リハーサル Cpart
ブリキたちは店主のいない銃砲店を物色していた。
ブリキは新しく手に入った自動拳銃、アンフィスバエナの専用マガジンを手に入れた。
それと互換性のあるマガジンをあるだけ集めて、弾薬を装填する。
ついでにブリキが所持している自動小銃の弾薬とマガジンも回収していた。
一方、アジサイはM九式三型のマガジンに、ひたすら弾薬を込めてる
不器用なのか、マガジンに弾薬を込めるのに時間が掛かっている。
「そう思えば、その銃に名前はあるのですか?」
「この銃ですか?」
ブリキは自動小銃を見せた。
「これはM十四式自動小銃。私が軍に入った頃から、もう十年間は使っています」
「わたしも長い銃が欲しい」
「長い銃は取り回しが大変ですよ。それにマガジンの弾込めも」
ブリキはM十四式自動小銃を持って、店内の銃を物色し始めた。
立てかけられた銃が入ったショーケースの列が並んでいて、その一つの前で立ち止まった。
ブリキはそのショーケースのガラスを、M十四式自動小銃の銃床で割った。
中から、西部劇に出てくるようなレバーアクション式のライフル銃を取り出した。
木製の銃床と銃身を切り詰めたソードオフモデル。
グリップにはランダルと文字が刻印されていた。
レバーアクションなので、マガジンを必要としない。
サイドのゲートから直接弾薬を装填する方式だ。
総弾数は薬室込みで五発。
オプションで光学照準器が着けられるようレイルシステムのハンドガードが備わっている。
ブリキはその銃をアジサイに渡した。
アジサイは渡された銃を手に取って見て、刻印された文字を口にして読んだ。
「ランダル・・・・・・これが名前ですかね」
「さあ、それは知らないけれど。アジサイがそう呼びたいなら、それで良いのでは?」
「じゃあ、ランダルと名前付けます!」
アジサイは嬉しそうに銃を眺めます。
ブリキはアジサイに銃の操作と解説をしました。
それからマガジンを必要としないので、弾薬ホルダーを拝借した。
腰に巻くタイプのカートリッジベルト。
ランダルの弾薬を保持できるループがあり、既に弾は込められていた。
アジサイは弾薬ホルダーを装備した。
それとM九式三型を持ち運びする為に、肩にはショルダーホルスターを付けた。
左脇下にはM九式三型が納められており、右脇にはマグポーチが二個ある。
しかし、二十発のロングマガジンは入らないので、十五発のノーマルマガジンを収納した。
左太ももには、ロングマガジン専用のマグポーチが三本、ベルトで巻かれていた。
ついでにミリタリーブーツがあったので、靴擦れを起こしていたアジサイはピッタリなモノを手に入れた。
「装備はこれで完了ですかね」
ブリキはアジサイの装備を確認した。
「なんか軍人さんみたいで、強くなった気がします!」
鏡に向かったアジサイは、銃を持って、ポーズを決めている。
「では、これからリハーサルを行います」
「リハーサルって、何ですか?」
「二人で港町を襲撃します」
「ハイ?」
アジサイは持っていたランダルを落としかけた。
「いや、待って! 意味不明です!?」
「理由は二つあります。一つは、アジサイの実力を試す事が目的です。これから先、一緒に演奏をするのですから、一方的に人を殺す予行練習が必要です」
「予行練習、だからリハーサルなのか」
「それともう一つの理由は、帝国の資金源を断つことです」
「帝国の資金源?」
アジサイはこれまた理解できていない表情を向ける。
「先程の港町で、マフィアがみかじめ料を回収していたでしょう。どうやら、その資金が帝国に流れていると、パーサーから報告がありました」
「パーサーさんって、もしかして情報屋かなんかですか?」
「彼らの仕事は、乗客の旅を快適にする事です」
「じゃあ、ブリキの仕事は?」
ブリキは少し考えて、
「世界平和」
と答えた。
「わかった。じゃあ、早くマフィアたちを倒して、住民の平和を取り戻しましょう」
アジサイがランダルに弾薬を込めた。
「撃つ相手が違いますよ」
「えっ?」
「今から殺すのは、港の住民です」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
港町が見渡せる丘の上に、ブリキがうつ伏せになっていた。
手にはM十四式自動小銃のグリップが握られている。
バイポットを展開し、スコープの倍率を最大にしていた。
スコープに映るのは、日が沈んで港町を建物の明かりで灯す。
一階建ての
アジサイの視線の先には、男性の住民が背を向けて煙草を吸っている。
その背後をゆっくりと気付かれないように、アジサイが近づいていく。
