第12話 家康 百貫目で売られる

 大坂の陣で豊臣家を滅ぼした後、徳川家康は駿府城で隠居生活をしていた。


 家康は、駿府城の庭先に出た。庭園はどこまでも広がっていそうなほど大きく植えられていた木や植物はきれいに手入れをされていた。


 しかし、広さとは裏腹に鳥の声が響き渡るほどの静けさがあった。


 家康は、その庭園に出ると、どこまでも広がる踏み石を歩いていった。


 そして、入念に手入れされた盆栽まで行くと、眺めたりいじったりしていた。


 そんな時、家康は、苦労の日々を送っていた幼少期のことを思い出にふけろうとしていた。


 「こう盆栽をいじっておると、幼少期のことが思い出されるわ。そういえば、今川家に人質に出された時、わしは誘拐されてしまったな‥‥‥」


 家康はだんだんと思い出にふけっていく。人質として出された時のことを‥‥‥


 

 (わしが幼少期の時、松平家は織田家と戦っていた。されど‥‥‥窮地にたたされてしまい、今川家に援助をしてもらうため、わしは人質として差し出されてしもうた‥‥‥)


 人質として今川家に家康は向かっていた。そのさなか、事件が発生するのである。


 家康たちは岡崎城を出立して、渥美半島あつみはんとうに入り老津おいつの浜から、舟で駿府まで送り届ける予定であったらしい。


 ところが、一行を乗せた舟はそのまま三河湾を西に進み、今川家と当時敵対していた尾張国の戦国大名・織田信秀おだのぶひでのもとに到着したのである。


 これは、戸田康光とだやすみつなるものが、織田家に通じて今川家から離反したために起こった事件であったという。


 (その際、わしのお供についていて、船に同行しなかった者は責任を感じてほとんどの者が切腹してしもうた‥‥‥)


 家康は思い出しながら、悲しみの表情を浮かべていたという。


 

 こうして、家康は戸田康光によって、織田家に連れてこられた。この際、康光は家康を売り飛ばしたという。


 その額はなんと、百貫目ひゃっかんめであったという。当時の一貫は、10万円ぐらいなので、1000万円くらいで売りとばされたということになる。


 (こうして、わしはまさかの100貫目で売り飛ばされたのじゃ。わしをたったの百貫目で売り飛ばすとは‥‥‥売り飛ばしたものは、その売り飛ばされたわしが征夷大将軍になるとは当時ゆめゆめ思うまい)


 その時、家康は、不満げな表情を浮かべた後、少しして、口元をニヤリとしたという。


 

 その後、売り飛ばされた家康はある屋敷で匿われることになったという。その際に織田信長に出会ったという説もある。


 だが、これに怒った今川義元は織田軍の安城に兵を差し向けたのである。


 この際に、織田信秀の子、信広をとらえることに成功し、捕虜の交換で家康は無事今川家に送り届けられたという。


 

 (このようにして、わしは今川家の元で人質生活をした。あの当時の生活は苦しい時ももちろんあったが、楽しい思い出もたくさんあった)


 家康はさらに人質時代の時も思い出しながら盆栽をいじくっていたという。


 


 


 


 


 

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