第10話 商業ギルドで登録と両替

宿屋を出て商業ギルドに向う。商業ギルドは街の真ん中にある交差点の一角にあると女将さんから聞いているので、大通りに出て交差点を目指すと、逃亡生活が終わり心に余裕が出来た為か、周囲を見渡して観る。


俺達が宿泊する〝白山羊亭〟のある地区はほぼ宿屋が軒を連ねる地域で大通りに面している宿屋は4階建て石造りの立派な宿屋ばかりだった。大通りを挟んで向かい側には店や家屋は無く塀が続いて2か所に大きな両開きの門扉が付いていて、そこに冒険者風の装いをした男たちが馬車が近付くと門扉を開けて、馬車を誘導している。どうやら馬車の駐車場の様だ。


「凄いなぁ。馬車の駐車場があんなに大きいなんて…。帝国の国境の街は、スケールが王国の国境の町とは全然違言うなぁ」


「そうね。建物の大きさも、道の広さもどれも広くて大きいわ。両替が済んだらお店も覗いてみましょうよ」


「そうだな。お金は余裕があると思うし、見て廻ろうか」


「楽しみだわ。お買い物なんてした事が無いもの」


エリナベルは、徐々に足取りもしっかりして来て、表情も明るくなって来た。そして街並みを俺と同じ様にキョロキョロ見ながら、


「この辺りはお食事の出来る宿屋さんばかりね。夕食は何処かで食べるの」


「いや、泊まってる白山羊亭で取ろうかと思ってる。食事のマナーなんか知らないから、他所で外食して何か手違いでも起こしたら恥ずかしいじゃないか。あそこの女将さんなら教えてくれると思うんだ」


「そうだわ!私は外食どころかまともな食事をする事も出来なかった。確かに女将さんに色々聞いておきたいわ」


歩きながら、宿屋の1階に有る食事処を眺めてそんな会話をしていると、大通りを東西南北に分かれる交差点に差し掛かり、俺達の進行方向により大きな4階建ての建物が見え、その建物に商人風の人達が護衛の冒険者を連れて入って行くのが見える。


「あそこが商業ギルドの様だ」


「そうね。行きましょう」


商業ギルドに辿り着き、扉を開いて中に入ってみると文字は同じ言語の様で、扉の左側には案内板があり、右側にはカウンターに縦格子の付いた窓口が、正面には幾つも仕切られたブースが有りそこにテーブルと椅子が置かれていて、ギルド職員と対面で商人たちが何やら話し込んでいる。

左側の案内板の隣には、〝総合カウンター〟とカウンターの下に表示された所に2人の女性スタッフがカウンターの奥で立っていた。

そこに移動して女性スタッフに、


「王国から来たので、帝国貨幣に両替したい。」


「いらっしゃいませ。両替ですか?ギルドへの登録はお済みですか?お済みでないと手数料で1割頂く事になりますが?金額が大きいのであれば、ここで登録されては如何ですか。登録には帝国貨幣で銀貨1枚必要ですが、商業ギルドの組合員になれば、両替に手数料はかかりません。お得ですよ」


