第29話 種付け

静岡ハミル牧場


富士山はやっぱり白かった

草木萌動

弥生に入り富士は白を増して、中腹から麓にかけて雪を垂らしていた

その山は真冬の12月や1月よりも春めく3月4月の方が降雪が多い

冬のシベリア高気圧より春の南岸低気圧の影響によるためだが、陽気なこの頭には仕組みの理解がよくよく脳に治まらない


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種付けの季節を迎えた

ハミル牧場では2頭の繁殖牝馬がいる

一頭はミノリ。今年デビュー予定の2歳牡馬、ハミヤの母馬だ

その下にピンクの馬体、1歳牝馬ピンタがいる

諸般の事情により、ピンタは夏生まれだった

彼女を産んでから秋冬と休養乍ら緑の芝を運動して富士と過ごした

体調は万全、今年の種付けに臨む


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種牡馬アイルトン

北の大地で彼と付けて静岡に戻って来た


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2歳のハミヤの父はアイルトンだ

1歳のピンタの父はヒカリ

則ち花美哉の全弟か全妹になる

順当に受胎が確認されれば、


もう一頭

牝馬英杯を優勝したHⅠ優勝馬のツバキ

懇意にしている馬主ソソスがそのままオーナーとして所有するが、ハミル牧場で繋養することとなった

つまり、馬主から預託料の支払いを受けて管理を任されている

種付料は馬主の負担になる


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レースには賞金の別に生産牧場賞や繁殖牝馬所有賞があり、小規模牧場には馬花にならない収入だ繁殖牝馬、しかも有望なHⅠ馬の預託に指名されたことに牧場主は歓天喜地した


馬主のソソスと協議して種馬ヒカリを付けることになった


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アイルトン

16歳牡馬

生粋のステイヤーだった

長距離重賞を3勝した

HⅠで優勝することはできなかったが、HⅠで2着3着は複数回ある

種牡馬としてもHⅠはおろか重賞勝馬も出せていない

種付け料 40万円


ヒカリ

9歳牡馬

HⅢ 1勝のみ

この馬はハミル牧場で繋養している、唯一の種牡馬

静岡に牧場を構えているため、通常に種付けに向かう場合には北への遠征費用が掛かる

牧場内で完結させるためにPRIVATEで購入した

ヒカリは種牡馬になることの叶う競争成績ではなかったが、馬主が格安で譲ってくれた

種牡馬登録を済まして晴れて男となった


プライベートは基本的には所有者の内輪のみで種付される

申し出があれば交渉次第だが、需要はほぼ皆無だ


牧場主のユタタと恋人ヨウコ、スタッフのマメド

生産牧場の大仕事を終えて、一息吐く

2週間後には受胎確認ができる

繋養馬が増えて人手が足りなくなってきた



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事務所のドアからノック音が響く

「面接お願いします」

瓜二つの男女が立っていた


#HAMIRU

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#花美哉

#20250302

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