一緒に入学したのかと思うほど異次元に感じられた。


「精々楽しませてくれよ。箱入りおぼっちゃま」


 バカにするように笑いながら彼はいなくなってしまった。目つきが悪いだけでなく、性格もそんなに良くないらしい。僕は振り返りもしない相手の背中を睨みつける。ユグナに「やめろ」とだけ言われて、僕は大人しくギルンに背中を向けた。


 友人を悪く言われるのは嫌だった。その気持ちはユグナに十分伝わっているようだったので、明日相手をボコボコに倒すことだけ考えることにする。

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