幕間17

半分くらいは猫語りだった。


猫が可愛いというのは同意するが、言葉の通じない生き物がどうにも苦手で、遠巻きに見るくらいが丁度いいと私は思っている。


昔にテレビで見た、様々な種類の動物を有名な幽霊屋敷に入れてみて、どのような反応をするかという企画を思い出す。確か、猫と蛇だけが反応したそうで、それだけ猫が心霊に敏感なのだろう。私は幽霊がヒトの死後の姿であるという意見には懐疑的だが、未知の物質や生物が居てもおかしくはないし、それらを幽霊と呼んでいるのかもしれない。それらを感知するのに才能が必要で、猫はその才を持ちやすいと、そういうことなのだと思っている。


専門外であるため、単なるイメージだが。


事故物件のサイトはたまに見るが、昔、実家のすぐ近くに事故物件が3つくらいあったのを発見したことがある。それ以来、自宅の周辺など、自分に関わりのある場所を見るのは止めている。事故物件だと判明したところで、引っ越すわけにもいかないし。


大げさに言えば、世の中には知らない方が幸せなこともあるのだ。住んでる家が事故物件だったら嫌だし。


そういえば、最近は物件もののホラーをよく見る気がする。土地の歴史を探ったらとんでもない忌み地でした、とか。




それから数日後、買い物に出かけたら、たまたま大学時代の知り合いに遭遇した。幽霊同好会という、存在も部員もほぼ幽霊のサークルの先輩で、彼も幽霊であった。サークルに入っているというアピールだけしたかったとか。


かくいう私も、ほぼ活動していない先輩にサークルの後輩という立場を振りかざし、強制的に奢らせていたが。


美味しくて安い蕎麦屋さんを知っていた人という以上の認識はないが、知り合いであることに間違いはない。というわけで、例の質問をぶつけた。


「なんか怖い体験とかあります? 人に聞いた話でもいいんですけど」

「なんて?」


元幽霊同好会会員とは思えない反応の悪さだった。


「実はかくかくしかじかで、怪談集めてるんですよ」

「あ、そういう。それで言うと、怖い話じゃねぇけど、変だなって思ったことならあるよ」


先輩はドラマかアニメの探偵のように、顎に手を当てて言った。全く似合っていないが。


「俺今妻居るんだけど」

「は? 爆散しろ。奥さんが可哀想だ」

「はじめましての時に『可愛い後輩なんで奢ってください』って言ってきたお前よりはマシだろ」


————————

好きな物件ものホラーは「たてもの怪談」と「入居者全滅事故物件」です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る