第三章 盆栽
2時間目の魔法基礎の時間、先生が思い出したかのように自己紹介を始める。
「おっとすまない。そういや名乗るのを忘れてたな。俺は
おいおいおいすんごい名前の先生が現れたぞ。変わった名前が多い学校じゃのう。彼、伊勢盆は悲しむように語りだした。
「俺は大の盆栽好きなんだ。だが誰に言っても盆栽の話が通用しないんだ。まぁブームが過ぎ去ってからかれこれ70年経ってるからな」
確かに盆栽といったら昭和感満載じゃからのう。いくら50代でも盆栽好きはすくないじゃろうな。盆栽かぁ・・・そういやわし、こないだ家に盆栽庭園を作っとったのう。わしは盆栽が好きでな。じゃがすまない。初対面の人と盆栽の話ができるほどのコミュ力はわしにはない。ここは・・・
「先生、盆栽の話なら
なんと
すると美紀がこっちを向いて親指を立ててグットポーズをする。いやいやいや「グット!」じゃないわ!わしにどうしろというんじゃ!!
「おお!そうなのか!?」
そういうと伊勢盆は猛ダッシュでこちらに駆け込む。あまりにも伊勢盆の熱がすごすぎてわしは暑苦しく感じた。
そして授業の時間の3分の1が過ぎてしまったころ。
「おっと長話しすぎたな、授業に移るぞ」
やっと魔法基礎の授業が始まった。まったくここまで長すぎじゃ。せめて話すなら放課後な。と思いきや・・・
「よし、体育館に移動するぞ」
まさかの移動。ってか最初から体育館に行っとけよ!!
おそらくわしだけでなくほかの生徒たち全員がそう思ったはずじゃ。その証拠にみんなの顔がとんでもないことになっておる。驚きすぎて絵文字になっておる。こんな感じじゃ→Σ(・□・;)
「よし、これから魔法を使うぞ」
体育館についた俺たちに伊勢盆は一冊の本を渡してきた。なんじゃこれ?随分と古臭い本じゃな。
「これは?」
「魔導書だ。図書室からお前たちの適性にあったものを持ってきた」
そう言いながら伊勢盆は人形を持ってきた。え、ちょっと待って。図書室って魔導書が置いてあんの?何それ便利。今後、ちょっと使おうかのう。
「今からこれに魔法を撃ってもらう。まずは
「はい!!」
そういうとカス・・・倉橋が人形に向かって魔法を撃とうとしていた。すると・・・
『大地よ!!我が手のひらに力を授けよ!!』
は?なんじゃそれ?ま、まさか・・・これがエイショウとかいうやつか?ってかこれわしも言わなきゃいけないのか!?絶対いやじゃよ!!
謎の詠唱を唱えつつ・・・
『
カス・・・倉橋から放たれた土魔法は人形に見事命中。「どうだ!」と言わんばかりにニヤリと笑みを浮かべる。少し思ったんじゃが・・・ドヤ顔っキモイよな。
しかし・・・
「何っ!?」
人形にはかすり傷一つなかった。かなりの威力じゃと思ったんじゃが・・・そこまで硬いのか。
「あーちなみにいうが威力400以下の魔法じゃあかすり傷つかないからな」
他の人たちも次々やるが誰一人としてかすり傷すらつかなかった。唯一美紀が破壊することに成功したがあれは身体強化して物理的にやったから反則じゃ。
「次、
ついにわしの番になった。ちなみに詠唱は個人の自由。とのことじゃ。よかった。さすがに大の大人、94歳が詠唱するなんて痛すぎる。しかし問題はない。この時のために盆栽の話をしながらイメトレはできておる。確か魔力を
パチンッ
わしが指を鳴らすと人形にすごい轟音とともに黒い柱が落ちた。人形があった場所に視線を向けるが床が黒焦げになっているだけ。人形は跡形もなく消え去っていた。皆、恐怖で身動きすら取れておらんかった。
そしてわしが先ほど使った魔法は『
「さすがMP800・・・!!」
「桁違いだ・・・」
「・・・俺の21万円が・・・」
みんななんか感心しているようじゃ。唯一伊勢盆が落ち込んでいたがな。
―――というかあの人形、21万円もすんのか。え、弁償するんじゃったらするが?そういや黒雷の発射スピードは変わるのか?
気になって仕方がなかったのでわしは試しにもう一回指を鳴らした。するとまたもやすごい轟音とともに黒い柱が落ちた。みんな、「うわぁ!!」と驚いた。しかし雷のスピードはあまり変わってはおらんかった。
「ほう、じゃが指パッチンの速度によってはかなり早く放つことができるのじゃな。これはなかなか便利じゃのう」
「おい、黒速。心臓に悪いからせめてやると言ってから・・・」
伊勢盆がなんか言いに来たようじゃがわしには何も聞こえておらんかった。
「今のでどのくらいMPを消費したのじゃろうか・・・伊勢盆、少し水晶玉を貸してくれ」
「ああ、それは構わないが・・・」
わしは伊勢盆から水晶玉を借りて自分のMPを確認した。どれどれ、まぁ100くらい消費してたらマシな方・・・
黒速次射
MP 710/800
そんなに減っておらんかった。一発につき45消費するというわけか。つまり、黒雷が撃ち放題ということじゃな!!いやぁコスパがいいね!!
「そういえばさっきの黒雷でどのくらいの威力なのじゃ・・・なんですか?」
「ん?ああ、今確認してくるよ」
そういや一番重要なのは威力じゃ。まぁ破壊しておるから400以上は確実じゃが・・・伊勢盆が測定器を見に行ったら・・・
「威力・・・750だ!!」
「「「へ?」」」
わしはまたクラスで浮いた存在となってしまったのじゃ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます