第31話 関東の老婆武将

 昔々、上野国に妙印尼みょういんには生まれたそうな。


 夫は由良成繁ゆらなりしげで上野国新田金山城の城主を務めていた。


 成繁は下克上を行い、戦国大名として独立を果たした武将で上杉、北条という強大勢力を前に勢力を切り替え上手く立ち回っていた。


 妙印尼も夫の成繁に伴い勢力を切り替えていたため、苦労が多かったという。


 

 しかし、成繁が1578年に亡くなると妙印尼が陰で由良家を切り盛りしていくのである。


 

 1584年になるとこれまで培ってきた北条家との関係が段々とこじれてしまう。


 北条氏直はこれまでの由良家との関係を利用し、妙印尼の息子である由良国繁ゆらくにしげ長尾顕長ながおあきながたち兄弟に同盟を組む口実で茶会におびき寄せ、小田原城に幽閉してしまう。


 国繁は金山城の城主であったので国繁が捕らえられたことで城主不在となる。


 そこを北条氏照が攻めようと軍を向けてきた。


「我が夫が苦労して守ってきたこの金山城をおめおめと北条に明け渡してなるものか!!」


兄弟の代わりとして妙印尼が立ち上がる。


妙印尼は指揮系統が乱れている家臣たちをうまくまとめ上げ、北条氏照ほうじょううじてるに立ち向かう。


 この時、妙印尼は71歳という高齢だったが、成繁亡き後の由良家を守るために妙印尼は反北条を掲げる佐竹義重と佐野宗綱さのむねつなと連携を取る。


「佐竹氏と佐野氏は反北条を掲げておる。ここは連携を図り北条氏に対抗するぞ!!」


 「「おお――――――!!」」


 家臣は妙印尼の言葉に納得して大声をあげたのである。



 家臣一同と共に反北条の思いが強く、北条氏照を相手にしながらも、ゲリラ戦を展開して撃退し、城を攻略さずにいたのである。


 しかし、北条氏は兄弟二人の命と引き換えに城を明け渡すように要求してきたのである。


 息子二人の命を優先して明け渡すと思った北条氏だが予想外なことが起きてしまう。


 なんと、妙印尼は当初今回の交換条件を拒否したという。


「まんまと幽閉されてしまう二人の命などくれてやる。必ずやこの城を死守して見せるぞ!!」


 妙印尼は息子を愚か者といい、交換条件を一度ことわったそうな。


 されど、家臣たちにいさめられ、後に交換条件を受け入れた。


 

 そのため、翌年には兄弟の命を守るため、金山城と館林城との交換条件により城を明け渡したという。

 

 

 それから3年後の1590年、豊臣秀吉による小田原征伐が始まる。


 この時も小田原城にいた兄弟は北条方として戦っている。

 

 当然、妙印尼も息子たちのために北条方に味方するのかと思いきや、妙印尼は孫の由良貞繁ゆらさだしげと共に豊臣方へつく。


 前田利家の軍に加勢し功績を挙げた妙印尼は利家からの尽力もあり、秀吉から国繁と顕長の赦免と共に由良家の存続を許されたという。


 さらに常陸国牛久の所領を貰い受けたそうな。



 その際、秀吉から女丈夫と称えられたという。

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