花疲れ君のひとめで霧散せり
季語は花疲れ。お花見のあとの疲れのことです。
「桜、見られてよかった。残った食べものとか、あの空いてるところのベンチでどう? もう、授業なかったよね」
「うん。僕は大丈夫。あ、でも、バイトとかは?」
「私も今日は平気」
いきなりだったお花見も、割と、無事に終了。
語学クラスのみんなの憧れの君が、僕の、思いつきの適当な花見に付き合ってくれて。
実は、今でも、なんだか信じられないけれど。
「ビニールシート、ほんとに小さかったね。でも、座れてよかった」
「う、うん」
確かにこの公園、桜がみえるところだと、子ども用かな? みたいな大きさの、このビニールシートを敷く場所探しにも苦労したのに。
桜がほとんど見えないこの辺なら空いていた。
ベンチも、座り放題。
「疲れたよね、でも、混雑してたけど、楽しかった。一緒に来させてもらってよかった。ありがとうね」
「こちらこそ、ありがとう。思いつきの花見だったのに、楽しかったよ」
コンビニで、冷凍可能なペットボトルも購入したたら、冷たい飲みものもあるし。
え、お酒? 僕一人ならともかく、憧れの君の前でのんだりしないよ。
「あ、もしかしたら、疲れたかな? 早く座って!」
しまった。君の方こそ、花見疲れだったのかな?
「大丈夫。また一緒にお花見したいなあ、って思ったら、疲れた、なんて思わないから」
……ええと。
憧れの君の。
君の目が、僕を見ている。
少しの間だけど。
人が少ないところでも、やっぱり、他人から見られている、素敵な君。
それでも、僕は。
「疲れた、かも知れないけど。桜が咲いてる間に、また、お花見に誘ってもいい……ですか」
こんなこと、もうあるわけないから。
誘うだけ、それだけ。許して下さい。
そんな思いで、伝えたら。
「ありがとう、喜んで。あ、できたら」
「はい、なんでしょう?」
なんだろう。場所取り? それくらい、もちろん。
「ビニールシートは、今のままで、ね」
……はい。
花見疲れとか、色々が。全部、飛んでいきそう。
それは、それくらい、素敵な笑顔だった。
※ひとめ、には、一目、と人目、を掛けております。
しぜんと、人目を集めてしまう女性。
でも、彼女が見ていたい、見てほしいのは、一人だけでした。
嬉しいけど。なんで? どうして、僕なの? を説明する機会も、これからはたくさんあることでしょう。
おめでとうございます。
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