間合いに入った瞬間、アジサイは男の頭を掴んだ。
力の限り首を百八十度に捻った。
男の口元から、咥えていた煙草がポロリと落ちる。
それに続いて、男の身体も地面に倒れ込んだ。
アジサイは死体の首を戻し、地べたに座っている風に形を整えた。
それからアジサイは裏口から建物の中に入っていった。
アジサイが部屋の中に入ると、キッチンで女性が料理をしていた。
火元では鍋がグツグツと煮えていた。
扉が開いた音で女性が振り返り、驚いた顔をする。
叫ぼうと口を開けるも、アジサイが急いで口を塞いだ。
アジサイは台所にあった包丁を掴むと、女の声帯を引き裂いた。
そして心臓、肺と一突きした。
死体になった女が、ずるずると視線と共に身体が落ちていく。
アジサイは血で汚れた手を、
建物から出ようとすると、食器棚が視界に入った。
そこには普通の食器と一緒に、熊の絵が描かれた子供用のコップがあった。
その瞬間、背後の物陰から子供が飛び出し、裏口から逃げだそうとしていた。
アジサイは沸騰した鍋を掴んで、子供の背中を目掛けて中身をぶちまけた。
子供は熱さのあまり、叫びながら前のめりに転んだ。
肌は赤くなり、首元には水ぶくれが出来ていた。
アジサイは子供を引きずり、甕の中に頭から沈めた。
子供の身体が、バタバタと暴れるも、次第に動かなくなった。
建物からアジサイが出ると、町中に死体が転がっていた。
アジサイが三人を殺している間に、ブリキは狙撃で二十人以上を射殺していた。
それから住民が通りで死体を見つけて、慌てて近づくと、ブリキはそれを狙って撃ち殺す。
建物に逃げた住民をアジサイが仕留めていく。
その繰り返し。
たまに銃を持った住民が反撃してきたが、一方的にブリキが遠距離射撃を行う。
物陰に隠れた相手は、アジサイがランダルで後片付けをする。
その流れ作業。
「アジサイも慣れてい来ましたね」
ブリキはそう呟きながら、船で逃げようとする猟師を射殺した。
命中した頭部は、赤色に花開いた。
「ブリキさんに負けないぞ」
アジサイはゲームで競うように家族連れを集中的に狙って、殺した人数を稼いでいた。
自分の射撃を上げるために、色んな撃ち方を試していた。
正確に素早く相手を倒せるように、ランダルで腰撃ちの練習した。
M九式三型の三点バーストを利用して、平射撃ちで一人一発ずつ三人同時に射殺した。
綺麗に急所に命中し、相手を無力化。
ランダルに弾薬を装填していると、背後から後頭部を銃で撃たれる事もあった。
だが、貫通することなく弾頭がカサブタのようにポロポロ落ちていく。
アジサイは落ち着いた様子で、鼻歌すら歌っている。
住人達は後退しながらも、
「何なんだよ! この化け物が⁉」
と撃ち続ける。
弾を込め終えたアジサイは、ランダルのレバーを起こして、トリガーを引いた。
高威力のマグナム弾が住民の身体を吹き飛ばす。
「わたし、超強いゾンビなんで!」
アジサイは自己紹介をすると、次弾の装填をした。
そして一人、また一人と反撃されていく住民たち。
五発撃って、また装填。
アジサイの通った跡には、死体の山が築き上げられる。
そのうちの一人が持っていた銃に興味がわいて、殺してから鹵獲した。
形状は非常にユニークだった。
ブリキが新たに手に入れた拳銃、アンフィスバエナのように水平二連の銃口を持っていた。
また、アジサイのランダルみたいに銃床もなく、木製のグリップがあるだけ。
マガジンを必要としないみたいで、銃身の上部にレバーが付いていた。
レバーを動かすと、銃身がパカっと中折れした。
中には見たことのない弾薬が二ついっぺんに飛び出た。
筒状でひとつは中身が飛び出した形跡があり、もう一つは未使用だった。
アジサイは銃の持ち主であった遺体から、同じ未使用弾薬を拝借し装填した。
銃本体を元の形状に戻すと、カチッとロックされた。
試しに、逃げる住民の背後に撃つと、一発の弾薬から複数の小さな弾が飛び出した。
それが広範囲に飛び散って、命中した住民は力尽きたように倒れ込んだ。
背中には服を突き破って、無数の弾痕から血が滲み出ていた。
アジサイは目を輝かせて、持っていた銃を見て言った。
「クールだ・・・・・・」
アジサイは遺体のから、弾薬がぎっしり詰まった肩掛けのバッグを剥ぎ取った。
一旦、ランダルをそのバッグにしまって、中折れ式の銃で住民たちと遊ぶことにした。
それから一時間弱で、町に静寂が訪れた。
住民たちは二度と覚める事のない眠りについた。
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