第13話 夜デートはお持ち帰りの合図?

「森川さん、返信早すぎんだろ……」


 俺はマリナ先輩のアドバイスに従い、森川さんをデートに誘った。

 ララピールなどの施術を受けれる場所があるから、一緒にどうだろう、みたいな誘い文句だった。

 数秒で既読が付き返信がくる。


「文章から動揺が伝わってくるな……。まぁ、嫌がられてはないだろう多分」


 元々は、森川さんがレンタルを頼んできたのだ。

 今回の俺の目的は、森川さんを満足させた上で口裏を合わせてもらうこと。具体的には、森川さんが全ての枠を購入している、ということにしてもらうのだ。

 モテたいとは思っているが、レンタルをお願いされるのはなんか違う。


『れんたりょ君がそれででで良いなら! もろちん!』


 森川さんの返信が黒歴史すぎる。自分で見返して頭を抱えてるのが想像できるな。

 あ、削除されて普通の文章になった。今度森川さんに会ったら、この事をイジってみるか……。


「うーん、時間帯はどうしよう?」


 放課後、だと森川さんは習い事があるだろうし、俺も準備できない。

 そうなると金曜日の夜とか?

 次の日が休みなら時間もそんなに気にしないで良いだろうし。この世界だと女子が夜遅くまで出歩いても危険は少ない。


「金曜日の夜にどうですか、と。まぁ、この世界の常識的に女の子を夜デートに誘っても大丈夫でしょ」


 問題はお店が何時まで営業しているのか、だよな……。

 調べてみると、20時くらいまで営業しているようなので予約しておこう。

 その後で食事でもすればオッケーだろう。多分、きっと、恐らく。


『蓮太郎君を食べるの楽しみ♪』


『蓮太郎君と食事するの楽しみ♪』


 またミスったらしく、森川さんが文章を書き直していた。落ち着いてくれ……。

 異性とのデートは、この世界だとそれだけレアな経験なのだろう。まして、森川さんはかなりのお嬢様だ。緊張するのも無理はない。


「集合は18時くらいで」


 よし、これでデートに誘うのは達成だ。

 ここから先は俺の努力次第……。まずはデートを成功させることが大事。


「よし、頑張るぞ!」


 俺は何も分かってなかったのだ。

 この世界では、確かに女性が夜に出歩くのは問題にならない。しかし、逆に男性が夜遅くにデートするということの意味を……。



「ぐへへ……」


 蓮太郎君は純粋だ。私がお嬢様だからとか思ってるのかもしれない。

 夕方に集合で、夜デート。

 これはもう確定だ。お持ち帰りだ。ゴールインだった。


「自然にホテル街に行くには、どのルートが最適なのか調べちゃお♪」


 私はガッツポーズをしながら、もう片方の手でスマホをスクロールしていく。食事をするお店は蓮太郎君が選んでくれている。

 問題はその後だ。


「散歩でもしよって言えば……ふふ、ぐへへぇ!」


 ベッドで転がりながら、笑う。

 気が付いたらホテル街にいて、休憩する流れにすれば完璧……。


「うーん、ホテルも普通のところに見えるのがベスト」


 あからさまにラブホテルだと引かれてしまう。はしたない女だとは思われたくないし、あくまで気をつかって、休憩する場所に丁度い良いから自然に誘う感じで!

 そう言えば、純粋に施術も楽しみだ。

 ララピール以外にも、ハイドラやEMSでリフトアップのサービスも扱っているらしい。

 それも最新の機器のようだ。


「このお店凄い……。男の子が知ってるようなお店かな?」


 蓮太郎君は美意識が高い。

 だからそんなに不自然ではないだろう。でも、なんか気になる。

 女子からこのお店をオススメされて、デートコースに入れた可能性もある。ただ、蓮太郎君はクラスメイトとは深い交流はない。


「あ、先輩に会ってた?」


 二年の先輩に会いたいとか、言ってた気がする。

 その先輩とはかなり仲が良さそう。蓮太郎君が心を許している女がいる、そう思うとモヤモヤする……。


「やっぱり、お持ち帰りしかない」


 その先輩には負けない。体の関係になってしまえば可能性がある。

 でも、学年もクラスだって違うのに、負けているのは悔しい。どんな人なのか気になるし、今度学校で会いに行ってみようかな?


「うーん……」


 でもそれが蓮太郎君にバレたら、嫌われちゃうかもしれないし……。

 恋のライバルなら、知っておきたい。

 デートの時にしれっと蓮太郎君に聞いてみよう。その先輩のことを。



「おまたせ……」

「気にしてないから平気だ。はい」

「え……」


 約束の金曜日。

 遅刻した。習い事が遅くなり、私は10分も遅れてしまった。

 私は絶望的な気分で、待っている蓮太郎君に話しかける。でも、笑顔で手を差し出してきたのだ。


「デートだからな、森川さんが嫌じゃなければ」

「もちろん! 繋ぎたい!」

「施術、楽しみだよな。俺も初めてなんだよ」

「蓮太郎君の、初めて……!」

「お、おう……。なんか今、言い方変じゃなかったか?」

「そそそ、そんなことないよ? 私、緊張しちゃって……」

「俺も、女の子とこんな本格的にデートするの初めてだからさ、緊張するわ」

「へぇ……」


 嘘だっ! 絶対嘘だっ!

 蓮太郎君めっちゃ余裕あるじゃん!

 なんか凄いエスコートしてくれるし、さらっと歩道側を歩かせてくれるし、私の様子を確認しながら歩調も合わせてくれる。


「このお店だ」

「おー」


 目的のお店に到着した。

 ララピールなどの美容施術が、リーズナブルなお値段で体験できる。

 まぁ、お金に関しては私がどうせ出すからどうでも良いけど……。


「いらっしゃ――」

「あの……?」

「いいいいいい、らっしゃっせ」

「大丈夫ですか?」


 お店に入ると、綺麗なお姉さんが出迎えてくれる。

 二十代半ばくらいの印象。

 蓮太郎君を見た瞬間、固まってしまった。凄い動揺してる。気持ちは分かる。


「で、デートですか?」

「はい」

「……っ!」


 お姉さんの質問に、蓮太郎君が迷わず答える。

 デートって断言されると、嬉しい。


「そう、ですか……。彼女さんいるんですね。そりゃいますよね。彼氏いない歴イコール年齢の私なんかとは違いますよね。知ってました」

「もう一度言うけど、大丈夫ですか?」


 今度は蓮太郎君が動揺している。このお姉さんは絶望してしまったようだ。

 でも、まだ彼氏ではない。

 デートできるだけでも、私はラッキーだ。


「自慢の彼女です」

「え」


 蓮太郎君がそう断言した。私を彼女って、え……?


「今日はレンタルされてるわけだし、一日だけ彼氏だ。遠慮しないでいいからな」

「う、うん」


 蓮太郎君が小声で、私の耳にASMRを――じゃなくて、レンタル彼氏として宣言してくれた。

 そうだった。今日はただのデートじゃない。

 レンタル彼氏として、私の相手をしてくれるのだ。遠慮しないでいいと言ってくれたし、お持ち帰りは確定!


「ララピールをご希望ですか? 個人的にはその前にハイドラもオススメですよ。毛穴から汚れを取り除き、フェイスラインも整えてくれます。ララピールは肌の活性化を促すのがメインですので、その順番が一番ですよ?」

「は、はぁ?」

「じゃあそれで」


 私がお姉さんにオススメされていると、蓮太郎君が決めてくれた。

 このお姉さん、押しが強い……。


「初回ですし、うちは比較的安いので、お値段はこれくらいです」

「合計で一万くらいか……」

「大丈夫、桁が二つ増えても大丈夫だから」


 蓮太郎君が値段に少し困ってそうだったので、私がアピールする。

 今日のためにおこづかいを大量にもらっている。

 お泊まりの可能性も家族には伝えてあるし、許可も得ている。完璧だった。


「全然大丈夫じゃないだろ、それ。ではこれで」

「ちょ、蓮太郎君?」

「女の子にお金出させるわけないだろ? デートに誘ったのは俺だし」


 レンタルをお願いしたのは私なのに、お金を出してくれた。

 普通はデートなら、女がお金を出すのが常識だ。蓮太郎君がここまでしてくれるのはなんで……?

 レンタルなら、余計に私が出すべきなのに……。


「なんで……?」

「カッコつけたいから」


 蓮太郎君は当たり前みたいに、そう言った。

 本当にカッコイイ!

 容姿だけじゃなくて、中身までイケメンすぎる……。これが私の彼氏!


「ぐへへ」

「森川さんどうした?」

「ドキドキしちゃった」

「お、おう」


 私と蓮太郎君が、そんなやりとりをしていると、咳払いが聞こえる。

 お姉さんが、ハイライトの消えた目でこちらを見ていた。


「いいなー。イケメンな彼氏いいなー。若さっていいなー。帰ろー帰ろー♪」

「本当に大丈夫ですか?」


 蓮太郎君がドン引きした様子で、お姉さんに問いかける。

 私が逆の立場なら、確かに帰りたくなるかも……。


「それじゃ、彼女さんはこちらにどうぞ。彼氏さんはー♡ こっちで♡」


 私と蓮太郎君で対応が違いすぎる!

 精神が壊れた様子のお姉さんが、施術の準備を始めた。動きだけはテキパキとしていて、プロって感じ。


「はぁ……。大丈夫かなぁ?」


 私はちょっとだけ心配になりながら、寝台に横になった――

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高校デビューを目指した陰キャの俺、貞操逆転世界にて無双する 森空亭(アーティ) @kqxgs3400

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