「エリナベル、どうする?」


「私は、登録した方が良いと思う。今後、何か売りたい時が来るかもしれないじゃない。資金があるうちに登録しましょうよ」


「エリナベルがそう言うならそうしよう。登録をお願いします」


「分かりました。それでは、この用紙をご記入下さい。身分証に記載されている項目のみですから。現住所をお持ちでなくともこの先の居住予定地をご記入下されば大丈夫です」


それを聞いたエリナベルが、


「あの〜。私達、職業が……。」


「商業に関係の無い職業でも問題はありません」


「いやっ。そうじゃない。俺達は身分証の職業が文字化けしているんだ。それでも良いのか?」


「お二人共ですか?」


「そう、二人共。それで王国から逃げて帝国に来たんだ」


「そうでしたか。それでご自身達は文字化け職業を読めるのですか?」


「読める。俺は頭領と云う職業だ」


「私は巫女と云う職業よ」


「では、その様にご記入下さい。氏名も名前だけで結構です。苗字は記入なさらないで大丈夫です」


俺達は、名前と職業、居住予定にライプストール辺境伯領と記入し身分証と一緒に王国大銀貨をカウンターに提出した。


受付の女性スタッフは書類に〝重要〟と刻まれたスタンプを書類に押して、書類と身分証、出していた王国大銀貨を俺達に全て戻して来て、


「そちら全てを持って、1番と書かれた窓口に移動して下さい。そちらのスタッフが対応致します」


書類を持って1番と書かれた窓口に移動すると椅子が2席あるブースで、30代であろう茶髪の男性スタッフが座って待っていた。俺達も席につき男性スタッフに書類と身分証。それに王国大銀貨を渡した。すると男性スタッフは、


「拝見します。ほう特殊職業ですか?心配いりませんよ。どんな職業であろうと商業ギルドでは登録は可能ですから。但し、登録時は皆さんウッド級商人から始めて頂きます。

階級はウッド、ストーン、アイアン、カッパー、シルバー、ゴールド、ミスリルと上がっていきます。階級は納税額と商売形態によって上がっていきます。まあ、今は良いでしょう。それでは身分証をお預かりして、ギルドカードの作成を致します」


男性スタッフはそう言うとカウンターに身分証を嵌め込む水晶の付いた魔導具らしきものを取り出し、それに俺の身分証をセットすると、身分証を嵌めたその隣の窪みに木のカードを嵌めて、


「それでは、アステル様この水晶に手を当てて魔力少し流して下さい」


言われるがままに水晶に手を添えて魔力を流すと、木のカードに名前と所属領地それに商業ギルド支部名が焼印され記載された。

エリナベルも同じ様に作業が進み、無事俺達に商業ギルドカードが発行された。


「これにて、商業ギルドへの登録は終了致しました。身分証とギルドカードになります。そして、こちらは、おつりになります」


男性スタッフから身分証、ギルドカードそしておつりの帝国銀貨3枚を返して貰うと、俺達はマジックバックから革袋2つ取り出しカウンターに置く。


「これを両替して欲しい」


それぞれの皮袋には王国金貨100枚とエリナベルの皮袋には王国銀貨100枚。俺の皮袋は王国銀貨97枚が入っている。男性スタッフは、


「商業ギルドカードには預金機能と決済機能が付いています。こちらのお金は持ち歩くには大金ですから、預金されては如何ですか?この王国大金貨は、帝国金貨500枚分。王国銀貨も500枚と485枚分になりますよ」


「それじゃあ、金貨50枚銀貨50枚を現金でそれ以外は預金でお願いします」


「私も同じ様にして下さい」


「畏まりました。それではカードの提出をお願い致します。」


俺達はギルドカードを男性スタッフに渡す


「はい、では貨幣とカードをお預かります。暫くお待ち下さい」


男性スタッフはそう言うと、カードと貨幣をトレイに置いてそれを持って、後ろにあるデスクへと移動して何やら処理を行い。皮袋に、それぞれ金貨と銀貨をつめてそれをカード共にトレイに乗せて戻って来た。


「お待たせ致しました。カードと皮袋にそれぞれ金貨50枚。銀貨50枚を入れてお返し致します。カード内の残金確認は、この機械で通貨のファルにて表示されます。銀貨1枚は1000ファル、金貨1枚は10000ファルとなります。」


俺のカードをテーブルの隅にある表示魔導具に乗せると4935000と表示され。エリナベルのカードを乗せると4950000と表示された。

無事、預金出来た事を確認すると、


「では、これで終了となります。おっと組合費の話を忘れていました。組合員には1年に一度階級による年会費の納金を納めて頂きます。これを未納されますと組合員としての身分が失効しますのでお気をつけ下さい。今は5月ですが、12月までにウッド級ですと銀貨1枚を納めて頂きます。くれぐれもお忘れなきようお願い致します」


「今、支払っても良いですか?」


「構いませんよ」


俺達は、それぞれギルドカードと銀貨1枚を男性スタッフに渡す。男性スタッフはテーブルの下にある機械に掛けて処理をし、ギルドカードを返してくる。

こうして、手続きを終わらせた俺達は、商業ギルドを後にした。








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