幕間2

「なかなかの経験をお持ちじゃないです? あなたのご友人は」

「そうですね。結構ぞっとしました」


またいつものファミレスで、編集者と言葉を交わす。


「結局のところ、その輪っかとやらはなんだったんですかね」

「さあ、わかりませんけど……。でも、一つ思いついたことがあるんですよね」

「というと?」


面白いように食いつく編集者をみて、優位に立った気分を味わいながら、私は説明を重ねる。


「小さいほうの輪っかのことです。なぜ、そんなものが必要だったのでしょう」

「ただの装飾じゃあないんですか?」

「じゃないと、私は思ってます」


焦らすように、私は一度言葉を切る。


「例えばですけど、犬とかの首輪に輪になっているパーツがあれば、普通、なんだと思います?」

「何ってそりゃ、リードを付ける……って、まさかそういうことですか?」

「さあ。私は本当のところは知りませんから」


あくまで想像に過ぎない。私自身が、怪談が好きだからこその妄想とも言う。こうだったら、ホラーとして面白いな、と思った、ただそれだけだ。


ただそれだけ、だけど。


「なんにせよ、なんでそんなものが捨てられてたのかわかりませんねぇ」

「まあ、夢なんてそんなものですから」


私はばっさりと今までの話を捨てた。なんとなくおかしいと思ったり——今回の場合は、こんなものが捨てられているという違和感だ——、そういうことが悪夢に繋がるのだ。怪談に於いて、夢というのは当てにならないというのが私の持論だ。


「夢、といえば、先生はよく奇妙な夢を見てらっしゃるとか」

「ええ、まあ。……でも、ホラーとは全く関係がありませんよ」

「そうなんですか」


私のことをなんだと思っているのだろうか、こいつは。


しかし、面白い夢を見たと自分でも思っているので、誰かに話すのもやぶさかでない。


「ちょっと前に見た夢ですけど」

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