私は、海の水へ足を入れた。


冷たさも温かさも感じなかった。


その私の背中におじいさんは声をかけた。

「行ってらっしゃい」


どうしてかわからないけど、

懐かしい気持ちに包まれて


私はきちんと振り返って言った。

「行ってきます」


おじいさんの顔は笑顔のままだった。


その笑顔は太陽を思い出させた。

体の真ん中がじんわり暖かくなる気がした。


怖くて硬くなっていた体が

柔らかくなっていく感じがした。


私はもう一度おじいさんに背中を向け


海の中をどんどん前へと進んで行った。

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