幕間2
「なかなかの経験をお持ちじゃないです? あなたのご友人は」
「そうですね。結構ぞっとしました」
またいつものファミレスで、編集者と言葉を交わす。
「結局のところ、その輪っかとやらはなんだったんですかね」
「さあ、わかりませんけど……。でも、一つ思いついたことがあるんですよね」
「というと?」
面白いように食いつく編集者をみて、優位に立った気分を味わいながら、私は説明を重ねる。
「小さいほうの輪っかのことです。なぜ、そんなものが必要だったのでしょう」
「ただの装飾じゃあないんですか?」
「じゃないと、私は思ってます」
焦らすように、私は一度言葉を切る。
「例えばですけど、犬とかの首輪に輪になっているパーツがあれば、普通、なんだと思います?」
「何ってそりゃ、リードを付ける……って、まさかそういうことですか?」
「さあ。私は本当のところは知りませんから」
あくまで想像に過ぎない。私自身が、怪談が好きだからこその妄想とも言う。こうだったら、ホラーとして面白いな、と思った、ただそれだけだ。
ただそれだけ、だけど。
「なんにせよ、なんでそんなものが捨てられてたのかわかりませんねぇ」
「まあ、夢なんてそんなものですから」
私はばっさりと今までの話を捨てた。なんとなくおかしいと思ったり——今回の場合は、こんなものが捨てられているという違和感だ——、そういうことが悪夢に繋がるのだ。怪談に於いて、夢というのは当てにならないというのが私の持論だ。
「夢、といえば、先生はよく奇妙な夢を見てらっしゃるとか」
「ええ、まあ。……でも、ホラーとは全く関係がありませんよ」
「そうなんですか」
私のことをなんだと思っているのだろうか、こいつは。
しかし、面白い夢を見たと自分でも思っているので、誰かに話すのもやぶさかでない。
「ちょっと前に見た夢ですけど」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます