第8話 密室の白子 ①
門司港の朝は、静かで穏やかな海の香りに包まれて始まる。古いレンガ造りの建物が立ち並ぶこの港町は、歴史の息吹を感じさせると同時に、現代の賑わいをも見せる。小さなカフェが開店準備を始め、漁船が漁から戻り、港の風景に命を吹き込んでいく。
そんな中、一つの事件がこの美しい町を揺るがせることになるとは、誰も予想していなかった。
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探偵事務所「Mitamura & Fujita Detective Agency」は、古びたビルの一角にひっそりと佇んでいた。事務所の窓からは、穏やかな海と関門海峡が一望でき、忙しい日常から解放されるような風景が広がっていた。
三田村香織は、毎朝のルーティンである紅茶を淹れながら、パートナーの藤田涼介を待っていた。香織は28歳、元信用金庫の職員から探偵に転身し、その美貌と鋭い洞察力で数々の事件を解決してきた。彼女の真剣な瞳は、常に新たな謎を求めていた。
ドアが開き、涼介が入ってきた。彼は30歳で、香織と同じく元信用金庫の職員だった。料理に対する深い知識を持ち、その才能を活かして数々の事件を解決に導いていた。
「おはよう、香織。今日はいい天気だね」と涼介が笑顔で挨拶した。
「おはよう、涼介。紅茶でも飲む?」香織がカップを差し出す。
「ありがとう。ところで、今朝の新聞に気になる記事があったんだ。港の有名な和食レストランでシェフが突然倒れたらしい。毒殺の可能性があるって話だよ」
涼介の言葉に、香織の瞳が鋭く光った。「それは興味深いわね。ちょうど新しい事件を探していたところよ」
二人は急いで支度を整え、現場へと向かった。レストラン「福寿」は、門司港でも名高い店で、多くの常連客に愛されている場所だった。店内には、警察官たちが捜査を進めており、緊張感が漂っていた。
「これはただの事故じゃないわ。何かが隠されているはず」と香織はつぶやいた。
涼介も頷き、「まずはシェフの田中直樹さんについて詳しく調べよう。彼が何を作っていたのか、誰が彼に近づくことができたのか」
こうして、二人の新たな調査が始まった。門司港の静かな風景とは対照的に、彼らの前には複雑な謎が待ち受けている。美しい港町を舞台にしたこの事件は、二人にとってどのような結末を迎えるのだろうか。
朝の光が港を照らし、新たな一日が幕を開ける中、香織と涼介の冒険は再び動き出した。
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