雨の彼女

黒色不透明

第1話

傘、傘、傘、傘…


皆、おんなじ。つまんない。


雨から逃げて、雨に当たらぬように、雨に流されるように、歩いていく。


雨は、こんなにも美しいのに。


「雨だよ、雨だよ。ほら、キラキラしてるよ」


遥か彼方から降り注いだ天露が、私の手のひらで跳ねて弾けて輝く。


虹を集めて砕いたように、キラキラと。


曇天の下、傘の流れに逆らうように、一人の少女が跳ねるように行く。


傘の群れを、因幡の白兎のごとく踏みつけ、飛び越える。


白い髪と、白いドレスが回り、七色の雫が離れ舞う。


ホップ、ステップ、ジャンプ、スキップ。


少女は笑顔で歌いだす。


「あめあめ、ふれふれ、もっとふれ~♪」


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