俺とルーナは暗い洞窟の中で顔を見合わせた。微かな光が地面を照らし、俺たちの不安げな表情を浮かび上がらせる。上級傭兵（ランクルビー）二人と中級傭兵（ランクエメラルド）一人、初級傭兵（ランクサファイア）のベラのパーティが壊滅だ。この先がどれだけヤバいか、分かったもんじゃねえ。

　魔獣の異変は明らかだ。ゴブリンの様子もおかしかったし、俺の森でも何か変だ。この洞窟の奥で何が起こってるのか知る奴はいねえ。俺はルーナの肩に手を置いて、柔らかい感触を味わいながら言った。

「一度、三人でここを出ようぜ」

　声が洞窟に響く。ルーナとベラの顔に脱出したいって気持ちが浮かんでる。ルーナが頷き、ベラも小さく首を振って同意した。俺はルーナの腰に手を回して引き寄せ、ベラの肩に軽く触れて進み出した。暗闇の中、時折魔獣が襲ってきたが、これまでの戦いほど苦戦せず、何とか洞窟を脱出した。

　外に出ると、ベラが聞いてきた。

「これからどうされるのですか？」

「とりあえずギルドに報告だ。この森で何か異変が起きてるのは確かだからな」

　ベラが首を振る。

「申し訳ありません、私の任務は教会の密命で極秘です。お二人には本来の依頼報告だけお願いします。私は教会本部に戻ります」

「教会本部ってルナリスよりずっと遠いだろ？ その下着とマントだけで行く気か？ せめてルナリスで服くらい調達しろよ」

「……そうですね、お言葉に甘えます」

　ベラが少し考えて同意する。俺はルーナの手を握り、ベラの腰に軽く手を添えてルナリスへ向かった。道中は特に何もなく、無事に街に着いた。街に入ると、マントだけで生足を晒すベラに通行人の視線が集まる。下着は隠れてるが、細い脚が丸見えで、俺もついガン見しちまった。周りからは裸の女と見られてもおかしくねえ。街に入る前、ベラが言った。

「それでは服を買い揃えますね……皆さん、さようなら」

　俺たちは彼女を見送り、不穏な空気の街を歩く。洞窟での出来事とベラの言葉が頭を離れねえ。密命ってことでギルドにゃ話せねえ。俺たちはゴブリンの素材を提出し、報酬をもらうだけだ。魔獣の活性化も口止めされてる。けど、異変に気づく奴はいるだろう。俺とルーナだって前から感じてたんだ。密命に関わらねえ範囲なら報告してもいいよな。

　街を歩いてると、傭兵仲間にばったり遭遇した。

「よう、兄弟！」

　声をかけてきたのは三人組パーティだ。鋼腕のイグニス、火炎剣士ヴァルカン、風刃の騎士ゼファー。全員、中級傭兵（ランクエメラルド）だ。

「イグニスか、久しぶりだな。テミスの街にいたんじゃなかったか？」

「ああ、簡単な魔獣退治ばっかで退屈だったよ。それより、また女と組んでるんだな？」

「こいつはルーナ。成り行きでパーティになった」

　イグニスたちがルーナを見る。彼女は照れて目をそらし、ペコリと頭を下げた。ヴァルカンも挨拶して続ける。

「へぇ、可愛い子じゃねえか！　もう抱いたのか？　こんな子ならすぐ手が出るだろ？」

　ルーナが戸惑いつつ微笑む。傭兵じゃよくある話だ。男女二人パーティなら大抵ヤってる。明日生きてる保証がねえ俺たちは、欲望を我慢しねえ。けど、ルーナは傭兵になったばっかでその常識は知らねえ。

「ルーナは昨日から傭兵だ。常識は通じねえぞ。それに俺が手を出してねえからって、お前が手を出すのもダメだ」

　俺はルーナの腰を抱き寄せ、柔らかい感触を味わった。彼女は恥ずかしそうだが拒まねえ。ヴァルカンがニヤつき、ゼファーが声をかけてきた。

「お前がパーティ組むのって、あの女以来だな。最近見ねえけど、どこ行ったか知ってるか？」

「……さあな、山ごもりでもしてんじゃねえか？」

　昔、別の女と三ヶ月パーティを組んでた。初級傭兵（ランクサファイア）になった頃、強くなると言って消えちまった。三人と他愛もない話が続きそうだったが、適当に切り上げた。別れた後、ルーナが俺の服を引っ張る。

「女の子と二人でパーティ組んでたんですか？」

「ああ、それがどうした？」

　彼女が悲しそうな顔で俺の腕に抱きついてくる。俺はそのまま歩き、ギルドに着いた。ゴブリン討伐の報告を済ませ、報酬を受け取って森へ向かう。

　帰り道、いつもなら分かれ道で別れるが、今日はルーナが離れねえ。

「どうした、ルーナ？」

「あの……今夜はアクイラさんと一緒にいたいです」

　驚いたが、彼女の希望を断れねえ。

「意味分かって言ってるんだよな？　俺はいいが、お前はいいのか？」

　ルーナが照れながら頷く。俺の家に向かい、居間に通して椅子に座らせた。落ち着かねえ様子だったが、やっと落ち着いたみたいだ。

「あの……私、優しくしてください」

　恥ずかしそうな彼女にドキッとしちまう。隣に座り、肩を抱き寄せてキスした。柔らかい唇がたまんねえ。ルーナが目を閉じて受け入れる。俺は彼女の背中に手を滑らせ、細い腰を引き寄せた。

「可愛いよ、ルーナ」

「ん……」

　キスを続けながら、彼女の胸に手を伸ばす。服越しでも分かる柔らかさに興奮が高まる。ルーナが小さく声を漏らし、俺はさらに彼女を抱きしめた。森の静けさの中、俺たちの距離が縮まる。

　夜が更け、ルーナが眠りにつく。俺は彼女の隣で目を閉じた。この不安な日々の中、彼女がそばにいてくれるなら、それでいい。