20250313

空の上に小さな地球がもう一つ浮いている。

私たちは、そこにいる。


私よりも年下の年若い女性は、小さな山の上で生きていた。そこへ向かうには九十九折りになった急勾配に、かろうじて舗装されたような土の階段を登るしかない。そして、階段の最後の折り返し部分から山頂までしか、彼女は生きられない。というか、出てはいけないらしい。


私は多分、彼女と親しくなった。あるいは親しかった。他に仕事仲間である男性と女性が一人ずつ、私と一緒に山にいた。私たちはここを管理していたのかもしれない。

彼女にここから出たいと言われた。手を引いて山を駆け降りた。目に見える障害なんてなにもない。降りること自体は難なくできた。途中までは。


途中で彼女は身動きが取れなくなる。

私も立ち止まったのに、体が山の下へと引っ張られるようにジリジリと引っ張られる。置いていきたくない、置いていきたくない、離れたくない!と心からの叫びは口から出ていた。どうして、置いていかなくてはいけないのか。彼女はずっとここに一人。

地面に座り込む彼女を骨が軋むほど抱きしめて

離れない、離れたくないと泣き続けた。彼女も泣いていた気がするが、わからない。


同僚たちが追いついたころ、突然地面が割れた。めきめきと地層が裂けて、同僚二人が下へ落ちていく。焦りと驚愕の表情だ。亀裂はそのまま抱き合う私たちを引き裂くように走り、浮遊感に襲われる。足元が崩れて、私だけが落ちていく。天上の山に残された彼女の顔は見えなかった。彼女の過ごしてきた山の緑と、青空が清々しく鮮やかだ。


落下する。下には地球が見える。海があり、街があり、私たちの家がある。落ちたって死ぬことはないと分かっていたから怖くはなかったけれど、さみしさだけがずっと消えなかった。

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