最初に読んだとき「ああ、青春だなぁ」って思ったんですよね。主人公の男の子が好きな子に告白するっていう、もう、王道中の王道。場所もまた良い。秘密の場所みたいな、ちょっとドキドキする感じ。ただ、読み進めていくうちに、ちょっとした違和感。なんだか、噛み合わないというか、不気味な感じ。ラストのシーンは……びびっときましたね。
必ず成功するはずの告白から始まり、色々素敵なことになる物語です。必ず成功するのだから、落ち着いて告白するのが吉だと思いました。
冒頭、とっても爽やかな青春小説となっています。 告白してOKを貰える少年。それも、蝉の声が響き渡る八月の三十一日。場所は松の木の下。青春としての絶頂。翌日からの学校生活はひたすらハッピー。そんな明るい未来が開けているのがわかります。 ……そして、この作品はホラーです。 その後、彼が見たものは? 生命力に溢れ、夏の爽やかさを演出する蝉の声。それがただただ、『心の凍りついた状態』を際立たせる装置と成り果てます。 ふわふわした幸福ムードから一転する、急激な寒気の演出が見事な一作でした。
簡潔でありながら、要点を十分に含んだ小説だと思います。読者の皆様にお勧めいたします。