第31話 なことマコトが違うコト


「今から神社に行かない??」


 急な灘さんの提案に思わず固まってしまう。


「え、でももう17時半過ぎてるし、時間が……」


「ええーいいじゃん神社行こ! もう少しだけ、あそぼ? ほら、二人とも遅くまで遊べるし」


 いつものいたずら気味な顔で笑いながら誘ってくる灘さんに対して、どうしても帰りたい気持ちが先に来る。


「む、無理だよ。だって18時過ぎたら流石にバレちゃいそうだし、帰らなくちゃだよ……その、勉強もあるし……」


 僕は思わず灘さんから目を逸らしながら話す。


「その、いつもはダメなコトしても楽しいし、世界が広がる感じがするし、それに誰かに迷惑をかけてる気もしないから出来るけど……。今から遊ぶのはお父さんとかお母さんに迷惑かけるし……」


「でも今から行ったら絶対楽しいよ!! それにほら、夕方終わりにあの神社に行ってみたくない?? なんかワクワクしそうじゃん! マコトくんのお父さんとお母さんにはさ、わたしの家で遊んでたら遅くなっちゃったって言ってくれていいし」


 どうしても帰りたい僕に対して、楽しそうに話す灘さん。


 確かに今から行くのは楽しいだろうけど、外はもう真っ暗に近くて、怖い。


「そ、そうだけど、これ以上はやっぱりダメだから、今日はもう帰ろうよ。夜の神社は危険ってこの前動画で見たし……それにその嘘だと灘さんにも迷惑かけちゃうし……」


「えーー行こうよ! 危険じゃないよ全然! それに今から行くからこそ楽しいんじゃん!」


「で、でも、ほらさ、やっぱり明日にしようよ。今日はもう疲れちゃったし……」


「明日じゃつまらないもん。スリルがないもん!」


「だ、だけど、これ以上は本当にダメだよ……」


「ダメなコトだからいいんじゃん! だから行こうよ!」


 そう言って灘さんが僕の手首らへんを掴んで、歩き出そうとする。


「ほら、早く行こ!」


「ええ、でも……」


 灘さんが急かしながら僕の手を引っ張る。

 僕も戸惑いながらそれに釣られて、ゆっくりと歩き出してしまう。

 でも、どうしても、どうしても行きたくなくてーー僕は灘さんの手を剥がす。


「な、灘さん、やっぱり今日はごめん!!」


「あ、ちょっと!! ねぇ、マコトくん待って!」


 ーー僕は思わずその場から逃げ出すように走ってしまった。


 走ってる間、どこか胸が苦しくて、息が切れて、どうすれば良いのかも分からなくて、無我夢中でいた。


 そして、気づけば家に着いていた。



 ーーーーーー


 玄関を開けて入ると、暗闇と静けさが広がっていた。


 まだ誰も帰ってきてないことに安堵しつつ、廊下に明かりを付けて、僕はそのまま二階へ向かい、自分の部屋に入った。


 部屋に入ると、ランドセルを置いて、そのままベッドに正面から倒れ込んだ。

 そして、そのままうつ伏せになって、考え込む。

 

 この前もこんなことあったなぁ、なんて思いつつ、さっきのことが頭をぐるぐるする。


 どうすればよかったんだろう……。


 なんて考えている間に意識が暗闇に吸い込まれる。


 

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