第178話 風船と少年


七色の風船を両手で握りしめ

少年は立っていた 灰色の靴下

今日は空が青い日で風は少し強い

遠くを飛ぶ鳥の声が

風に乗りかすかに聞こえていた


コンクリートの階段は少し冷えて

少年は足早に屋上を目指す

ふわふわ揺れる風船に穏やかな日差し

この完璧な休日を

誰もいない屋上で過ごしたかった


急な風が吹き抜ける

少年は蹌踉めいてうっかり手を離しかけ

風船が一つ空へと舞い上がる

高く高く昇っていく赤い風船を

見つめる少年の目はどこまでも澄んでいた


手の中にある六色の風船を

少年はしっかり確かめた

今度は決して放さないように

失いたくはなかったけれど

あの赤には空の青が似合っていたと

少年は淡く微笑んだ


遠く遠く流れていった

赤はもう見えない


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