第47話 イシュちゃん

「リヒト……大丈夫だ! 僕はもう連れ戻したりしないよ! なにせ魔王軍幹部のお嫁さんだからね!」


「私もそうね! もう聖女じゃないから……悪女は違うわね! まぁ魔族側の人間なのは間違い無いから、安心して!」


「うんうん、私達此処で暫く遊んだあとは魔族領で暮らすんだ。だから、もう連れ戻す事はしないから安心してね」


「そう」


良かった。


これでもう勇者パーティを気にしないで生活が出来る。


「リヒト殿、それでは……暫く観光したらアリア様の所に参ります。 多分夜になりますが、その時改めてご挨拶させて頂きます」


「そうですか? 解りました!」


「これからは私達も味方同士、仲良くしましょう」


「そうですね、是非!」


危機は去った。


明らかに三人はライトの傍に居る時よりデレた顔をしている。


あれ程のイケメン達に囲まれているなら納得。


特にマリアンヌは、天使に憧れていたから夢が叶ったわけだ。


これでもう大丈夫だな。


うん?!


「あの、そういえば此処にライトが居ないようですが、ライトはどうしたんですか?」


「失敗したんですよ……」


そう言えばこの人、一人トボトボ歩いていたな。


「え~と……」


「失敗したんです……うっうっうえぇぇぇぇーーん」


泣きながら走っていってしまった。


「コホン、勇者を誘惑する役が彼女、フレイヤだったのですが……遭遇出来なくてね……気にしないであげて、多分夜には元気になっているから」


「そうですか……」


まぁ三職が抜けたんだ。


これで勇者パーティ漆黒の風ももう終わりだな。


これで幼馴染たちが誰一人欠ける事無く戦いが終わった。


これは良い事だ。


7人は俺達に頭を下げながらその場を去っていった。


嬉しそうで何よりだ……


あれっ……


「エルダさん!」


エルダさんが居ない。


話しに飽きてどこかに行っちゃったのかな?


まぁ、小さな街だしすぐに見つかるか。


◆◆◆


女神イシュタスの天界にて……


「あのさぁ~イシュちゃん自分勝手に転送するのやめて貰えないかな?」


「エルダ、お願い助けてよ……聖女も剣聖も、賢者も全員魔族側に取られちゃって困っているのよ! 魔王倒しちゃってくれない?」


「それは無理! ルーちゃんとも友達だからやらないよ!」


「エルダ~昔は助けてくれたじゃない? 友達でしょう?」


本当に女神の癖に困るといつも私に頼むのよね~


「私はもう人間にも魔族にも加担したく無いんだよ。 魔族にも良い人もいるし悪い人もいる。人間も含みどの種族も同じだよ」


「だけど、このままじゃ人間が困る事になるのよ?」


「ならないよ、何を言っているのかな? そんな事言っているのはイシュちゃんだけだって、今の魔王のルーちゃんも含んで魔族側は良い人ばかりだよ……むしろ討伐する側の人間の方が良くない人間が多い気がするよ」


「エルダ……魔族が邪悪で人間は……」


「ねぇ、イシュちゃん……そんな事無いよ! 私、色々と知りたくて旅をした時、人間に騙されて奴隷になった事あるの知っているよね? イシュちゃんも一回女神やめて下からこの世の中を見てみると良いよ! けっこう、ずるくて悪人の人間も多いから」


「そんな事無い。人類は……」


「盗賊も居るし殺人者も居るよね? 実際に女神のイシュちゃんが罰を与える人間も居るんだから善悪に種族は関係ないと思わない?」


「エルダの言う事も解るけど、私は人間を守護する女神なのよ……人間の為に勇者を生みだし希望を与える義務があるの」


「勇者っているの?」


「いるに決まっているじゃない?」


「イシュちゃんは魔王討伐とか言うけどさぁ~ 殆どの魔王は魔王城から出ないんだから、討伐する意味なんてないと思うよ? 勇者を送り込まなければ、少なくとも勇者と魔王が戦う事は避けられるんじゃないかな?」


「私は女神……人間は皆、私を縋ってくるのよ! 助けないわけにいかないわ」


「イシュちゃんはそうなんだね……だけど、私は種族関係なく悪い人も好い人も居る。 それを知っているの。だから、どの種族にも加担したくないの! 今の私には種族関係なく沢山の友達がいる。 昔みたいに魔族の為に人間の国を滅ぼしたり、逆にイシュちゃんに頼まれたからって魔王を討伐したりしないからね」


イシュちゃんは『人間を救う女神』として生まれた。


だから、どうしても人間を中心に考えちゃうんだよね。


だけど、それは正しくない。


だけど『女神』だから幾ら言っても駄目なんだろうな……


「もし、そうだとしたら私はどうすれば良いの? 魔王討伐の為に人間から祈りに答えて勇者のジョブを授けてきたのよ」


「それはイシュちゃんが考える事だよ! 私が考える事じゃない……」


「そうね……」


「もし、100年位の間にイシュちゃんが、魔族側の神様や魔王と仲良くなりたいなら、手を貸してあげる……それ以外で呼ばないで欲しいな」


「エルダ、どうして……親友でしょう?」


「うん、イシュちゃんは友達。だけどね、古代エルフが幾ら長命でも神様みたいに不老不死じゃないの……私の寿命はあと100年ないの。もうじきお別れなんだよ!イシュちゃん!」


「エルダ……」


「それでね、イシュちゃん、今ね私恋しているの!」


「エルダが恋?」


「そう、恋! 相手は人間のリヒトくん……凄く可愛くて、私の事を本当に好きなのが解るんだよ! 3千年で初めて本当の恋をしちゃった」


「古代エルフハーフのエルダが人間に恋……」


「うん、だから、イシュちゃん……残りの寿命100年出来たら、私を自由にさせてくれないかな? できたら、争いごともしないで欲しい……リヒトくんとは平和で優しい世界で楽しく生きたいんだ」


「そうね……エルダ、貴方には随分助けられたわ……良いわ、今回の勇者VS魔王の戦いは私の負けで良いわ……100年間は私は自分から戦いを仕掛けない……これで良いの?」


「ありがとうイシュちゃん……」


「あのエルダが恋ね……まぁリヒトは女神の私から見ても良い男だし良いんじゃない? まぁエルダお婆ちゃんの初恋位は応援してあげるわ……もう帰っていいわ、それじゃ」


「イシュタス……お婆ちゃんって……流石に貴方よりは年下……」


「煩いわ……それじゃあね! エルダお婆ちゃんお幸せに!」


「あっ、酷い……言うだけ言って、下界に戻す気だぁ~ イシュちゃんだってお婆ちゃんじゃ……」


「はいはい、さようなら」


まぁイシュちゃんが意地悪のはいつもの事だもんね。


◆◆◆


「あっ、エルダさん、此処にいたんだ」


「リヒトくん……」


「エルダさん、そろそろホテルに戻らない?」


「ワルキューレの事もあるし戻ろうかな」


平凡に暮らせる……それが一番だよね。




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