13 立て札

 こちら『立て札』でございます。

 たかが立て札、されど立て札。でございます。

 利用規約と同じでついつい見過ごされがちな注意書きではございますが、この注意喚起があなたの生命を守るかもしれません。

 目をカッと見開き、隅から隅まで熟読されることをお勧めいたします。


――――

 足元でフンフンとハミングしている花を、オレは震えながら見下ろす。

 うん、オレを襲った肉食花よりは、だんぜん可愛い。


――ハミングフラワー。

 肉食花の亜種。

 一株だと普通の肉食花だが、数株植えると、ハミングをはじめる。メロディを教え込むことも可能。――


 という説明書きのプレートを読む。

 その隣にも、立て札がある。


――ハミングフラワーは凶暴です。触れようとすると、手を食い千切られます。保護者の方は、お子様がお手を触れないようご注意ください。なお、噛まれた場合は無理に引き剥がそうとはせずに、すみやかにお近くの係員にお声がけください――


 という、恐ろしい文章は読まなかったことにする。

(異世界の注意書き、怖すぎるだろ……)

――――(『勇者召喚された魔王様は王太子に攻略されそうです〜喚ばれた先は多夫多妻のトンデモない異世界でした〜』本編より)


「お兄さま! この立て札にはなんと書いてあるのかしら?」

「う――ん? このはしわたるべからず?」

「コノハシワタルベカラズ?」

「奇妙な呪文ですわね。こちらは……ペンキヌリタテ?」

「世界には様々な立て札があるということだな。奥が深い」




〈イラスト掲載先・近況ノートに飛びます〉

https://kakuyomu.jp/users/morikurenorikure/news/16818023212524799357



〈この作品は……〉

第28章−5 異世界の庭師は◯◯◯です(5)

https://kakuyomu.jp/works/16817330660778992634/episodes/16818023211763378742

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