異世界の竜騎士

修羅

第1話 侵攻

この物語は、現代の東欧から始まる。


ユーリは小国の空軍パイロットだった。

子供の頃から空に憧れ、夢を追って空軍に入り、ついにパイロットとなった。


25、6歳の頃。

卓越した操縦技術で「エースパイロット」と呼ばれ、人々に認められるようになっていた。


夢を叶えたのだ。


そんなある日。

隣国の大国が突然侵攻してきた。

地上には無数の車両、空にはヘリコプターと戦闘機が群れを成して押し寄せる。

ユーリは出撃した。


「敵が多すぎる……。だが、戦わなければ」


眼下では街や村が無慈悲に破壊されていた。

巨大な爆発。広がる炎。

ユーリはその光景を見下ろしながら戦闘に入る。

瞬く間に、3機の敵機を撃墜した。


司令官の声が無線に入る。

「いいぞ、ユーリ。だが、無理はするな」

「無理はしていません。だが、数が多すぎます!」


その時、一機の敵戦闘機が爆弾を投下しようとしていた。

「燃料気化爆弾……!?」


ユーリの顔が強張る。

だが武装は尽きていた。

ミサイルはゼロ。

機銃も撃ち尽くしている。


「もう武器はない。ならば――!」


ユーリは迷わなかった。

爆弾を抱えた戦闘機へ、自らの機体を突っ込ませた。


視界が反転する。

機体と共に墜ちているのか。

それとも、自分だけが落ちているのか。


「脱出装置は……作動しなかったのか。……死ぬな」


不思議と恐怖はなかった。

「爆弾を止めた。何人、助かっただろう。

死ぬ? 怖くないな……。ただ――もう、空を飛べないのか」


意識が闇に沈んでいく。

その時、ユーリは奇妙な光景を見た。

巨大な竜が、じっと彼を見つめていたのだ。


「……地獄行きか」


竜は沈黙し、やがて問う。

「汝、もう一度、空を飛びたいか?」


「飛びたいです。空はいい……。どこまでも青く、広い」


竜は頷いた。

「その願いを叶えよう。ただし戦士として、再び戦ってもらう」


ユーリは即答した。

「ああ。飛べるなら、戦士になって構わない」


意識は静かに遠のいていった。

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