第42話 夜を続けるコト


 21時の消灯時間を過ぎた頃、部屋に入ってきたのは灘さんと相田さんだった。


 驚いて思わず声を出そうとすると、灘さんにそのまま布団で口を抑えられた。


「んんもんもももむも!?」


「マコトくん静かに! シーー! バレちゃまずいから静かにして! 今るみちゃんと頑張って女子部屋から抜け出してきたの!」


「やっほーマコトくんと雄太ー」


 灘さんの影から相田さんがスッと出てきて、小声で手を振りながら挨拶してくる。


 二人とも、パジャマ姿で、なんか少しドキドキする。


「ビビっったぁ〜〜、先生が来たかと思って心臓止まるかと思ったぁ……」


 その横で、湯川くんが別の意味でドキドキしていた。


「てことで、二人とも! 今からダメなコトをしに外に行くよ! 林間学校の夜の肝試しに!」


「えぇ……さすがに今日はバレるとまずいよ……や、やめよ?」


「チッチッチ、マコトくん。今日はるみちゃんも居るし、湯川くんも居るからやるよ! それに夜の林間学校で友達とダメなコトするのは絶対楽しいし……!」


「そうだよマコトくん! そんなこと言ったら私達が抜け出してこの部屋に居るだけで既にダメなコトだし、今さらだよ!」


 灘さんのワクワクした様子の横から、相田さんがもう遅いと伝えてくる。

 湯川くんは、僕達のノリがまだ分からない様子で、ポカンと話を聞いてる。


「るみちゃんの言う通り! もちろんマコトくんの意見を聞くと昨日話したけど、今日は他のみんなも居るからとりあえずやるよ! そして、今回はしっかりマコトくんを説得出来る情報も持ってる!」


「う、うん?」


「と言うのも、さっき行くルートは下調べして、先生の巡回時間と場所も昨日の夜で把握したから、準備万端なんだよ!」


「「おお」」


「てことで今から行くのは、ズバリ自動販売機!」


 そうして、灘さんによる説明が始まった。

 

「まず、今からみんなで宿泊校舎外にある自動販売機にジュースを買いに行きます! 方法は、ここの部屋の窓から外に出て、そこからみんなで見つからないようにして、こっそりささっと買って帰ってくるって感じ! どう?? それでその過程で、夜の探検もするっていう!」


「外に先生居ないの?」


「そこは多分大丈夫だと思う。昨日私となこちゃんで二階の窓から、夜の外に誰も居ないこと確認したし。それに先生達が泊まってる場所少し遠い場所にあるし。あと、廊下周る先生も22時以降は一時的に居なくなるし!」


「そう! だから大丈夫だと思う! それに、私キャンプファイヤーの時ちょこちょこっと下見したし、行く時のルートも自動販売機の位置もバッチリだよ!」


 だからキャンプファイヤーの時に灘さん居なかったんだ。納得……。


「だけど、念の為に二手に別れようと思うの。逃げる時もそっちの方が逃げやすいと思うし。一応ね」


「そうだね、じゃあどうやって決めよう? ジャンケンとか?」


 僕もいつの間にか乗せられて、灘さんにグループ分けについて尋ねてしまう。


「うん、それで行こう! でも外に出る時は一人一人でね!」


 そんな会話をしていると、急に湯川くんがキラキラした目線で、僕の横に座ってた。


「とりあえず早くやろ! こういうのめちゃくちゃ楽しい! まさかるみとなこちゃんとマコくんがこんなことするとは思ってなかったけど、俺もこういうの好きだから嬉しい!」


 無事仲間入りした湯川くんを交えて、もう一度しっかりとみんなでやること、ルートを確認して、決行の22時まで待った。


 そして、その時が来た。

 灘さんが小声で、指揮を取る。


「みんな準備はいい? もう一度確認するけど、今からそこの窓から外に出て、見つからずに自動販売機に行って、飲み物を買ってくるのがミッション! それでこの部屋に戻ってこれればクリアよ!」


「うん」


「じゃあ行くよ!」


 そうして、開けた窓から一人ずつ降りていく。

 窓の外側に出っぱっている場所があり、そこに足をかけて、最後はジャンプして降りる。

 外は暗くて、少しの月明かりと、街灯の灯りだけが光っている。


 僕も降りたところで、みんなで顔を合わせ、無言で頷き合う。


 そして、そこから僕と灘さん、湯川くんと相田さんに別れて、反対の方向から校舎をぐるっと回って、別の棟前の自動販売機を目指す。


 前の灘さんが先導しながら、スラスラと物陰に隠れつつ、音を立てないようにしながら進む。

 僕もその後を、真似するように追う。


 すると、前の灘さんが物陰に隠れながら、こっちを見て笑ってる。


「なんかこういうのドキドキするね」


「う、うん。意外と楽しい」


 なんて会話をしながら、物陰を移動していくと、目的地の自動販売機の光が見えてくる。


 そして、最後の物陰として隠れた大きな岩の裏に来ると、足音が聞こえる。


「おい、もしかしてそこに誰かいるのか!?」


 ヤバい!! 

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