第98話 白い世界


いつの間にか空気が変わっていた

その冷たい空気を目一杯吸い込んで

僕は体中に冬を送りこんでいる

全身に染みわたった冬は知らぬ間に

心を真っ白に変えていくみたいだ

しんと静まった気持ちのままで

向かうのは誰も知らない世界

一歩また一歩と足を踏み出す

不安も怖れも痛みも何もかもを

呑み込んで味方につけて僕は歩く

あとに残されるちっぽけな足跡は

白い世界に刻まれる存在の意味で

ただそれだけのために僕は

今ここに生きている

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