第10話 痛い

私が小学校低学年くらいの時の話なんだけど。


まあ、とはいっても、この話の主体は私じゃなく、私のいとこにある。私より3歳年下のいとこがいて、その子と親と、日帰りの旅行に行くときの話。


私と、いとこ……とりあえずAとするけど……その子と、その子のお父さんと私のお母さんの、4人で出かけたの。父と叔母さんは仕事の都合が合わなくて、行けなかったのよね、確か。


それで、片道……3時間くらい? そんなに無いかな。まあそれくらいの道のりを行くわけだ。途中でいとこは一旦寝ちゃったんだよね。私は寝るの我慢してた。もうちっちゃくないよって、意地でも張ってたんじゃないかな。


それで、出発してから1時間くらい経ったときだった。車は高速道路を走ってて。


いとこが急に起きて、「腕とか足が痛い」って言いだすの。旅先で病気になったかと大人はぎょっとしてたし、私は何をしたらいいかわからなかったから、車内はちょっとしたパニックになってた。


ちょうどサービスエリアがあったし、そこに寄ることにした。


でも、いとこはずっと「痛い、痛い」って言ってるし、良くなる感じはなかった。その時確か、「痛い」以外にも、「ここは痛い」とか「千切れてる」って言ってたのよ。


何が駄目なんだか全然わからないけど、高速を降りて、近くの病院に行くことにしたんだけどね。


車を走らせてから、数分も経ってなかったと思う。また急にけろっとしてね。全然痛いとか言わないの。お母さんが「まだ痛い?」って聞いたら、「何が?」って言うのよ。


そのあと一応、病院には行ってみたんだけど、なんともなかったらしくて。そのまま帰ったんだけどね。


あとで叔父さんが調べた話らしいんだけど、いとこが「痛い」って言いだした場所、古戦場跡だったらしくて。たくさんの人が死んだり、腕や足を失ったりしたそうなの。


その後、いとこに何かあったということも無いけどね。

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