第46話 歴史の探求と手がかり

香織と涼介は、緑風荘に隠された村上祐一の未発表作品を見つけるため、旅館の歴史を詳しく調査することにした。彼らは旅館内にある古い書類や日記、手紙などを調べ、さらに珍名幸一から得た情報をもとに手がかりを探すことにした。


「まずは、旅館の古い記録を確認してみましょう。」香織は範子にお願いして、緑風荘の保管庫に案内してもらった。


「ここには旅館の創業以来の書類や記録が保管されています。何か手がかりになるものが見つかるかもしれません。」範子は鍵を開けながら言った。


香織と涼介は、保管庫の中に山積みになった書類や古い日記を一つ一つ確認していった。埃をかぶった古びた箱を開け、緑風荘の歴史を紐解いていく。


「これは…村上祐一が滞在していた頃の日記みたいです。」涼介は一冊の日記を取り出し、香織に手渡した。


「どれどれ…」香織は日記を開き、中身を読み始めた。


日記には、村上祐一が緑風荘で過ごした日々や、彼が感じたインスピレーション、そして制作中の作品についての記述が詳細に書かれていた。


「ここに、『隠された部屋』についての記述があります。彼はその部屋を『創造の聖域』と呼んでいたようです。」香織は興奮気味に言った。


「それが未発表作品の隠し場所かもしれない。」涼介も興味深げに答えた。


日記をさらに読み進めると、村上祐一が特定の場所について何度も言及していることに気づいた。彼はその場所を「真の創造の場」と呼び、特別な思いを込めていたようだった。


「この『真の創造の場』がどこなのかを突き止める必要がありますね。」涼介が言った。


「ええ、村上祐一がどの場所に特別な意味を見出していたのか、さらに調べてみましょう。」香織は決意を固めた。


香織と涼介は、日記に記された手がかりを基に、旅館内の特定の場所を探索することにした。彼らは範子に案内してもらいながら、普段は立ち入らない場所や古びた部屋を調べた。


「ここは昔の貯蔵室ですが、最近はほとんど使われていません。」範子は一つの部屋の扉を開けた。


「もしかしたら、この中に何か手がかりがあるかもしれませんね。」香織は懐中電灯を手にして部屋に入った。


貯蔵室の中を調査していると、涼介が古びた壁の一部に不自然な隙間を発見した。


「香織、ここを見て。壁の一部が動くみたいだ。」涼介は壁を押しながら言った。


「本当ね。試してみましょう。」香織も手を貸し、壁を慎重に動かした。


すると、隠し扉が現れ、その奥にはさらに小さな部屋が続いていた。香織と涼介は、範子と共にその部屋に足を踏み入れた。


「ここが…『創造の聖域』?」範子は驚きの声を上げた。


部屋の中には、古びたイーゼルやキャンバス、絵の具のチューブなどが散らばっていた。そして、中央のテーブルには村上祐一のサインが入った絵画が数点置かれていた。


「これが…村上祐一の未発表作品?」香織は感嘆の声を上げた。


「そうみたいです。彼がここで創作活動を行っていたんですね。」涼介も感動して言った。


「これで謎の現象の原因が少しわかってきましたね。彼の魂がこれらの作品に宿っていたのかもしれません。」範子は涙ぐんで言った。


香織と涼介は、見つかった未発表作品を範子と共に慎重に保管し、展示する計画を立てることにした。


「この作品を展示することで、緑風荘の名誉を取り戻し、多くの人々に再び訪れてもらえるようにしましょう。」香織が提案した。


「そうですね。村上祐一の作品が再び日の目を見ることで、彼の魂も安らぐでしょう。」範子は感謝の意を込めて答えた。


香織と涼介は、村上祐一の未発表作品を見つけたことにより、緑風荘の復興に向けて大きな一歩を踏み出した。次は、展示会の準備を進め、多くの人々にこの貴重な作品を見てもらうことを目指す。


「これで旅館の不思議な現象も収まるかもしれませんね。」香織は涼介に言った。


「ええ、範子さんもお客様も安心して過ごせるようになるでしょう。」涼介は微笑んで答えた。


こうして、香織と涼介は緑風荘の歴史に新たなページを刻むべく、次のステップに進む準備を始めるのだった。

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