第90話 夢のカケラ


懐かしい夢を見た


まだ世界が限りなく広かったあの頃

僕は綺麗なガラス玉を大切に抱え

この手で何でも掴めると思っていた


空はどこまでも青く

風はどこまでもやわらかく

太陽はキラキラと揺らめき

ガラス玉は七色に輝く


世界はきっと僕の手にある

そんな根拠のない自信すら

ひどく美しく見えていた


懐かしい夢だった

哀しいくらいに鮮やかな夢だった


でも今の僕には何もない

自信もなければ野望もない

あれほど大切に抱えていた

ガラス玉さえ粉々に砕けた


それなのにまだ世界は広いと思いたい

僕のこの手で何か掴めると信じたい


だから僕は夢のカケラを拾い集める

青い空をやわらかな風を

太陽の光をガラスにかざして

ほら、きっと大丈夫


懐かしい夢だった

傷だらけの、輝かしい今だった

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